光触媒塗料での外壁塗装を考えている方の中には、光触媒塗料の耐久性が高いことや空気洗浄効果があることなど良い面ばかりを耳にして、「それって本当なの?」と少し懐疑的になっている方もいるでしょう。実際のところ、光触媒塗料は優れた塗料なのでしょうか。
今回は、光触媒塗料について一般的にいわれるメリットと、その一方で存在するデメリットについて解説します。
光触媒塗料とは?
光触媒とは、簡単にいうと、化学反応を促進し物質変化を及ぼす仕掛けのことです。植物の光合成の仕組みを応用しています。光触媒は「TOTO」が開発した技術で、これをハイドロテクトなどと呼ぶこともあります。
その光触媒を塗料にしたのが、光触媒塗料です。太陽光に反応して汚れを分解したり親水性能によって雨で汚れを洗い流したりする、セルフクリーニング効果があるのが最大の特徴です。また、汚れがつかないことで紫外線による塗装の劣化を軽減するため、ウレタン塗料やシリコン塗料、フッ素塗料など数ある塗料の中でも耐久性が高い塗料であるとされています。
光触媒塗料のようなユニークな特徴を備えた塗料を総称して、機能性塗料と呼びます。機能性塗料には光触媒塗料のほかに、劣化原因の樹脂が含まれない無機塗料や樹脂を限りなく小さくしたナノテク塗料、伸び縮みする性質を持つ弾性塗料などがあります。
光触媒塗料で外壁を塗装するメリット・デメリット
それでは、光触媒塗料で外壁を塗装することのメリットとデメリットをみていきましょう。
光触媒塗料のメリット
光触媒塗料には、主に3つのメリットがあります。
- 汚れや臭いがつきにくい
- 耐久性が高い
- 空気清浄効果がある
まず、先述のように光触媒塗料にはセルフクリーニング効果があるため、ある程度の汚れであれば自然に落ちます。大きな道路に面している建物などは、排気ガスなどで意外と汚れているため、汚れが落ちるという効果のメリットは大きいでしょう。また、藻やカビも付着しにくいため、見た目にもきれいな外壁を保つことができます。汚れだけでなく、臭いがつきにくいこともメリットです。
また、光触媒塗料は優れた耐久性を持ちます。外壁塗装で一般的に使用されるシリコン塗料の耐用年数が10~15年であるのに対し、光触媒塗料の耐用年数は15~20年と約1.5倍です。立地など耐用年数以外の条件にもよりますが、ランニングコストを抑えられる塗料です。
さらに、光触媒塗料には抗菌や抗ウイルスなどの空気清浄効果があります。周りの空気が綺麗になれば、自身の生活が快適になるだけでなく、環境に対しても良い効果を発揮します。「光触媒塗料にすることで樹木数本分と同等の空気清浄効果をもたらしている」などと例えられることが多いです。
光触媒塗料のデメリット
続いて、光触媒塗料のデメリットも紹介します。
- 初期費用が高い
- 塗料の色のバリエーションが少ない
- すべての汚れが落ちるわけではない
- 塗料がひび割れしやすい
- 工期が長い
そもそも、初期費用が高いのがデメリットです。外壁塗装で一般的に使用されるシリコン塗料が2,500~3,500円/㎡であるのに対し、光触媒塗料は3,500~5,500円/㎡と高額です。その一方でメリットに上げたとおりランニングコストを抑えられる可能性があるので、総合的に判断するとよいでしょう。
塗料の色のバリエーションが少ないこともデメリットです。光触媒塗料は酸化チタンが多いため、酸化チタンの色である白が強く出てしまいます。このことから、基本的には彩色しか選べず、鮮やかな色や濃色が好みの方には向いていません。
また、光触媒塗料によって、外壁に付着するすべての汚れが落ちるわけではありません。例えば鳩の糞など大きな汚れは落ちません。錆や土埃なども落ちないでしょう。
光触媒塗料は耐久性が高いですが、乾燥すると塗膜が硬くなり、ひび割れしやすくなります。特に下地の動きに追従しにくいため、下地処理はしっかり施工する必要があります。
さらに、一般的な塗装は3回塗り(下塗り、中塗り、上塗り)が基本ですが、光触媒塗装は4回塗り(下塗り、中塗り、上塗り、光触媒コーティング)が基本です。工程がひとつ多いことにより、通常の外壁塗装よりも工期が長くなりがちです。
光触媒塗料で外壁塗装する際の注意点
最後に光触媒塗料で外壁塗装する際の注意点をお伝えします。
期待する効果を発揮できるか
光触媒塗料は費用が高い反面、ほかの塗料とは異なる効果を発揮します。費用対効果の見極めは重要でしょう。
まれに「光触媒塗料を塗ることによって、綺麗な外壁がずっと持続しますよ」という謳い文句で訪問販売する事業者がいますが、そこまでの効果があるわけではないため、過度な期待をしないよう注意が必要です。
また、セルフクリーニングの効果を最大限発揮させるためには、日光が当たり、雨が降る場所でなくてはなりません。日当たりが悪い場所など効果を発揮できない立地ではないか、事前に把握しておくとよいでしょう。
不具合が多いといわれる
光触媒塗料は高い親水性能をもつことから、室内の湿気を外に逃す効果があります。その一方で、外壁から湿気を中に取り込むことで、外壁を痛めてしまう可能性があります。
塗料として繊細な特徴をもつため、どのような不具合が想定されるのか、事前に塗装を行う事業者に相談しておくとよいでしょう。
事業者によって差がある
光触媒塗料は非常にサラサラしており、粘性が低い塗料です。そのため塗装した際にムラが出やすくなります。ムラが出てしまうと塗料本来の効果か発揮できない可能性があります。また、選択する光触媒塗料によっては、中塗り剤を用いなければ塗装の段階で下地を痛めてしまう可能性もあります。
そのほか、前述のように施工工程も通常の塗装より多いため、専門スキルが求められる塗装であるともいえます。場合によっては、外壁の中で塗装不可能な場所もでてくるでしょう。
このように、光触媒塗料は扱いにくい塗料なので、事業者の技術力によって仕上がりに差が出てきます。光触媒塗装に慣れていない事業者には発注しないようにしましょう。