塗装業界を取り巻く環境は、競争激化の一途を辿っています。その中で、お客様に選ばれ続ける塗装業者となるためには、技術力だけではなく、アフターフォローを充実させることが不可欠です。今回は、塗装後の顧客満足度を飛躍的に向上させ、差別化を実現するための具体的な戦略と、成功事例を10選ご紹介します。
価格競争から脱却へ。なぜ今塗装業にアフターフォローが不可欠なのか?
現在、塗装業界は激しい価格競争の渦中にあります。インターネットの普及により、誰もが簡単に複数の塗装業者の情報を比較検討できるようになり、価格の透明性が高まったことが大きな原因です。また、他の建設業種に比べて比較的に少ない資本で参入しやすいという業界構造も、競争をさらに加速させています。
明日から真似できる!アフターフォローによる差別化成功事例10選
価格競争から一歩抜け出し、お客様から選ばれ続ける塗装会社となるためには、アフターフォローが重要なカギとなります。ここでは、実際にアフターフォローを充実させることで他社との差別化を実現し、顧客からの厚い信頼を獲得している塗装業者の具体的な取り組みや成功事例を10選ご紹介します。単に施工するだけでなく、定期的な建物点検、お客様の不安に寄り添うコミュニケーション、長期保証制度の整備など、各社が独自の工夫を凝らし、顧客満足度を高めています。これらの事例は、貴社のアフターフォロー体制構築やサービス向上における具体的なヒントやアイデアとして役立つでしょう。
事例1:施工後のブログ更新で顧客との接点を維持し続ける
施工後のブログ更新は、お客様との関係性を継続的に維持するための有効な手段です。具体的には、完工した現場の「施工事例」として、施工前・中・後の写真を交えて詳細を掲載します。使用した塗料の特徴や、こだわった工法などを分かりやすく解説することで、専門性のアピールにもつながります。お客様の許可を得て、簡単な感想や仕上がりへの満足度を「お客様の声」として紹介することも効果的です。
事例2:継続的なコミュニケーションで信頼を育み紹介・リピートへ繋げる
施工完了後もお客様との接点を継続的に持つことは、信頼関係を深め、次の受注や紹介に繋げる上で極めて効果的です。例えば、季節のご挨拶状を送付したり、住まいのお手入れに関する役立つ情報を盛り込んだニュースレターを定期的に発行したりする方法があります。特に、手書きのメッセージを添えた年賀状や暑中見舞いは、お客様に「大切にされている」という温かい気持ちを届けられるでしょう。
こうした継続的なコミュニケーションは、お客様との関係性を単なる「売り手と買い手」ではなく、「住まいのかかりつけ医」のような信頼できるパートナーへと深化させます。過去のアンケートで得たお客様の関心事に触れたり、地域のイベント情報を共有したりするなど、パーソナルな要素を取り入れることで、より個人的な繋がりを築くことができます。
事例3:最長20年の長期点検体制構築で絶大な信頼を獲得
「最長20年」といった超長期にわたる点検・保証体制は、お客様にとって、施工品質への絶対的な自信の表れとなります。これにより、お客様は工事完了後も長期間にわたり、安心して住まいを任せられるという絶大な信頼感を抱きます。例えば、契約期間中に1年目、5年目、10年目、15年目、20年目といった節目で定期点検を実施する体制を構築している企業があります。点検内容は、担当者による目視での塗膜の状態確認、ひび割れや剥がれの有無の確認に加え、必要に応じて専用の診断機器を用いた調査なども行います。
このような長期点検体制は、競合他社が追随しにくい強力な差別化ポイントとなります。特に「30年の長期保証制度の導入でハウスメーカー同等のアフター体制を実現」といった事例もあるように、長期の安心を提供することで、価格だけでは選ばれない顧客を獲得できます。
事例4:塗料別の明確なW保証制度で施工後の安心感を提示
施工後の安心感を高める上で有効な方法の一つが、メーカー保証と自社保証を組み合わせた「W保証制度」です。これは、塗料メーカーによる保証と自社独自の保証を組み合わせることで、お客様に二重の安心感を提供するものです。
使用する塗料の種類(シリコン、フッ素、無機など)によって、保証期間は数年〜10年以上と幅があります。保証期間や対象となる内容は、塗料の種類によって明確に定めることが重要です。剥離や著しい変退色といった具体的な保証対象を明確に示すことで、お客様は万が一の際にも適切に対応してもらえるという信頼感を抱くことができます。
塗料の種類ごとの保証期間や主な保証内容について、以下のような一覧表などで提示すれば、お客様は予算や要望に合わせて安心して塗料を選んでいただけます。
塗料の種類 |
標準的な保証期間 |
主な保証対象の例 |
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シリコン |
数年 |
著しい剥離、変退色(軽度) |
フッ素 |
10年以上 |
著しい剥離、変退色(中度) |
無機 |
15年以上 |
著しい剥離、変退色(重度) |
その他 |
(塗料による) |
(塗料による) |
事例5:「アフターサービス専門部署」の設置で信頼性を最大化
アフターサービス専門部署を設置することは、お客様へ大きな安心感を提供する強力な施策となります。万が一、施工後に予期せぬ事態や疑問点が生じた場合でも、「専門の担当者が迅速かつ的確に対応してくれるだろう」という期待が、お客様の不安を大きく軽減します。これにより、施工中だけでなく、完了後も長期にわたって住まいのことを安心して任せられるという信頼感が生まれます。
専門部署が存在することは、企業がアフターフォローにいかに力を入れているかを示す明確なメッセージとなります。これは、お客様からの信頼性を格段に向上させる要因となります。さらに、専門部署に問い合わせ対応や定期点検などの業務を集約することで、対応品質の均質化が図られ、担当者による対応のばらつきを防ぐことができます。
事例6:完了後の丁寧な状況確認と迅速な追加対応で満足度を向上
施工完了後、お客様に安心をお届けするために、一定期間後に丁寧な状況確認の連絡を入れることが効果的です。例えば、1週間後や1ヶ月後にお客様に連絡し、塗装の仕上がりや気になる点がないかを確認します。この際、「細部までご満足いただけていますでしょうか」「何かお気づきの点はございませんか」といった具体的な内容をヒアリングすることで、お客様は気兼ねなく相談できます。
完了後の状況確認のポイント:
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時期: 施工完了後、例えば1週間後や1ヶ月後
-
内容: 塗装の仕上がり、その他気になる点がないか
-
ヒアリング例: 「細部までご満足いただけていますか」「何かお気づきの点はございませんか」など
万が一、施工に関する問い合わせや軽微な不具合のご指摘があった場合は、迅速な対応が信頼獲得のカギとなります。ご連絡を受けてから速やかに状況を把握し、必要であれば現地確認の日程を調整するなど、お客様をお待たせしない体制を整えましょう。「何かあった時に素早く対応してもらえるのが一番助かります」というお客様の声にもあるように、素早い初動が安心感につながります。
事例7:LINEなどを活用した気軽に相談できる窓口の開設
LINE公式アカウントやチャットツールを導入し、お客様が電話やメールよりも気軽に問い合わせできる環境を整えることは、アフターフォローにおいて非常に有効な手段です。施工後に「少し色が違って見える」「小さな汚れがついた」といった、些細な疑問や不安が生じることは少なくありません。こうした際に、使い慣れたLINEなどで写真や動画を送るだけで気軽に相談できれば、お客様の心理的なハードルは大きく下がるでしょう。
弊社側も視覚的に状況を把握しやすくなるため、より的確かつ迅速な対応が可能になります。リアルタイムでのやり取りを通じて、お客様の不安を早期に解消し、丁寧な対応を心がけることで、満足度向上や長期的な信頼関係の構築に繋がります。この相談窓口の存在は、施工完了時の説明はもちろん、ウェブサイトやSNSなどで積極的に周知することが重要です。いつでも気軽に相談できる体制があることを伝え、お客様の安心感を高めましょう。
事例8:定期的なヒアリング調査で顧客の声をサービス改善に反映
施工完了から一定期間が経過したお客様に対し、アンケートや電話、あるいは直接訪問を通じて、満足度やサービスへの具体的な改善点についてヒアリングを実施する手法は有効です。このヒアリングで得られる「顧客の声」(VoC)は、サービスの現状把握だけでなく、今後の改善に向けた貴重な情報源となります。
収集したお客様の声を丁寧に分析することで、自社の施工プロセスにおける課題や、お客様が潜在的に求めている新しいサービスなどが見えてきます。これらの声を基に、具体的なサービス改善策を検討し、実行に移すことが重要です。
事例9:公式サイトやSNSでの「お客様の声・レビュー」の積極的な公開
公式サイトやSNSでお客様から寄せられたポジティブな「お客様の声」やレビュー、そして施工事例を積極的に公開することは、検討中の見込み客の信頼獲得に大変有効です。実際にサービスを利用した第三者の評価は、新規顧客が塗装業者を選ぶ上で重要な判断材料となります。「この会社に頼んで安心だった」といった生の声と共に、ビフォーアフター写真を掲載することで、品質に対する信頼感を高められます。お客様の声を掲載する際は、必ず事前に書面やメールなどで掲載許可を得ることが重要です。収集方法としては、施工完了後のアンケートや直接のヒアリングなどが有効です。
事例10:小さなトラブル事例と改善策の公開で誠実な姿勢をアピール
施工中や施工後に発生した小さなトラブル事例を正直に公開することは、企業の誠実さや透明性をアピールする上で非常に有効な手段となります。例えば、施工中の軽微なミス、予測不能な天候による影響、あるいはお客様とのコミュニケーションにおけるちょっとした誤解など、正直に開示できる範囲の事例を取り上げることができます。
これらの事例は、ブログ記事や公式サイトの専用ページ、SNSなどで詳細に公開します。単にトラブルがあった事実だけでなく、次に挙げるような一連の流れを包み隠さず伝えることが大切です。
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発生経緯
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根本的な原因分析
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具体的な改善策
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その後の解決状況
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お客様の反応・満足度
こうした情報公開は、貴社の「誠実さ」「透明性」、そして困難な状況でも適切に対応できる「問題解決能力」を顧客に印象づける効果があります。特に、建設業においては品質や対応への不安を抱くお客様もいらっしゃいますが、トラブル発生時にも真摯に向き合い、改善に取り組む姿勢を示すことで、かえって信頼感を高めることができます。
人手不足でも大丈夫!アフターフォローを仕組み化する3つのステップ
多くのお客様がアフターフォローの重要性を認識されている一方で、「日々の業務で手一杯」「人員が足りず、そこまで手が回らない」と感じている塗装業者様も少なくないのが現状です。特に中小規模の事業者様からは、人手不足がアフターフォロー実施の大きな壁となっている、という声をよく耳にします。
しかし、アフターフォローは必ずしも人員を大幅に増やさなければ実現できないものではありません。業務の効率化を支援するツールやデジタル技術を活用し、属人的ではない「仕組み」を構築することで、少ないリソースでも質の高いアフターフォロー体制を運用することが可能です。
ステップ1:自社の強みを活かせるフォロー内容を決定する
アフターフォローを効果的に仕組み化するための最初のステップは、どのような内容のフォローをお客様に提供するかを具体的に決定することです。そのためにはまず、自社の強みを明確に把握することが重要です。長年培ってきた技術力や特定の工法に関する専門性、あるいは地域に根差した事業展開による迅速な対応力や地域特性への深い理解といった強みを分析しましょう。
次に、把握した自社の強みと、お客様が塗装工事に何を求め、どのような点に不安を感じているのかというニーズを結びつけます。過去の顧客アンケートや問い合わせ内容を分析することで、お客様の期待値や懸念点を把握できます。
ステップ2:担当者を明確にし、顧客管理ツールを導入する
アフターフォローを仕組み化する上で、次に重要なのは、その業務の責任者を明確にすることです。お客様からの問い合わせや要望があった際に、「誰が担当するのか」が曖昧だと、対応が遅れたり、対応漏れが発生したりするリスクが高まります。責任者を定めることで、お客様への迅速かつ的確な対応が可能となり、お客様からの信頼向上につながります。
さらに効率的なアフターフォローを実現するために有効なのが、顧客管理ツール(CRMなど)の導入です。建設業界でも近年CRMの導入が進んでおり、顧客情報や施工履歴、保証内容、次回の点検時期などを一元管理できるようになります。これにより、社内での情報共有が円滑になり、対応漏れを防ぎ、業務全体の効率化が期待できます。
ツールの選定にあたっては、以下の点を考慮することが大切です。
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自社の規模や予算
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必要とする機能
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現場担当者も使いやすい操作性
導入後も、従業員への十分な周知と教育を行い、ツールを最大限に活用できる体制を整えましょう。
ステップ3:保証や点検内容を契約前にしっかりと説明する
アフターフォローを仕組み化する最終ステップは、保証や点検に関する内容を契約前に丁寧にお客様へ説明することです。工事内容や費用だけでなく、万が一の際の保証内容や今後の点検計画について明確に伝えることで、お客様の不安を解消し、安心して契約に臨んでいただけます。これは、期待値のずれを防ぎ、契約後のトラブルを未然に防ぐためにも非常に重要です。
具体的には、保証期間、保証の対象範囲、免責事項(保証対象外となるケース)、そして点検の頻度や実施する点検項目などを漏れなく伝えましょう。説明する際は、専門用語を避け、誰にでも理解できる平易な言葉で解説することを心がけます。口頭での説明だけでなく、保証書や点検計画書といった書面を提示し、内容をお客様の手元に残るように配慮します。加えて、お客様が疑問に思った点や不安に感じている点がないか、丁寧に確認しながら進めることが大切です。
こうした契約前の丁寧な説明は、お客様からの信頼獲得に直結します。「この会社は、工事後のことまでしっかり考えている」「私たちにとって不利になることも隠さず教えてくれる」という安心感は、顧客満足度を大きく向上させ、長期的な関係構築の礎となります。
手厚いアフターフォローで顧客との絆を育み、地域で選ばれる塗装会社へ
この記事では、競争が激化する塗装業界において、価格以外の価値でお客様に選ばれ続けるための重要な戦略として、アフターフォローの必要性とその具体的な実践方法を解説しました。他社との差別化を成功させた10の事例や、人手不足の課題を乗り越えアフターフォローを仕組み化するための3つのステップをご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
手厚いアフターフォローは、施工後の顧客満足度を大きく向上させるだけでなく、お客様からのリピートや新たな紹介に繋がる強力な推進力となります。実際、ある塗装会社では、きめ細やかなOB顧客へのアフターフォローの結果、リピート率が90%以上に達し、紹介案件も増加している事例があります。お客様は、単に建物を塗装するだけでなく、「何かあった時に相談できる」「困った時に頼りになる」といった安心感を求めているのです。