外壁塗装の営業において、クロージングは成約を左右する重要なプロセスです。しかし、なかなか契約に結び付かず、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、外壁塗装業者がクロージングを鍛える方法として、成約率を飛躍的に向上させるための5つの秘策を解説します。明日から使える具体的なトーク術から、お客様の心理を掴む方法、信頼関係を築く方法まで、実践的なノウハウを余すことなくご紹介します。
なぜあなたのクロージングは決まらなない?成約できない営業の共通点
外壁塗装の営業において、お客様から良い反応を得られたとしても、「あと一歩」のところで契約に結びつかず、歯がゆい思いをした経験はありませんか。時間をかけて丁寧に商談を進めても、最後の決断を促せず、成約率が伸び悩んでいると感じる営業担当者は少なくないでしょう。
こうした「あと一歩」で契約を逃してしまう状況は、個々の才能や経験といった属人的な要因だけが原因ではありません。実は、多くの営業担当者に見られる特定の共通点や、無意識のうちに陥っている落とし穴が存在します。
原因①:価格だけで勝負しようとしている
クロージングが決まらない原因の一つに、価格だけで勝負しようとする姿勢があります。多くの営業担当者が、競合より少しでも安い価格を提示すれば契約につながると考えがちです。しかし、こうした価格競争は、自社の利益を大きく圧迫するだけでなく、「なぜ安いのだろう?品質に問題があるのでは?」といったお客様の不安を招き、かえって信頼を損なうリスクを伴います。
実際にお客様が外壁塗装業者を選ぶ際に重視しているのは、決して価格だけではありません。使用する塗料の品質、経験豊富な職人による丁寧な施工、工事中の安全管理、そして何より長期的なアフターフォローや保証といった、総合的な「価値」でお客様は判断しています。自社の強み、例えば環境に配慮した高品質な塗料の使用実績、熟練の職人による確かな技術、地域密着ならではの手厚いサービス、充実した保証内容など、「価格以外の魅力や独自性」を十分に伝えきれていないことが、成約を逃す大きな原因です。価格競争から抜け出し、これらの「顧客が感じる品質(知覚品質)」を高め、自社の価値を明確に伝える差別化戦略が、クロージング成功の鍵となります。
原因②:お客様の不安や疑問を解消しきれていない
外壁塗装は専門的な知識が必要な上に、決して安くない買い物です。そのため、お客様は様々な不安や疑問を抱えています。例えば、「本当に丁寧に工事してくれるのか(工事品質)」、「手抜き工事をされるのではないか」、「近隣に迷惑をかけないか(近隣への配慮)」、「後から追加料金が発生しないか」、「保証はしっかりしているのか」といった点は、多くのお客様が心配する代表的な要素です。
これらの不安要素が一つでも解消されないままだと、お客様は安心して契約という大きな決断に踏み切ることができません。その結果、「一度持ち帰って家族と相談します」「もう少し検討させてください」といった形で、契約を保留されてしまう可能性が高まります。
原因③:決断を促す最後の一言が言えない
クロージングの段階で、契約を促す言葉をためらってしまう営業担当者は少なくありません。これは、「お客様に強引だと思われたくない」「しつこいと感じさせてしまうのではないか」といった恐れから生じる心理的な壁が一因です。また、「もし断られたらどうしよう」という不安や、自社の提案内容に対する自信のなさが、最後の後押しをためらう要因となることもあります。
しかし、多くのお客様は、外壁塗装という大きな決断に迷いを感じています。このような状況では、専門家である営業担当者からの適切な後押しが、お客様の決断を助ける重要な要素となります。ここで決断を促さないことは、かえってお客様を迷わせてしまうことにもつながりかねません。
成約率を劇的に変える!クロージング前に押さえるべき3つの準備
外壁塗装のクロージングは、その場でいかに巧みなトークができるかよりも、事前の準備で成功の大半が決まると言っても過言ではありません。商談の場で初めてお客様の疑問や不安に直面し、その場で解決しようとしても、十分な対応ができない可能性があります。お客様が抱える不安や疑問を解消し、強固な信頼関係を築くためには、周到な準備が不可欠です。そうすることで、お客様は安心してあなたの提案に耳を傾け、契約という大きな決断に向けて前向きに考えることができるようになります。
ヒアリングでお客様の「理想の暮らし」を明確にする
外壁塗装は、単に建物を雨風から保護する機能的な側面に加え、お客様の暮らしの満足度や家の美観を大きく左右するものです。クロージングの成功率を高めるためには、お客様が外壁塗装を通じて「この家でどんな暮らしを送りたいか」「どのように感じたいか」といった感情的な「理想の暮らし」を深く理解することが非常に重要です。単に建物の状態や必要な工事内容を説明するだけでなく、お客様の潜在的な願望や、実現したい未来のイメージを引き出すヒアリングを行いましょう。
お客様が未来の生活を具体的にイメージできるような問いかけの例をいくつかご紹介します。
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今回の塗装で、一番解決したいお悩みは何ですか?
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もし外壁の色や質感が変わったら、お家にどんな変化が生まれると感じますか?
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このお家で、これからどんな風に過ごしていきたいですか?
このような質問を通じてお客様の言葉を引き出し、得られた情報をその後の提案に活かします。「〇〇様が理想とされる『落ち着いた高級感のある佇まい』を実現するために、こちらのマットな質感の塗料が最適です」のように、お客様の言葉と提案内容を結びつけることで、お客様は自身の願望が理解されていると感じ、提案が「自分のための特別なもの」だと認識します。こうした共感に基づいたアプローチは、お客様との信頼関係を深め、成約へと繋がる大きな一歩となります。
施工後のイメージを共有し、工事への期待感を高める
外壁塗装の完了後、「こんなにきれいになるんだ」という感動や「家が見違えた」といった喜びを想像していただくことは、お客様の不安を払拭し、契約への意欲を高める上で非常に効果的です。機能的な側面の説明にとどまらず、塗装によって実現する「美しい我が家」という未来のイメージを具体的に共有することが、お客様の心を動かす重要なステップとなります。
このイメージ共有に役立つのが、お客様の自宅写真を使ったカラーシミュレーションです。複数の配色パターンを視覚的に提示することで、お客様は様々な色や組み合わせを自分事として検討でき、色選びで失敗する不安を大きく軽減できます。また、自社の豊富な施工事例(写真や動画)を見ていただくことも有効です。お客様の家に似たタイプや人気の組み合わせなどを紹介することで、具体的な完成形をイメージしやすくなり、仕上がりに納得し、自社の実績に対する信頼感を高めることができます。
さらに、塗装によってお客様の暮らしにどのような良い変化があるか、言葉で丁寧に伝えることが大切です。
例えば、以下のような言葉でお伝えできます。
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「この色を選べば、お庭の緑がより一層鮮やかに映えますね」
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「モダンな雰囲気になり、帰ってくるたびに気持ちが明るくなりますよ」
単なる工事の説明にとどまらず、理想の未来を共有することで、お客様の期待感やワクワク感を最大限に引き出し、契約への前向きな気持ちを後押ししましょう。
専門家としての信頼を勝ち取るための資料準備
外壁塗装の提案において、口頭での説明は非常に重要ですが、それだけでは伝えきれない情報や専門的な内容を補完するため、視覚的な資料の提示は不可欠です。適切な資料を用意し提示することで、お客様は提案内容をより深く理解し、専門家としてのあなたの説得力と会社への信頼感を高めることができます。これにより、お客様が抱える漠然とした不安を解消し、納得感を深めていただくことが可能になります。
お客様に安心感を提供し、契約への納得度を高めるためにぜひ用意しておきたい具体的な資料には、以下のようなものがあります。
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施工事例集:お客様のご自宅と似た築年数や外壁材、または同じような悩みを解決した事例を複数紹介することで、具体的な仕上がりや効果をイメージしやすくし、信頼獲得につなげます。
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お客様の声・アンケート結果:実際に工事を行ったお客様からの評価や感謝の声は、第三者からの視点として強い説得力を持ちます。
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会社概要・保有資格の証明書:会社の沿革や実績、取得している資格などを明示することで、組織としての信頼性や技術力をアピールできます。
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使用塗料のカタログ・認定証:メーカー発行の公式資料は、塗料の品質や性能に関する客観的な情報を提供し、お客様に安心感を与えます。
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保証書の見本・アフターフォロー内容:工事完了後の保証内容や定期点検などのアフターサービスについて書面で提示することで、長期的な安心感を提供し、契約への最後の一押しとなります。
これらの資料を効果的に活用することで、お客様は提案内容だけでなく、会社や担当者への信頼感を強め、安心して契約という大きな決断を下せるようになります。
お客様の心を掴む!明日から使えるクロージングテクニック4選
これまでの丁寧なヒアリングや、施工後の具体的なイメージ共有、そして信頼性の高い資料準備といった一連のプロセスは、外壁塗装のクロージングを成功させるための強固な土台となります。しかし、準備万端でも、最後にお客様の「よし、決めよう」という気持ちを後押しできなければ、成約にはつながりません。クロージングは単に契約書にサインをいただく行為ではなく、お客様が抱える最後の不安を取り除き、未来への期待と共に安心して決断していただくための一連の心理的なアプローチです。無理に契約を迫るのではなく、お客様自身が納得し、自らの意思で前に進むのをサポートすることが重要となります。
テストクロージングで契約の意思を確認する
外壁塗装の契約という大きな決断を前に、お客様は最終的な迷いや不安を抱えていることがあります。そこで有効なのが「テストクロージング」です。これは、本格的な契約の意思確認を行う前に、「もし〇〇でしたら、どのように考えられますか?」といった仮定の質問を投げかけ、お客様の購買意欲や、契約を妨げている懸念点(ネック)を探るテクニックです。
テストクロージングの主な目的は、お客様自身も気づいていないかもしれない最後の不安や疑問点を早期に把握し、商談の場で解消することにあります。これにより、最終的なクロージングにおける抵抗感を減らし、成約の成功率を格段に高めることが可能です。
複数の選択肢を提示し、お客様に主導権を渡す
外壁塗装のクロージングで「契約するか、しないか」という二者択一の問いかけは、お客様を追い詰めてしまう可能性があります。代わりに有効なのが、複数のプランを提示し、「どのプランにするか」という前向きな選択を促す方法です。これは、人間が提示された選択肢の中から一つを選びたいという心理を利用したテクニックです。
具体的な手法として、価格帯や機能性が異なる3つのプランを提示する「松竹梅の法則」が挙げられます。お客様は提示された複数のプランを比較検討することで、「自分で選んだ」という納得感を持ちやすくなります。それぞれのプランについて、価格だけでなく、使用する塗料の種類、期待できる耐用年数、保証内容、そして工事に含まれる具体的な範囲(例:付帯部の塗装箇所など)といったメリット・デメリットを明確に示し、比較しやすい資料を作成することが重要ですし、お客様がご自身で最適なプランを選んだという感覚を持つことは、契約後の満足度を高め、予期せぬトラブルやクレームのリスクを低減することにも繋がります。
期間限定の特典で「今決める理由」を作る
お客様が契約の決断をためらっている場合、行動心理学に基づいたアプローチとして有効なのが、期間限定の特典を提示することです。例えば、「今月中にご契約いただいたお客様限定で足場代を半額にします」や「本日ご契約の方には〇〇を無料でサービスいたします」といった具体的な特典を示すことで、お客様は「今」契約することによるメリットと、決断を先延ばしにするデメリットを明確に認識できます。人は「限定」という言葉に弱い傾向があり、「この機会を逃したら損をするかもしれない」という心理(希少性の原理)が働くため、決断を後押しする強力な材料となります。
沈黙を恐れず、お客様の決断を待つ勇気を持つ
外壁塗装の提案を終え、クロージングの言葉を投げかけた後、しばしば訪れるのが沈黙の時間です。この沈黙は決して気まずいものではなく、お客様がこれまでの説明や提案内容を整理し、最終的な決断を下すための非常に重要な時間です。外壁塗装は大きな買い物であり、お客様にとっては当然、慎重に検討したいものです。この考える時間を十分に提供することが、お客様の納得と成約につながります。
しかし、多くの営業担当者はこの沈黙に耐えられず、焦って追加の説明をしたり、不用意な値引きを持ちかけたりしてしまいがちです。これは「早く契約を決めたい」「もし断られたらどうしよう」といった不安や、「この気まずい空気をなんとかしたい」という心理からくる行動です。ところが、こうした焦りは逆にお客様にプレッシャーを与え、「急かされている」と感じさせてしまい、せっかく前向きに検討していた気持ちを妨げてしまうリスクがあります。
【実践トーク集】こんな時どうする?状況別のクロージング術
外壁塗装の商談が終盤に差し掛かり、「検討します」「他社とも比べてから」「家族に相談して決めたい」など、お客様から保留や断りにも聞こえる言葉が出てくると、どのように対応すべきか戸惑う営業担当者の方は少なくありません。せっかく築き上げた信頼関係が崩れてしまうのではないか、と不安に感じることもあるでしょう。
「他社とも比較したい」と言われた時の切り返しトーク
外壁塗装のご検討は、お客様にとって一生に一度あるかないかの、とても大きな買い物です。そのため、「他社とも比較したい」とおっしゃるお客様は少なくありません。このような言葉が出た際に、焦ったり、強引に契約を迫ったりすることは逆効果です。
まず、お客様の比較したいという気持ちに心から共感し、そのお考えを一度受け止める誠実な姿勢を示すことが大切です。「おっしゃる通りです。大切なお家のことですから、数社比較されるのは当然だと思います」といったように、お客様の立場に寄り添う言葉を伝えましょう。
その上で、専門家として「何を基準に比較検討すれば良いか」を具体的にアドバイスします。価格だけでなく、使用する塗料の種類、施工実績や技術力、保証やアフターフォローの内容など、長期的な視点から見るべきポイントをお伝えし、自社の強みが際立つ判断基準をお客様に提示することが有効です。
「値段が高い…」価格交渉された時の対応フレーズ
外壁塗装のお見積もりを提示した際に、「値段が高い」と言われることは少なくありません。このような時、単に金額を下げるのではなく、お客様がなぜそう感じられたのか、その背景を理解することが重要です。お客様のお気持ちに寄り添いながら、「そう思われますよね。差し支えなければ、どのあたりが高いと感じられましたか?」「他社様のお見積もりと比較されていかがでしたでしょうか?」といった具体的な質問を投げかけることから始めましょう。
お客様から理由を伺った上で、提示したお見積もりの内訳について、一つずつ丁寧にご説明し、価格の根拠を明確に示します。使用する塗料の品質、熟練の職人による丁寧な施工、充実した保証内容といった、価格に見合う、あるいはそれ以上の価値があることを具体的にお伝えし、品質やサービス全体のメリットを理解していただくことで、価格への納得感を高めることができます。
「家族に相談してから…」と言われた時の次の一手
外壁塗装の商談を終え、お客様から「家族に相談してから決めたい」と言われることはよくあります。この言葉を聞いた際、まずは焦らず、「大切なお家のことですから、ご家族とじっくり相談されるのは当然のことです」と、お客様の気持ちに共感し、肯定する姿勢を示すことが重要です。こうすることで、お客様は心理的なプレッシャーから解放され、安心してその後の話を進めやすくなります。
次に、「ご家族様は、今回の塗装についてどのような点を一番気にされると思いますか? 例えば、色やデザインのこと、あるいは工事中の生活への影響など、どのようなことでしょうか?」のように、お客様がご家族に説明する際に懸念しそうな点を優しく問いかけ、お客様が本当に気にされている点(価格、工期、仕上がりなど)を引き出しましょう。
そして、お客様がご家族へスムーズに説明できるよう、本日の商談で確認した重要な点や、比較検討に役立つ資料(プラン比較表、使用する塗料の特徴をまとめたものなど)を、ご家族に説明しやすい資料としてお渡しします。お客様が安心してご家族に説明できるようサポートすることで、商談が前に進む可能性が高まります。さらに、「もしよろしければ、ご家族の皆様がお揃いになる際に、改めてご説明に伺いましょうか?」と、ご家族同席での再説明を提案することも有効な次の一手となります。
信頼を失う前に!外壁塗装のクロージングで絶対避けるべきNG行動
これまでの商談で、お客様との信頼関係をどれだけ築き、素晴らしい提案ができたとしても、最後のクロージングでのたった一言が、それまでの努力を台無しにしてしまう可能性があります。特に、外壁塗装のようなお客様にとって大きな買い物となる契約においては、些細な不信感が成約を遠ざける決定的な要因となり得ます。
契約を急かし、お客様を追い詰める
外壁塗装は、お客様にとって数百万円単位の費用がかかることも珍しくない、一生に一度あるかないかの大きな買い物です。それだけに、誰もが慎重に検討し、信頼できる業者に任せたいと考えるのは当然です。こうした状況下で、「今日決めていただければ〇〇を割引します」「このキャンペーンは今だけです」といった言葉を使って即決を迫る行為は、お客様に不必要なプレッシャーを与え、逆効果になる可能性が非常に高くなります。
なぜなら、お客様は「何か裏があるのではないか」「都合の悪いことを隠しているのでは」といった不信感を抱き、「早く決めさせようとしている」という焦燥感を感じてしまうからです。こうした強引な営業手法は、残念ながら悪徳業者の典型的な手口としても知られています。
他社の悪口を言って自社の優位性を示そうとする
クロージングの場面で、競合他社を引き合いに出し、その欠点を指摘することで自社の優位性を示そうとする行為は、お客様からの信頼を損なうリスクが高い避けるべき行動です。たとえ事実に基づいていたとしても、お客様は他社の悪口を聞くと、良い印象を持ちません。「品がない」「自社に自信がないから他社をけなすしかないのか」といった、ネガティブな感情を抱かせる可能性があります。
また、お客様が既に検討している、あるいは好意的に見ている他社を批判することは、お客様自身の判断を否定されたように感じさせてしまいかねません。これはお客様との間に不要な隔たりを作り、信頼関係を大きく損なう行為です。
さらに、特定の一社だけでなく、業界全体のレベルが低いかのような印象を与え、外壁塗装業界全体への不信感を抱かせてしまう結果にもつながりかねません。お客様は不安を感じ、契約自体をためらうようになるでしょう。
他社との比較を求められた際は、他社の悪口を言うのではなく、自社ならではの強みや独自性を、具体的な根拠や客観的な事実に基づいて誠実に伝えることが重要です。具体的には、以下のような点をアピールできます。
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自社の技術力
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使用塗料の品質
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豊富な施工実績
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手厚い保証内容
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地域密着ならではの迅速なアフターフォロー
これにより、自社の信頼性と魅力を正しく伝えることができます。
根拠のない値引きで契約を取ろうとする
外壁塗装の見積もりを提示した後、お客様の反応を見て安易な値引きを持ちかける行為は、絶対に避けるべきです。最初に提示した金額は、適正な工事内容と品質に基づいたものであるはずです。それを根拠なく簡単に下げてしまうと、「最初の価格は何だったのか」「適当に見積もっていたのではないか」といった不信感をお客様に抱かせてしまいます。
また、安易な値引きは「どこかで手抜きをして帳尻を合わせるのでは?」という品質への不安をお客様に抱かせるリスクも高まります。価格ではなく、提案内容の価値でお客様に納得していただく姿勢が重要です。
無計画な値引きは会社の利益を圧迫し、結果として質の低いサービス提供や、共に働く職人の待遇悪化にもつながりかねません。
誠実さを武器に、自信を持ってお客様の背中を押そう
本記事では、外壁塗装のクロージングで成約率を高めるための様々な方法を解説しました。なぜクロージングが決まらないのか、その共通点として「価格競争からの脱却ができていないこと」、「お客様の不安や疑問を解消しきれていないこと」、「最後の後押しができていないこと」を挙げました。これらの課題を克服するために、クロージング前にはお客様の「理想の暮らし」を明確にするヒアリング、施工後のイメージ共有、そして専門家としての信頼を勝ち取るための資料準備が重要であることをご紹介しました。
また、明日から使える具体的なテクニックとして、テストクロージングでの意思確認、複数選択肢の提示による主導権委譲、期間限定特典による決断の後押し、そして沈黙を恐れずお客様の思考を待つ勇気を持つことの有効性をお伝えしました。加えて、他社比較や価格交渉、家族相談といった状況別の実践トーク集もご紹介しました。一方で、契約を急かしたり、他社を誹謗したり、根拠のない値引きをしたりといった、信頼を失うNG行動についても触れました。
これらのテクニックや準備は、確かにクロージングの成功率を高める上で有効です。しかし、最も重要なのは、お客様一人ひとりが抱える外壁の悩みや、塗装工事への不安に真摯に寄り添う「誠実さ」です。外壁塗装は高額な上、専門知識が必要なため、お客様は少なからず不安を感じています。その不安を丁寧に聞き取り、誠実に向き合う姿勢こそが、お客様からの信頼獲得に繋がる何よりの武器となります。