シンナーは有機溶剤の一種で外壁塗装の際、油性塗料を薄めるために使用します。外壁塗装で使用するメリットも十分にある溶剤ですが独特の刺激臭があり、吸い込むと吐き気などの症状が出て、最悪の場合は呼吸困難に陥ることがある危険な物質です。
この記事では、有害な有機溶剤であるシンナーが外壁塗装に使われている理由や、安全に使うための対策などを紹介します。
シンナーとはどんな溶剤?
シンナーは薄めるものを意味する英語、「thinner」を語源とする薬剤です。油性塗料の「薄め液」として使用されます。
油性塗料は、そのままでは粘度が高く塗りにくいので、シンナーで薄めて粘度を調整するのです。また、ハケやローラーなど塗装道具の洗浄などにも使用されます。水性塗料には使用されません。
シンナーが原因で出る身体・精神症状
シンナーは、外壁塗装には欠かせない素材ですが有害です。以下に、シンナーを吸引したり皮膚に付着したりしてしまった場合に出る、症状について解説します。
軽度の場合
シンナーを吸引すると頭痛や吐き気、めまい、喉や鼻の粘膜の不快感が起こります。
そのほか、動悸、くしゃみ、鼻水、あくび、目がチカチカする、湿疹が出るといった症状が出るケースもあります。症状の出方は人それぞれですが、一般的にからだの小さい赤ちゃんや子どもほど、症状が強く出る傾向です。
大人も体質によって症状の出方に個人差があり、化学物質にアレルギーがある方や、アトピー性皮膚炎の方は、症状が悪化する傾向もあります。
また、高齢者も加齢によってからだの機能が低下していることから、少量でも症状が強く出ることもあるでしょう。
重度の場合
シンナーを長期にわたって吸引し続けた場合、シックハウス症候群※を発症するおそれがあります。
- ※シックハウス症候群
- 建材等から発生する化学物質、ダニやホコリなどを吸い込むことで起こる健康被害
一度発症するとほかの化学物質にも過敏に反応し、重度になると日常生活を送るのが難しくなることもあります。
シンナーは有機溶剤ですが、経済産業局の「有機溶剤取り扱い職場の健康障害防止対策」では有機溶剤による健康障害として下記のような症状を挙げています。
- 頭痛、めまい、失神
- 湿疹、皮膚の角化・亀裂、咳、結膜炎
また、経済産業局によると、シンナーの種類によっては症状が重度になり、下記のような病気になるおそれもあります。
- 末梢神経障害(手足の筋肉低下やしびれ、傷みなど)
- 視神経障害(視力の低下や視野の一部が見えなくなるなど)
- 精神障害(幻覚や妄想、憂鬱感など)
- 胆管がん(白目や皮膚が黄色っぽくなる、体重の減少など)
重要なのは、「どのくらいシンナーを吸引したら、重度の症状が出るか」は、個人差があることです。外壁塗装工事では、塗料に使われるシンナー成分が室内に入り込むことがあります。シンナーの健康被害を防ぐには、吸引しないような工夫が必要です。
外壁塗装のシンナーで悪影響を受けやすい人と対処法
シンナーは赤ちゃんや子どもなど、からだの小さい方のほうが少量でも強い影響を受けやすいです。妊婦さんなどからだに大きな負担がかかっている方も、症状が強く出ることがあります。
シンナーのような化学物質は、成分が体内に蓄積して、花粉症のようにある日急に強い中毒症状が出ることもあるでしょう。
外壁塗装でシンナーを使用しており、目や喉、鼻の違和感など何らかの症状が出たら、
油性塗料を使用した塗装の場合、シンナー抜きで塗装はできません。マスクなどで対応するにも限度があります。
なお、外壁塗装の際は、有機溶剤が含まれていない水性塗料を選ぶことでシンナーによる健康被害を防げます。塗料を選ぶ際は、施工会社に相談してみましょう。
外壁塗装では塗料にシンナーが使用されやすい!その理由とは
シンナーは有害物質ですが、外壁塗装で使うメリットも十分にある溶剤です。ここでは、外壁塗装でよくシンナーが使用される理由を解説します。
塗装時間の短縮につながる
油性塗料は粘度が高いため、そのままでは塗りにくいです。しかし、シンナーを混ぜることで粘性が弱まり、塗りやすくなります。
塗料が塗りやすくなれば、作業時間の短縮にもつながります。外壁塗装の人件費は日当で計算されるので、塗装時間が短縮できれば費用全体を抑えることも可能です。
塗装のムラが発生しにくい
粘度の高い液体を均一に塗るのはとても大変です。外壁は表面積が大きいので、色むらができると大変目立ちます。
特に黒やグレー、ブラウンなど濃い色は色むらがあるとより目立ってしまうでしょう。外壁は家の印象を決める大切な場所ですから、外壁塗装に色むらがあれば家の価値そのものが下がってしまうかもしれません。
しかし、シンナーを使用することで塗料の粘度が弱まり、均一に塗れるようになります。仕上がりがきれいになるため、家の価値を保てます。
塗装のひび割れが起きにくい
粘度が高い液体を塗ると、ハケやローラーの跡もつきやすくなります。このような跡が残ったまま乾燥すると、大変不格好にみえるでしょう。
また、粘度が高い液体は乾燥するまでに時間がかかるうえ、ひび割れなどが発生しやすくなります。
仕上がりをきれいにすることを優先するのであれば、シンナーを含んだ塗料で塗装したほうがよいでしょう。
塗料を落とすためにもシンナーは必要
シンナーは塗料落としにも使用されます。外壁の塗り替えをする場合、もとの塗料を取り除く必要があります。しかし、油性塗料は水で洗ってもおちません。そのため、シンナーを使って落とします。
ローラーやハケが丁寧に手入れできれば、仕事の質も上がります。
施工会社がシンナーを扱う際は、厳しい制限が課されている
シンナーは、有害物質です。なんの対策もせずに長期に使用すれば、人体は呼吸器官をはじめあらゆるところに影響が出るでしょう。
吸引した期間が長いほど症状は重くなり、場合によっては日常生活に重大な支障が出ることもあります。
そのため、「労働安全衛生法」により、シンナーをはじめとする有機溶剤を扱うには、厳しい制限が課されています。
一例を挙げると以下のとおりです。
- 屋内で塗装をする場合は換気装置の設置
- 作業員は送気マスクや防毒マスクの着用
- 特定化学物質作業主任者の選任
- 作業員への有機溶剤に対する教育
- 定期的な作業環境測定
- 定期的な健康診断
これらの制限や決まりに違反すれば法律に基づいて罰せられます。ですから、シンナーを扱っている施工会社や作業員は、専門的な教育を受け安全管理に十分注意して作業していると考えてよいでしょう。
DIYに使用する塗料は少量で販売されているので、すでに油性塗料にはシンナーが混ざっています。油性塗料のツンとする臭いは塗料ではなくシンナーです。個人でシンナーを使用する場合、特に制限は設けられていません。
しかし、屋外とはいえ素手でマスクを付けずに作業をすると気分が悪くなったり、目や喉に違和感が出たりするおそれは十分にあるでしょう。
今は、部分的に外壁塗装をDIYする方も増えましたが、健康面から考えるとおすすめできません。シンナーの扱いに慣れた専門の施工会社に依頼するのがおすすめです。
シンナーの取り扱いに慎重な施工会社の探し方
外壁塗装を行う施工会社はたくさんありますが、そのどれもがシンナーの扱いに慣れているわけではありません。
建築業の許可を取っていない会社の場合、シンナーの取り扱い方法を知らない場合もあるでしょう。シンナーの取り扱いに慎重な優良会社を探す場合は、インターネットでホームページなどを検索して探してみてください。
しかし、地域に何件も施工会社がある場合、ひとつひとつホームページを確認していくのは大変です。そこで、おすすめしたいのが一括査定サイトです。
一括査定サイトを利用すれば、希望する条件を入力するだけですぐに条件に合った会社がピックアップされます。会社が絞れたら、油性塗料を多く扱っている会社や実績が多い会社、安全対策に力を入れている会社を探しましょう。
不安な方は見積もりを作ってもらう際に、シンナーの取り扱いについて尋ねてみましょう。