住宅の外壁やベランダの床は、雨風から建材を守れるように、塗装とともに防水処理が施されています。特にベランダは、雨水がたまりやすいため、時とともに劣化していきます。
ここでは、防水工事の種類や、その際に使用するおすすめの防水塗料について解説します。
ベランダの防水工事の種類
ベランダの基本的な構造は、以下のような順番で重ねてできています。
それぞれの層に何を行うかによって、防水工事の方法が違います。
工事は主に、3種類の方法があります。
以下に、それぞれの工事で、どの層の施工をするかを示しました。
工事の種類 | 防水層 | トップコート |
---|---|---|
防水シート | 〇 | △ |
FRP防水、ウレタン防水 | 〇 | 〇 |
トップコートのみ | ✕ | 〇 |
なお、トップコートのみの工事は、劣化が防水層まで進行していない場合に有効です。
それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
防水シート
防水シートは、塩化ビニール樹脂や合成ゴムなどで作られたシートです。 防水層にシートを選択すれば、トップコートを塗る必要がなくなる場合もあります。
また、使うシートの素材によって、工事方法や特徴が異なります。
塩化ビニールシート
塩化ビニールシートは、紫外線や熱に強い特徴があります。そのため、日当たりのよいベランダや屋上などで使用されます。耐久性もあり、多少物を擦る程度では痛みません。
一般的な工事方法は以下の2つあります。
- 接着工法
- 下地に接着剤を塗り、直接塩化ビニールシートを貼り付ける
- 機械固定工法
- 円盤やディスク板を固定して、シートを熱接着させる
機械固定工法は、シートを直接は接合しないため、下地の状態に影響を受けづらいです。
合成ゴムシート
ゴムシートは伸縮性があり、地震などの衝撃が加わってもひび割れが起こりにくいことが特徴です。さらに温度変化に強く、高温環境でも変形や溶けるといった心配はありません。
その反面、紫外線には弱いので、日差しが強い場所には向いていません。
工事方法は、接着工法が一般的です。凹凸が激しい下地には接着が難しいほか、熟達した職人でなければ継ぎ目の施工がうまくできません。
防水層
防水層を作るには、FRP防水とウレタン防水の2つが一般的です。それぞれメリットとデメリットがあるので、自宅の状況に合わせて選ぶようにしましょう。
FRP防水
FRPとは繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)の頭文字をとった略称です。ガラス繊維を含んだ、プラスチックのことです。
下地にシート状のFRPを敷き、樹脂で固めて防水層を形成します。その後トップコートを塗り完成です。
FRP防水は以下のような点がメリットです。
- 工期が短い
- 耐久性が高く、多少擦っても痛みにくい
- 重たいものを乗せても割れにくい
- 軽量のため、古い家屋などにも向いている
日当たりのよい場所ではトップコートの維持が重要ですが、FRPは紫外線に弱い点がデメリットです。
また伸縮性がないため、木材など、気候によって膨張がある建材だと割れやすいことも覚えておきましょう。
ウレタン防水
液状のウレタン樹脂を重ね塗りして防水層を作り、その後トップコートを塗り完成します。
下地の凹凸に左右されず伸縮性もあるので、どのようなケースでも適用可能です。継ぎ目ができないため、外観もきれいに仕上がります。
ただし、ウレタンを均一に何度も塗っていく作業は職人の手作業です。かなりの技術が必要なため、業者選びをしっかりと行う必要があります。
また、手作業なため工期も比較的長めです。
トップコート(塗装)のみ
防水層の上にトップコートを塗ることで、防水層の保護を行います。 劣化が表面のみの場合は、塗装をするだけでもメンテナンスできます。
防水層が痛む前に、塗り替えを行うことが重要です。5年に一度が目安ですが、明確に劣化の症状が現れた場合は、早急に対処が必要です。
また、日々の手入れもベランダの劣化を防ぐために大切です。
たとえば、排水溝(ドレン)が詰まっていると、ベランダに水がたまり、防水層の劣化につながります。
また、小さなごみや砂などが積もったまま放置していることも、トップコートを劣化させる原因です。
定期的に、排水溝のつまりを解消し、掃き掃除などを行いましょう。
各工事の費用などは、以下の記事を参考にしてください。
トップコート(塗装)の劣化症状
ベランダのトップコートが劣化しているサインは、実際に見て確認できます。
下記のような劣化症状がある場合は、メンテナンスをしましょう。
ひび割れ
トップコートのひび割れは、紫外線や雨風にさらされて起こる経年劣化の症状です。
トップコートのひび割れは放置していると、防水層の劣化にもつながります。一般的には、築10年未満の比較的新しい物件であれば、トップコートの塗り替えだけでメンテナンスが十分です。
それ以上の年月が経っている場合、防水層の劣化が考えらえられます。
コンクリートがむき出しになっているひび割れは、かなり危険な状態です。
その場合は、防水層から工事することを検討しましょう。
剥がれ
剥がれは文字通り、防水層からトップコートが剥がれ落ちてしまった状態です。FRP防水の場合、剥がれた場所から透明な色が見えます。
防水層まで剥がれてしまっている場合は、防水層からの工事が必要です。トップコートのみの剥がれならDIYで上塗りしてしまうのも手ですが、耐久性はあまり期待できません。
色あせ
トップコートの色褪せが見られる場合、トップコートの保護機能が弱まっている可能性が高いです。経年劣化によるものが大半なため、なるべく早く塗り替えましょう。
塗膜の膨れ
トップコートが膨れている場合は、以下の2つのケースが考えられます。
- 処理が不十分で、下地などから蒸発した水分が塗膜を押し上げている
- すでに別の箇所から浸水が進んでおり、症状が出ている
塗膜の膨れがある場合、どちらの原因でも、防水層を再施工することが必要です。下地の工事まで必要なケースもあるため、信頼できる業者に相談しましょう。
苔などの繁殖
苔や藻が発生している場合、防水機能が低下している危険性があります。これらの植物は湿気を好むので、防水機能がしっかりしている状態であれば、繁殖しにくいです。
放置しておくと床を割って拡大することもあります。なるべく早く防水層から工事をしましょう。
また、苔や藻を防止するためには、こまめに掃除をしておくことが効果的です。
ベランダに使用する防水塗料
ベランダのトップコートとして使用する防水塗料には、いくつか種類があります。 防水層の工事方法によって、向き不向きがあります。
それぞれの特徴を確認して、状況に合わせた塗料を選びましょう。
また、さまざまなメーカーが数多くの商品を出しています。 そのため、業者と相談しながら塗料を決めてもよいでしょう。
アクリルウレタン系
アクリルウレタン系のトップコートは、紫外線に強く伸縮性もあるため、強い日差しやひび割れ、膨張に強い点が特徴です。
比較的普及しており、特にFRP防水でよく選ばれます。
手に入りやすくカラーバリエーションも豊富です。仕上がりはゴム質な感じです。
耐用年数は約3~5年と言われています。ただ、物理的な衝撃には弱いため、カラスなどにつつかれるような場合、早めの塗り替えが必要です。
フッ素系
フッ素のトップコートは、遮熱性が高く、耐用年数が10年と比較的長い点が特徴です。
価格が高いため、あまり普及しておらず、製造メーカーもそこまで多くありません。防水層をウレタン防水にした時によく使用されます。
カラーバリエーションが揃えづらいこともデメリットです。しかし、塗り替え頻度は少なくて済むため、検討するのもよいでしょう。
ポリエステル系
ポリエステルのトップコートは、主に「オルソ系」「イソ系」の2タイプがあります。
イソ系は、オルソ系よりも耐候性があり、高グレードな塗料です。
耐摩性に優れ、FRP防水のメリットを存分に発揮できる点がメリットです。新築のFRP防水の場合によく使用されています。
デメリットは、以下のようなことが挙げられます。
- 重ね塗りに適しておらず、塗り替えの時に選びにくい
- 硬く仕上がるため割れやすい
- オルソ系は、紫外線に弱いので、屋外では白化やひび割れがしやすい
ベランダの防水塗装ポイント
ベランダの防水はさまざまな工法や塗料の組み合わせがあります。住宅の下地にあった素材を選ぶことが重要です。
確実な仕上がりを求めるなら、腕の良いプロの業者に任せるのが安心です。複数社に見積もりを依頼し、金額や工事の妥当性をしっかりと吟味しましょう。
複数社を比較するためには、一括査定サイトが便利です。簡単な情報を入力するだけで、複数の業者に相談できるため、自分に合った信頼できる担当者を見つけることができます。
ベランダは大切な資産である不動産の一部です。定期的にメンテナンスをしてきれいな状態を保ちましょう。