外壁を変えることで、家の外見が大きく変わります。日本の伝統的な家屋に使われている漆喰を外壁にすることは、どのような効果があるのでしょうか。
漆喰の基礎知識から、外壁を漆喰にする施工の流れ、DIYで自分で塗ってみたケースなどを紹介していきます。
外壁を漆喰にする際に知っておきたい基礎知識
漆喰は、100年もつ外壁と呼ばれています。塗料で塗った場合、10年ごとに塗り替えのメンテナンスが必要です。
漆喰が、100年も長持ちする理由、メリットとデメリットを紹介します。漆喰の単価、塗料と比較した漆喰の特徴も解説します。
漆喰(しっくい)についての解説
日本において漆喰とは、天然鉱物資源の石灰を主原料とし、海藻などから作られる糊と麻などの繊維を含んだスサを加えた天然素材の建材です。
※スサとは:ひび割れを防ぐためにつなぎになる材料
漆喰の主原料は石灰です。石灰は鉱山から採られた後、高温で焼かれ二酸化炭素を放出させます。焼かれた石灰を生石灰といいます。生石灰に水と糊、スサを加え壁に塗ります。そうすると、生石灰が二酸化炭素を吸収し、もとの石灰石に戻って硬くなります。
石灰の特性を活かし、作られたものが漆喰です。
漆喰のイメージでは、お城などの日本の伝統的な建物が思いつきますが、現代建築とも融合し、戸建の外壁や内装にも使われています。
漆喰のメリット デメリット
漆喰のメリットとデメリットを紹介します。
漆喰のメリット | 漆喰のデメリット |
---|---|
|
|
漆喰のメリット・デメリットの順に解説します。
漆喰のメリット
見た目がきれい
漆喰は、純白の輝きをもちとてもきれいです。左官屋さんの高度な技術で、壁に模様を入れることもでき、デザイン性も高いです。
また、イタリアなど海外の漆喰を使用すると、白以外の漆喰を塗ることができます。
メンテナンスが簡単で長持ちする
漆喰は、耐久性が高いのが特徴です。耐久年数は100年と言われています。軽い汚れであれば消しゴムで落ちますし、漆喰が欠けた場合は欠けた個所に漆喰を塗ると元に戻せます。
湿度を調整する
漆喰の壁には、空隙(くうげき)と呼ばれる細かい穴があります。この空隙が空気中の水分子を捕まえたり離したりすることにより、湿度が一定に保たれます。また、気密性が高い空間で発生しやすいカビや結露を防げます。
消臭・抗菌効果
漆喰の主原料は石灰です。石灰は、強アルカリ性であるため消臭・抗菌効果があります。感染症の消毒のために石灰を使うこともあるほど、強い殺菌効果があります。
VOCフリー
漆喰は天然素材のため、シックハウス症候群の原因となるVOC(揮発性有機化合物)を含みません。アレルギー物質を気にする方には、とてもおすすめの建材です。
不燃
漆喰は、不燃材料として建築基準法で認められた耐火性があります。また、天然素材由来のため、火災での死因のほとんどを占める有毒ガスを発生しません。
漆喰のデメリットと対策
施工に手間と時間がかかる
作業工程のついては、この後説明しますが、複雑で手間がかかります。また、高度な技術をもった左官業者が必要です。漆喰の仕上がりは、施工した人の技術で大きく差が出ます。
日本左官業組合連合会に左官屋さんの紹介がありますので、ご参照ください。
費用が高い
漆喰壁は、費用が高いです。手間と時間がかかるため、費用が高くなってしまいます。
しかし、漆喰は100年もつため、コストパフォーマンスが高いです。
この後、漆喰と塗料で外壁を塗った場合の単価を比較します。
糊に含まれる海藻の独特な臭い
漆喰の素材の海藻による独特な臭いが、施工してしばらくは残ります。近年では海藻ではない、植物由来の糊を使う漆喰が開発されました。
漆喰の独特な臭いが苦手な場合は、こちらの漆喰を使うと良いでしょう。
外壁に向かない場合がある
先述したとおり、漆喰は、水分も吸い込む特性があります。外壁を漆喰にされる場合、軒先が出ていないと漆喰が雨水を吸収してしまい、汚れにつながります。
そのため、外壁を漆喰にする場合は軒先が十分に出ていることを確認しましょう。
軒先が短い住居の場合、漆喰を施工した上にトップコートを施したり、漆喰に油分を混ぜ、撥水効果を持たせる必要があります。
漆喰の単価
外壁を漆喰にする際の費用について紹介します。
モルタルを下地に漆喰を施工する場合、施工単価は、1m²あたり約7,500円と言われています。
外壁の状態や使用する漆喰によって費用は変わりますので、業者に見積もりを依頼しましょう。
漆喰と塗料との比較
漆喰と塗料の違いを比較していきます。
以下の項目について比較します。
- 単価
- 耐久年数
- 施工期間
- 補修の頻度
- 補修の方法
漆喰 | 塗料 | |
---|---|---|
単価(1m²/円) | 7,500 | 3,500 |
耐久年数(年) | 100 | 8~15 |
施工期間 | 1カ月から2カ月 | 2週間 |
補修の頻度(年) | 10~15 | 10~15 |
補修の方法 | 漆喰を補修箇所に塗る | 塗り替え |
単価
単価は、あくまで例のため、外壁の状況や使用する漆喰や塗料の値段で大きく変わります。
一般的には、漆喰のほうが高いです。
漆喰にしたいけど、費用を抑えたい方には、漆喰風塗料がおすすめです。値段を抑えつつ、漆喰の見た目にできます。
耐久年数
漆喰は、100年持ちますが、塗料では種類によりますが15年が限度です。
住宅の環境によっては、耐久年数が短くなります。
施工期間
漆喰は乾燥期間が長いです。時期によりますが、2週間程度必要なため、施工期間が長くなります。
補修の頻度
住居の外観を維持するために補修することは、必要です。どちらも同じ頻度ですが、補修の方法が大きく異なります。
また、日常的に汚れがあったら落としましょう。日常的に掃除することで、補修の手間と費用を大きく抑えられます。
補修の方法
漆喰の補修は、補修個所に漆喰を塗るだけで済みます。簡単な作業ですので、自分でホームセンターなどに売っている漆喰で補修できます。
塗料の場合、塗り替えが必要です。塗り替えは、数十万円程度必要です。
漆喰に施工する
ここからは、漆喰を施工する際の流れや、施工後に汚れた際の対応について紹介します。
間違った補修や手入れをしてしまうと、漆喰の耐久性が損なわれることもありますので、把握しましょう。
外壁を漆喰にする施工の流れ
外壁を漆喰にする施工の流れは以下のとおりです。
- 養生
- モルタルの下地処理
- モルタル接着増強剤塗布
- 漆喰塗布
それぞれの工程について解説します。
1,養生
漆喰を塗らない箇所を養生します。雨どいや窓、エアコンの室外機をしっかりと養生し、施工中に汚れないようにします。
2,モルタルの下地処理
漆喰は、モルタルの下地処理した上に塗ります。モルタルの下地処理は、仕上がりに大きく影響する工程です。外壁材の継ぎ目などの溝をモルタルで埋めます。
モルタルは、防災シートに金網を貼り付けて塗っていきます。
3,モルタル接着増強剤塗布
モルタルと漆喰の接着力を上げるために塗ります。使用しないケースもありますが、丈夫な漆喰の壁にするために使用することをおすすめします。
4,漆喰塗布
漆喰は、中塗りと上塗りの2回塗ります。2回塗ることで、ムラがなくなり、きれいに仕上がります。漆喰をきれいに塗ることは難しく、職人さんの腕の見せどころです。
中塗りしたあと、完全に漆喰が乾燥するまで待つ必要があるため、時間がかかります。
この流れで施工が進みます。外壁の状況によっては、下地処理に時間がかかることもあります。検討中の方は、一度業者と相談しましょう。
漆喰の汚れを落とす方法と補修の仕方
漆喰は白く、汚れが目立ちやすいです。もし汚れがついた際の汚れを落とす方法と、漆喰の補修の方法について解説します。
漆喰の汚れを落とす方法
漆喰についた簡単な汚れは、消しゴムで落とせます。
少し頑固な汚れは、塩素系の漂白剤を水で薄め、布で拭きましょう。
絶対に、酸性の洗剤は使わないでください。漆喰がアルカリ性ですので、反応して溶けてしまいます。
洗剤を使う際は、アルカリ性の洗剤を使いましょう。
漆喰の補修の方法
漆喰は、硬い素材ですので基本的には傷がつきません。しかし、強い衝撃で欠けたり、ひび割れることがあります。
修復したい箇所に漆喰を塗ることで、修復できます。ホームセンターに漆喰が売っていますので、定規などで欠けた箇所を埋めましょう。
大きなひび割れがある場合は、業者に補修を依頼する必要があります。小さな傷などがあれば速やかに対応しましょう。
漆喰の外壁にしたケース
自分でDIYして、外壁を漆喰にすれば、費用を抑えられます。その際の注意点を解説します。
また、漆喰にして失敗したケース、漆喰風にしたケースを紹介します。
自分にあった手段を探してみましょう。
DIYで自分で塗ってみたケース
漆喰を塗ることは知識と技術が必要です。
DIYで漆喰を外壁に塗る際の注意点を紹介します。
- 下地処理で不陸(ふりく)処理を丁寧におこなう
- 穏やかな天候が続く時期を選ぶ
- 安定した高所作業ができるようにする
※不陸:水平でなく凸凹していること
下地処理で不陸(ふりく)処理を丁寧におこなう
下地処理の中で、モルタルなどを使い、平らにする処理を不陸処理といいます。
この不陸処理が十分でないと、漆喰が壁としっかりと密着せず、はがれやすくなります。
丁寧に下地処理をおこない、漆喰と壁がしっかりと密着できるようにしましょう。
穏やかな天候が続く時期を選ぶ
漆喰は、中塗りと上塗りが必要です。中塗りが終わった後、完全に乾くまで待つ必要があります。乾燥した穏やかな時期が2週間から3週間続く時期にしましょう。
安定した高所作業ができるようにする
戸建て住宅の外壁を漆喰にする場合、高所での作業があります。業者のように足場を組んでの作業が厳しい場合、作業用の場所をきちんと用意しましょう。安定した状況で作業しないと、ムラができてしまいます。また、大きなケガにつながりますので、十分注意しましょう。
施工難度が高く失敗することが多い
漆喰を塗ることは、高度な技術が必要です。水と漆喰を混ぜる量は、温度と湿度で変化します。漆喰を塗る鏝(こて)は扱いが難しく、職人のようにきれいに仕上げることは難しいです。
自分でやった場合、数年で漆喰が剥がれる可能性が高く、また塗る手間が生まれます。
きれいに仕上げ、長い期間使うことを考え、業者に依頼することをおすすめします。
漆喰にして失敗したと思うケース
漆喰は、メンテナンスがあまりいらないイメージですが、雨水を吸収しやすく、汚れが目立ちやすいです。軒先が長い住居でも軒の真下は、汚れてしまいます。
そのため、漆喰の外壁にしたとしても、メンテナンスは必要です。
また、漆喰は左官屋さんの技術が必要です。高度な技術をもった職人ならば、きれいに仕上げられます。技術が低い場合、想像していた出来ではないケースもあります。
漆喰の外壁を得意とする左官屋さんに依頼しましょう。
漆喰風の見た目の外壁にしたケース
漆喰風の塗料を塗ることで、費用を抑えて外壁を漆喰風にできます。
漆喰にするためには、費用と手間がかかりますが、漆喰風の塗料の場合、それらを抑えられます。
また、漆喰にする際は左官屋さんが必要ですが、漆喰風の塗料の場合、特別な技術はいりません。左官屋さんが不足しているため、希望の時期までに仕上げたい場合、漆喰風の塗料も検討してみましょう。