建物を維持するためには、メンテナンスを定期的に行う必要があります。
建物は、風雨にさらされるため、屋根塗装と外壁塗装が欠かせません。
今回は屋根塗装と外壁塗装の大まかな種類とそれぞれの特徴を紹介します。
もくじ
外壁塗装の種類と特徴
外壁に使用される塗料は、約10年経過すると劣化が始まります。
そのため、一般的に、外壁塗装は10年を目安に定期的に行うのが理想的です。
ここでは、建物のメンテナンスとして必要な外壁塗装の種類と特徴を紹介します。
外壁塗装の塗料の種類と特徴
外壁塗装で使用する塗料の種類は、ウレタン、シリコン、ラジカル、フッ素という順番に耐用年数と価格が上がっていきます。
それぞれの耐用年数の目安は以下の表のとおりです。
塗料の種類 | 耐用年数の目安(年) |
---|---|
ウレタン | 8~10 |
シリコン | 10~15 |
ラジカル | 12~15 |
フッ素 | 15~20 |
塗装業者やメーカーが独自に開発している塗料もありますが、基本的にはどの樹脂を使用しているかでグレードが分かれています。
ウレタン塗料よりも下のグレードとして、アクリル塗料もありますが、施工されるケースは少なくなっています。
それぞれの塗料には「溶剤塗料」と「水性塗料」の2種類あります。
一般的には、建物の外壁に使用されている材質によって塗料を選択します。
溶剤塗料を使用するのは、主にトタンなどの金属製の外壁の場合です。
溶剤塗料は水性塗料に比べて耐用年数が長いと思われていますが、同等のグレードではそこまでの差はなくなっています。
水性塗料を使用するのは、サイディングなどの外壁の場合です。
サイディングとは、外壁に貼り付ける板状の外壁材です。
溶剤塗料に比べて臭いも少なく、住みながら塗り替えを行うリフォームなどで多く採用されています。
外壁塗装の費用の相場
外壁塗装の費用の相場は、使用する塗料のグレードによって大きく異なります。
耐用年数と価格から、シリコン塗料が普及しています。
さらにラジカル塗料が開発されたことで、サイディングなどの外壁ではラジカル塗料を採用するケースも増えています。
塗料の種類による費用の相場は以下の表のとおりです。
塗料の種類 | 費用の目安(円/㎡) |
---|---|
ウレタン | 1,700~2,200 |
シリコン | 2,300~3,000 |
ラジカル | 2,500~3,000 |
フッ素 | 3,800~4,800 |
外壁塗装でウレタン塗料を使用するケースは減っていますが、費用を抑えたい場合におすすめの塗料です。シリコン塗料に比べると独特の臭いがするので注意が必要です。
シリコン塗料はコストパフォーマンスが高い事から、普及率が上がっています。溶剤と水性の両方の塗料があるので状況に合わせた選択も可能です。
ラジカル塗料は比較的に新しい塗料で、耐用年数がシリコンよりも長く、フッ素よりも短いです。塗料の作業性も高いのでシリコンに変わる人気の塗料です。
フッ素塗料は、一般的な塗料の中では最も高価な塗料です。塗膜自体が硬くなるので選択する際には注意が必要です。
外壁塗装以外の工法
外壁のメンテナンスでは塗装以外にも「張り替え」と「カバー工法」という方法があります。塗装では対応出来ない程の劣化が見られる場合の選択肢として検討します。
外壁の張り替え
外壁塗装で対応出来ない場合以外にも、外壁の劣化が部分的な場合でも、塗装の代わりに張り替えを行います。
張り替えを行う際の注意点は、外壁材が新築当時と同じ製品が手に入らない事です。工場で生産されるサイディングは、数年で生産が中止されることがあります。柄が微妙に違うサイディングを、隣同士で施工した際には目立ってしまうので注意が必要です。
カバー工法
カバー工法とは、既存の外壁を残したままで、その上から新しい外壁材を貼る方法です。
カバー工法を選択するメリットは、既存の外壁の解体撤去の必要がないので工事費や処分費を抑えることが可能なことです。
屋根塗装の種類と特徴
屋根塗装も外壁塗装と同様に10年を目安に検討することが理想的です。
外壁よりも劣化が進みやすい屋根には、専用の塗料を使用することが必要です。
なお、近年屋根材や外壁材に多く使用されているガルバリウム鋼板については、以下の記事で紹介しています。
ここでは、屋根塗装の種類と特徴を紹介します。
屋根塗装の塗料の種類と特徴
屋根は紫外線や風雨にさらされるため、塗膜へのダメージも大きく、外壁よりも劣化が進みやすい環境にあります。
屋根塗装で使用される塗料の種類は、外壁塗装と同様に「溶剤塗料」と「水性塗料」があります。水性塗料の方が溶剤塗料よりも臭いが少ないというメリットはありますが、耐久性の観点から溶剤塗料の方を採用される方も少なくありません。
塗料のグレードは、ウレタン、シリコン、フッ素、遮熱・断熱塗料の順番に耐用年数と価格が上がっていきます。
耐用年数は外壁塗料に比べて短いのが特徴です。
塗料の種類 | 耐用年数の目安(年) |
---|---|
ウレタン | 5~7 |
シリコン | 6~8 |
フッ素 | 15~20 |
遮熱、断熱塗料 | 10~15 (製造メーカーによって異なる) |
また、屋根塗装の場合には、使用されている屋根材にも注意が必要です。スレート屋根の中には、塗り替えでは対応出来ないケースもあります。
スレート屋根とは、粘土板岩の薄い板を利用した屋根のことです。軽量で耐震性に優れているため、広く普及しています。
屋根塗装の費用の相場
屋根塗装の費用も使用する塗料のグレードによって大きく異なります。
塗料の種類による費用相場は以下の表のとおりです。
塗料の種類 | 費用の目安(円/㎡) |
---|---|
ウレタン | 1,800~2,000 |
シリコン | 2,000~2,500 |
フッ素 | 3,500~4,500 |
遮熱、断熱塗料 | 4,000~5,500 |
ウレタン塗料を使用するケースは減ってきていますが、倉庫などの人が住まない建物では費用を押えるために採用されることもまだあります。
シリコン塗料の費用の相場は、溶剤塗料か水性塗料かによっても多少の差があります。外壁塗装と同様にシリコン塗料が一般的なグレードになっています。
フッ素塗料は費用が高く、シリコン塗料に比べてコストパフォーマンスが下がってしまうので、採用されることはあまりありません。
しかし、耐用年数を基準に検討すると、外壁にシリコンを採用した場合は屋根にフッ素を採用することが理想的です。屋根と外壁塗装の耐用年数を近いものにすることで、同時期にメンテナンスを検討できます。
遮熱・断熱塗料の費用の相場は、耐用年数が長い分費用も高価です。ただし、遮熱・断熱塗料の場合には、市町村などの補助金の対象になることもあるので、しっかりとチェックする必要があります。
屋根塗装以外の工法
屋根のメンテナンスは、日々の生活の中で劣化状況を把握することが難しいです。
一般的に少し離れた場所からでしか屋根の状態を確認できません。屋根材の欠けや剥がれ、めくれは雨漏りに直結することが多いので注意が必要です。
屋根自体の劣化が進んでしまった場合には、塗装では対応出来ないケースに発展してしまうこともあります。
有効なや対応策として、屋根のメンテナンスでは塗装以外にも「葺き替え」(ふきかえ)と「カバー工法」という方法があります。
屋根の葺き替え(ふきかえ)
葺き替えとは、もともとある屋根材を撤去して、新しい素材に変えることです。
スレート屋根の場合には、欠けや剥がれに対して差し替えを行うことも可能です。
外壁のサイディングと同様に、新築当時の屋根材を手に入れるのは難しいですが、他の製品を差し替えてもあまり目立ちません。
カバー工法
屋根のカバー工法とは、既存の屋根を残したまま、その上に防水シートと新しい屋根材をかぶせる方法です。
屋根材の劣化が進んでしまった場合、カバー工法も有効な対応策です。
既存の屋根材を残した状態で新しい屋根を施工することで、解体費や処分費の削減につながります。さらに屋根が2重になることで室内の遮音性、断熱性の向上も期待できます。
カバー工法はスレート屋根よりも耐久性の高い、金属製の屋根を使用することが一般的です。カバー工法の費用は屋根塗装に比べるとかなり高くなってしまいます。
そのため、カバー工法が必要になってしまう前に屋根塗装などでメンテナンスを行うことが重要なポイントです。
屋根塗装と外壁塗装を行う際のポイント

塗装工事をしている戸建て住宅
屋根や外壁の塗装を行う際には、ポイントを知っておくことで工事費用を抑えることや、塗装後のトラブル軽減にもつながります。
屋根と外壁の塗装を同時に行うことも検討する
屋根塗装や外壁塗装を単独で行う場合、仮設足場の設置工事がそれぞれ必要です。
仮設足場の設置工事には一般的に20万円程度の費用が必要なため、同時に施工することで1回分の費用に抑えることが可能です。
屋根と外壁を同時に塗装することも検討すると良いでしょう。
しかし、同時に行うことで工事期間が長引くため、それぞれ別で工事をするか、同時に行うか、自分に合った方を選択しましょう。
建物全体のメンテナンスを行う
屋根塗装と外壁塗装を行う際、建物全体のメンテナンスを併行して行うことが大事です。
屋根材の塗装と同時に棟板金(むねばんきん)の張り替えや補修、雨どいの調整など、仮設足場が必要な工事をまとめて行うことがポイントです。
耐用年数が長い塗料を使用することも大事ですが、建物全体のメンテナンスをする意味でも、10年程度を目安に屋根塗装や外壁塗装を検討しましょう。