住宅に断熱を施すことで、屋内の気温を一定に保ち、快適に過ごせるようになります。断熱の方法には断熱材を用いる以外にも、断熱性能を持つ塗料を外壁に塗るという方法もあります。
どうして外壁に塗料を塗るだけで、断熱の効果を得られるのでしょうか。そして、どれほどの効果を期待できるのでしょうか。
断熱塗料の効果や仕組み、代表的な断熱塗料を紹介します。
外壁塗装の断熱塗料の効果と仕組み
外壁の塗り替えの検討をしていると、住宅会社や塗装業者から「断熱塗料」をすすめられることがあります。断熱塗料とはいったいどんな塗料で、塗装するとどのような効果が期待できるのでしょうか。
また、似たようなものに、遮熱塗料もあります。断熱塗料と遮熱塗料では何が違うのでしょうか。詳しく解説します。
断熱塗料とはどんな塗料?
断熱塗料とは太陽熱の熱伝導を抑えて、家のなかの温度上昇を防ぐ機能(断熱効果)を持った塗料のことをいいます。
家の屋根や外壁に塗ることで熱の移動をゆるやかにできるため、結果として室温を快適に保てるようになります。太陽光が熱いのは赤外線が含まれているためですが、断熱塗料には赤外線から吸収した熱を伝えにくくする効果があります。
断熱塗料が熱を防ぐ仕組み
熱を防ぐ断熱塗料の仕組みを説明すると、次のメカニズムになります。
断熱塗料には内部に空気層を持つ中空構造の「中空セラミックビーズ」が使用されていて、断熱塗料を塗ると表面にセラミックビーズがほぼ隙間なく敷き詰められたような状態になります。
セラミックビーズで空気層ができることにより、屋根や外壁で受けた熱が屋内に伝わるまでの時間を長くして、室温の急激な上昇を防ぎます。
さらに太陽光に含まれる赤外線を反射する機能も備わっているため、塗装面の温度上昇を防ぎ、ダブルの機能で夏の暑さを軽減できます。
断熱塗料にはどんな効果がある?
もっとも期待できる断熱塗料の効果は、エアコンの効きがよくなって冷房費が節約できることです。
断熱塗料は熱の伝わり方を軽減できるため、真夏の暑い時期でも冷房を必要以上に稼働させなくても済むようになります。ただし、断熱塗料で5℃も10℃も室温を下げられるわけではなく、実際の効果は2~3℃程度といわれています。過剰な期待は禁物です。
そして、断熱塗料は外からの熱を遮断するだけでなく、内側の熱を外へ逃がさずに保温する機能も兼ね備えています。つまり、冬の寒さ対策にも効果を発揮するのです。
さらに、結露を抑える効果もあります。結露は屋外と室内の温度差が大きいと発生します。断熱塗料で塗装すると熱を吸収してゆるやかに屋内へ伝えるため、温度差が大きくならず結露を抑えられるのです。結露はカビの原因にもなるため、カビによる健康被害の防止も期待できるでしょう。
断熱塗料と遮熱塗料の違い
断熱塗料と似た塗料に、遮熱塗料があります。遮熱塗料は「高日射反射率塗料」とも呼ばれて、断熱塗料とは異なる性質の塗料です。ふたつの塗料の違いは、熱の抑え方です。
遮熱塗料は特殊遮熱顔料で熱を反射させ、塗膜と建物の温度上昇を抑えることに特化しています。遮熱塗料には外の熱を反射する機能しかないため、室内をエアコンで冷やすと冷気が外部へと逃げていきます。つまり、遮熱塗料には冬の保温効果がないのです。
断熱塗料のメリットとデメリット
断熱塗料にはさまざまなメリットがあるものの、デメリットも少なからずあります。メリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
断熱塗料のメリットには次のようなものがあります。
- 光熱費を削減できる
- 夏の熱中症、冬のヒートショック予防になる
- 結露防止になる
- 耐用年数が長い
- 環境に優しい
メリットについて、それぞれ解説します。
光熱費を削減できる
室温が外気の影響を受けにくくなるため、冷暖房の効率が高まって光熱費を削減できるようになります。
夏の熱中症、冬のヒートショック予防になる
断熱塗料の効果によって屋内の気温が安定し、エアコンで夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるようになります。それにより熱中症や、ヒートショックを予防できるでしょう。
結露防止になる
屋内が冬の冷気の影響を受けにくくなるため、気温差によって生じる結露を予防できます。結露を防ぐことで、カビなどの発生も抑えられるでしょう。
耐用年数が長い
塗膜が熱を持ちにくい構造になるため、劣化が遅くなるものが多いのもポイントです。そのため一般的な塗料よりも、長い耐用年数を期待できます。
環境に優しい
冷暖房の効率がよくなることで、無駄な電力消費を減らすことが可能です。それは光熱費を節約するだけでなく、環境への負荷を減らすことにもつながります。
デメリット
断熱塗料のデメリットは次のとおりです。
- 塗料の価格が高い
- 建物によっては効果が半減する
- 色の選択肢が限られる
- 仕上がりが職人の技術力に左右される
気になる断熱塗料のデメリットを解説します。
塗料の価格が高い
断熱塗料は同グレードの一般的な塗料と比較すると、1.5倍以上もの価格になります。施工費用を抑えたい場合には適しません。
建物によっては効果が半減する
効果を活かせる外壁材や屋根材でなければ、断熱塗料でも効果は発揮できません。トタンやガルバリウム鋼板など、熱伝導率が高い外壁材や屋根材だと、断熱効果が薄れてしまいます。
色の選択肢が限られる
断熱塗料には濃色のバリエーションが少なく、一般的な塗料と比較すると色の選択肢が限られています。黒や紺色で塗装したい場合は、断熱塗料以外の塗料を選択する必要があります。
また、断熱塗料にはツヤのある仕上げが少ないため、デザインにこだわりのある方には向かない塗料といえるでしょう。
仕上がりが職人の技術力に左右される
断熱塗料はムラになりやすいため、均一に塗るのが難しい塗料といわれています。そのため、仕上がりの良し悪しが職人の技術力に左右されてしまいます。
断熱塗料の種類
断熱塗料にはさまざまな種類があり、メーカーや商品によって価格や機能も異なります。
なかには防音機能のあるものや防露機能を備えたもの、伸縮性のあるものなど、商品ごとに機能が異なるので、断熱塗料に求める機能を明確にした上でどんな断熱塗料がよいのかを選択することが大切です。
そこで国内で販売されている主な断熱塗料のそれぞれの特徴やおおよその費用相場を見ていきましょう。
ガイナ
ガイナは株式会社日新産業が販売している断熱塗料で、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発した断熱技術を応用しています。セラミックを多層化した塗膜をつくれ、優れた断熱性と耐久性を備えています。
断熱塗料のなかでは比較的カラーバリエーションが豊富で、52色をベースに200以上の色合いに対応可能です。騒音やにおい抑制にも効果があります。
ガイナの耐用年数は15~20年程度とされています。断熱塗料のなかでも特に価格が高く、価格は他社製品の約3~5倍です。
キルコート
株式会社キルコートが販売する断熱塗料です。キルコートは特殊な顔料や樹脂からなる粘性液体と、断熱機能を持った中空ビーズを高密度で混ぜ合わせており、摩擦や衝撃に耐性のある塗料になっています。高い伸縮性があるためひび割れしにくく、どんな下地にも使用できるのがメリットです。
環境省が実施する環境技術実証事業のうち、ヒートアイランド対策技術分野において効果が実証された実績があります。耐用年数は15年程度です。
ドリームコート
日本の3大塗料メーカーのひとつである関西ペイント株式会社が製造、販売している塗料で、内断熱工法(RC造)や充填断熱工法(木造)の性能を補強します。窯業系サイディングには不向きです。
ドリームコートは水性断熱塗料のため、施工時のシンナーのにおいが少ないのがポイントです。高い弾性と防水性を持ち合わせているため、外壁がひび割れしたり雨漏りしたりするリスクを減らせます。耐用年数は12~15年程度です。
ロハスコート
ロハスコートは株式会社 OKUTAが販売している断熱塗料で、結露対策にも大きな効果を発揮する断熱性を持っています。また、太陽熱の反射性能も持ち合わせ、伸縮性(200%以上の伸び率)や粘着性、耐候性に優れているのが特徴です。耐用年数は15年以上です。
断熱コートEX
東日本塗料株式会社が製造、販売している断熱塗料です。シリコン変性アクリルエマルション樹脂に、熱エネルギーとなる赤外線を反射させる特殊な遮熱顔料と、熱伝導率を低減させる有機無機ハイブリッドバルーンを使用して、優れた断熱・遮熱性能を持ちます。
建物の北側や湿気の多い場所に発生しやすいカビや藻を防ぐほか、伸び率212%の弾性塗膜が防水効果を発揮します。
耐用年数は8~10年程度と断熱塗料のなかではやや短めですが、価格が比較的安いのも特長です。
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断熱塗料はほかの塗料と比べると、塗装に職人の技術力が欠かせません。そのため、断熱塗料で外壁塗装をするのなら、実績の多い施工会社へ相談しましょう。
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