土壁とは、土に藻やスサを混ぜて塗り固めた壁のことで、日本で昔ながらに使用されてきた技法です。今でも古い町並みを残す地域では土壁がよく使用されています。
近年はサイディングボード(板状の外壁材)やALCパネル(軽量気泡コンクリート)の上にシリコン塗料を使用するのが主流になり、あまり見かけなくなりました。しかし最近、古民家を再現したい方など、土壁を採用したい方が増えてきているようです。
そこで今回は、外壁における土壁塗装の特徴について説明します。費用や事業者選びのコツもあわせて解説しますので、参考にしてみてください。
外壁における土壁塗装の特徴
土壁は、四季によって気温や湿度が大きく変化する日本の季節に合っていることなどから、古来より活用されてきました。
ここで、土壁塗装の特徴について詳しくみていきましょう。
メリット
土壁塗装のメリットを4つ紹介します。
湿度を調節できる
土壁は湿度が高いと水分を吸収し、低ければ水分を放出します。雨の日に部屋干しをしても、結露やカビの発生を防いでくれるでしょう。
また、換気機能もあるため、窓を開けなくても比較的快適に過ごせます。
断熱効果がある
土壁は熱や冷気やを逃がしにくい性質があります。冬場では暖房効率を、夏場は冷房効率を上げることができます。
防火機能がある
土でできた壁なので、燃えにくい性質があります。江戸時代では住宅が密集していたこともあり、土壁が主流だったようです。
脱臭機能がある
土壁は料理やペット、タバコ、人の汗などの臭いを脱臭してくれるだけでなく、アレルギー症状やシックハウス対策の効果も期待できます。
デメリット
続いて、デメリットを3つ紹介します。
施工が難しい
土壁塗装は非常に施工が難しく、職人の腕次第で強度や見た目が変わってしまいます。また、ひび割れしてしまうと土壁本来の効果が発揮できません。イメージしたデザインに仕上がらないといったことも発生しますので、事業者選びは重要です。
施工期間が長い
土壁塗装は何度も塗り重ねながら自然乾燥させるため、施工期間が長くなります。自然乾燥は強度を保つためには省くことができない工程ですので、数カ月かかることもあります。
ひび割れが発生しやすい
どんなに腕のいい職人が施工してもひび割れしやすいのが土壁の性質です。ひび割れしてしまうと土壁本来の効果が発揮できませんので、こまめなメンテナンスが必要です。
砂壁との違い
土壁とよく似た壁として砂壁があります。砂壁は、天然砂や色ガラス粉などを原料とした色砂を糊液に混ぜ合わせたものを上塗りした壁のことです。
見た目にはどちらか分からないかもしれませんが、壁に霧吹きをしたときに「水を吸い込めば土壁」「水滴が表面に残れば砂壁」です。
また、手触りにも違いがあり、土壁はスベスベしておりますが、砂壁はザラザラしています。
自宅の壁が土壁か砂壁かを確認する際に、試してみてください。
土壁塗装のポイント
色を変えることはできる?
土壁の色を変えることは可能です。土壁を剥がして、再施工する際の色変更はもちろん、既存の土壁をそのまま活用し「高意匠塗材」という専用の塗料を使用して変更することも可能です。色のバリエーションも豊富にあるので、希望に沿った色を選ぶことができます。
さらに、色を塗ることにより土壁を太陽光から保護できるため、見た目の変更と同時に耐久性を向上させることもできます。
土壁は補修できる?
土壁の補修もできます。むしろ、ひび割れが発生しやすいデメリットがあるため、定期的なメンテナンスをしましょう。
ただ単にひび割れを補修するのではなく、劣化状況を事業者に確認してもらい、場合によっては下地から補修する必要があります。
土壁の補修方法として一般的なのは、上から塗り重ねる方法です。この方法の注意点は、塗り重ねた場所とそうでない場所とでは、質感や色などが変わってしまい、補修した場所が見た目で分かってしまうことです。いくら腕のいい職人が既存の土壁と同じ材料や色を使っても、同じにはなりません。なぜなら、既存の土壁は太陽光にさらされているため、退色したり質感が変わっているからです。
ですので、補修するのであれば全面的な重ね塗りがおすすめです。
ちなみに、室内の土壁であれば土壁調のクロスがあります。意匠を重要視する方であれば、クロスに変更するのも検討の余地がありそうです。
費用相場
土壁塗装は、高額ということが知られていますが、ほかの塗装と比較して、どれくらい違うのでしょうか。
新築で下地から土壁塗装する場合
1平方メートルあたり約20,000円~25,000円かかります。土壁塗装は各工程毎に乾燥時間がかかることや技術力が必要なことから、これぐらいはかかってしまいます。
また、足場を設置する必要があるため、足場費用としてさらに約1,000円~1,500円/㎡は生じるでしょう。
メンテナンスで既存の土壁に塗り重ねる場合
約4,000円~7,000円/㎡と、同様に足場費用として約1,000円~1,500円/㎡がメンテナンス費用の相場です。下地から塗装するわけではないので、当然新築よりは安く済みます。
しかし、ほかの塗料であれば、費用相場は以下のとおりです。
塗料 | 費用相場(円/㎡) |
---|---|
アクリル塗料 | 1,400~1,600 |
ウレタン塗料 | 1,700~2,200 |
シリコン塗料 | 2,300~3,000 |
フッ素塗料 | 3,800~4,800 |
比較すると、土壁は一般的に使用されるどの塗料よりも高いことが分かります。
ただし、実際の費用は事業者によって異なります。正確な相場が知りたいという方は、複数社から見積書を取得し、適正価格を把握しましょう。
土壁塗装事業者の選び方
事業者によって仕上がりや耐久性に差が出ますので、事業者選びは慎重に行いましょう。
そもそも、土壁塗装は自分でもできる?
塗装費用を抑えたい方は、「自分で土壁塗装をすれば安く抑えられるはず」と考えるでしょう。
しかし、DIYで実施する方法などはネットで調べれば出てきますが、あまりおすすめはできません。
土壁塗装は高度な技術力が必要で、以下のようなリスクがあるからです。
- イメージどおりの仕上がりにならない
- ひび割れを起こす
- 仮に初期費用を安く抑えられても、メンテナンスで大幅にコストがかかる
デメリットが非常に多いので、信頼できる事業者に依頼することをおすすめします。
事業者の選定方法は?
では、どのように事業者を選べばよいのでしょうか。
まずは土壁塗装の実績が豊富にあることが重要です。事業者のホームページを見ても土壁塗装の実績は出てこないことが多いため、実際に問い合わせてから聞くのがよいでしょう。
周りの住宅に土壁塗装の家があれば、そのオーナーにどこの事業者で施工したのか聞くのも一案です。
また、多くの事業者は見積り作成にあたり現地確認をします。その際に土壁塗装について施工にあたる人数や保証期間などいろいろ聞いてみましょう。
土壁塗装のように専門性が求められる場合の事業者選びにおいては、一社のみの見積りで決めないことが何より大切です。複数の事業者から見積書をもらって比較することで、相場観や信頼できる事業者の特徴がみえてきます。手間はかかりますが、高い買い物になるので、やる価値はあるでしょう。