無機塗料とは、外壁や屋根の塗装で使われる数多くある塗料の中でも、高い耐候性を誇る最高グレードの塗料です。
耐候性とは、太陽光や湿度、風雨への耐久性です。
塗料は、樹脂・溶剤・添加剤・顔料の4つの成分で構成されており、その中でも樹脂は、塗装後に塗膜を作り外壁を保護する役割があります。
樹脂に紫外線で分解されないガラスや石などの無機物を用いたものが、無機塗料と呼ばれます。
本記事では、無機塗料の特徴をほかの塗料と比較しながら紹介します。また、おすすめの無機塗料も最後にご紹介するので、ぜひ塗料選びの参考にしてください。
無機塗料の特徴
塗料の樹脂をすべて無機物にすると外壁にしっかりと密着しないため、無機塗料は有機物を少し含ませ、密着させやすくしています。
つまり、有機物と無機物のメリットを最大限に活かした塗料といえます。
無機質の塗料には、以下の6つの特徴があります。
- 耐候性の高さ
- カビや苔ができにくい
- 汚れが付着しにくい
- 不燃性
- 扱いの難しさ
- 艶消しができない
特徴①耐候性が高い
太陽光・温度・湿度・雨などへの強い性質を持ち、厳しい自然環境でも塗装が劣化しにくく、長い期間美観を維持できます。
色あせやチョーキング現象の原因となる紫外線の影響を受ける有機物を少ししか含まない無機塗料は、色あせやチョーキング現象が起きにくいです。
外壁塗装の塗替え時期を判断する指標となる色あせやチョーキング現象については、下記コラムをご参照ください。
特徴②カビや苔ができにくい
一般的な塗料に多く含まれる有機物は、カビや苔の発生原因です。
無機塗料は、有機物が少ないため、カビや苔が発生しにくいです。
また、無機塗料は塗膜が綿密で親水性が高く、カビや苔が付着しても、雨水と一緒に洗い流されます。
そのため、無機塗料は、通気性や日当たりの悪い場所など、カビや苔ができやすい環境におすすめです。
特徴③汚れが付着しにくい
無機塗料は、有機塗料に比べて静電気が起こりづらいという特徴があります。
空気中のごみやほこりは外壁面から発する静電気に引き寄せられることで、付着してしまいます。
つまり、無機塗料はごみなどが付着しにくく、美しさを長い期間維持できます。
特徴④不燃性
鉱物やガラスなどの無機物を主成分としているため不燃性があります。
ただし、無機塗料はあくまで無機物を主成分としているだけです。有機物も含まれているため、可燃性があることに注意しましょう。
特徴⑤艶消しができない
現在大手メーカーが販売する無機塗料には、艶消しができるものはありません。
また艶の調整を行っても、3〜5分艶までの商品が多数です。
外壁の光沢を出す艶は、艶あり・7分・5分・3分・艶消しの5段階あります。
そのため、和風の建物など、家によっては無機塗料を塗ることで安っぽい見た目になるおそれがあります。
なお、艶の調整をする際は、塗りムラができやすくなってしまうため注意が必要です。
特徴⑥扱いの難しさ
無機塗料はほかの塗料と比べて硬化するまでの時間が早いため、高い技術力が求められます。
下地処理から洗浄、塗装などの全工程を、きちんと行わなければ十分な効果が期待できません。
そのため無機塗料を塗装する際は、施工業者の高い技術力が求められます。
十分な効果を得るためにも、きちんとした技術力と工程通り行ってくれる業者を選ぶことが大切です。業者を選ぶ際は、無機塗料の知識や実績を確認して慎重に選びましょう。
無機塗料とほかの塗料を比較
無機塗料とほかの塗料の耐用年数と価格をまとめると、以下のとおりです。
塗料の種類 | 耐用年数(年) | 費用相場(円/㎡) |
---|---|---|
アクリル塗料 | 約5~7 | 1,400~1,600 |
ウレタン塗料 | 約8~10 | 1,700~2,200 |
シリコン塗料 | 約10~15 | 2,300~3,000 |
ラジカル塗料 | 約10~15 | 2,500~4,000 |
ピュアアクリル塗料 | 約12~15 | 3,500~4,500 |
フッ素塗料 | 約15~20 | 3,800~4,800 |
無機塗料 | 約20~25 | 4,500~5,500 |
光触媒塗料 | 約15~20 | 4,200~5,000 |
遮熱塗料 | 約15~20 | 5,000~5,500 |
ほかの塗料に比べて、無機塗料の耐用年数は圧倒的に長いことが分かります。
また、外壁や屋根の塗装に多く使用されるウレタン塗料と比べると、2,800~3,300円/㎡も高価ですが、耐用年数が長いため長期的に見るとコストパフォーマンスに優れています。
おすすめの無機塗料と選び方
無機塗料といっても、商品によって性能や価格が異なるため、自分の希望条件に合った塗料を選ぶ必要があります。
おすすめの無機塗料3選
おすすめの無機塗料は、
- エスケー化研「スーパーセラタイトF」
- 日本ペイント「アプラウドシェラスターⅡ」
- KFケミカル「KFワールドセラ」
の3つです。
エスケー化研「スーパーセラタイトF」
「スーパーセラタイトF」は、無機とフッ素の複合塗料となるため、危険性のある溶媒を使う必要はありません。
溶媒は、固体を溶かすための液体で、水または有機溶媒といわれるシンナーなどを使います。
高い性能と使い勝手のよさによって、安定した性能が期待できます。
さらに、水性の無機塗料となるため、溶剤中毒や火災の心配もないです。
日本ペイント「アプラウドシェラスターⅡ」
「アプラウドシェラスターⅡ」は、大手メーカーの日本ペイントが出す代表的な無機塗料です。
紫外線に強く超高耐候性をもっており、日本ペイントの中でも、最高ランクの無機塗料です。
オプションの「クリスタコート」を加えればさらに低汚染性能を高めることが可能です。
KFケミカル「KFワールドセラ」
KFケミカルが提供する無機塗料「KFワールドセラ」は、一般的な無機塗料に比べて耐候性が高い塗料です。
無機物が30%以上も含む塗料であり、紫外線に強く高い光沢を維持し続けます。
サイディングボードやモルタル、ガルバリウム鋼板などさまざまな外壁に対応できるため、塗装しやすい塗料です。
無機塗料の選び方
無機塗料を選ぶ際は、性能と値段で選ぶのがおすすめです。
無機塗料の種類によって耐候性や低汚染性が異なるため、どの程度の性能を必要とするのかあらかじめ決めておくことが大切です。
性能が高いほど、費用も高額なため、予算と相談して決める必要があります。
費用(円/m²) | 性能 | |
---|---|---|
エスケー化研「スーパーセラタイトF」 | 2,900 |
|
日本ペイント「アプラウドシェラスターⅡ」 | 4,270~5,400 |
|
KFケミカル「KFワールドセラ」 | 4,900~6,300 |
|
無機塗料の種類によって、塗装できる外壁材や艶の調整できる範囲が異なります。
求める性能と予算を事前に考え、慎重に無機塗料を選びましょう。
プロの専門業者に相談してみましょう
高性能な無機塗料ですが、扱いが難しく、高価な塗料です。
しかし、耐候性が高く汚れが付着しにくい無機塗料は、建物を長期間守るためにもおすすめです。
外壁や屋根の塗装を成功させるためには、さまざまな選択肢から自宅に合った適切な塗料を選ぶことが大切です。
無機塗料だけでも、ご紹介した商品以外にも豊富なラインナップがあります。まずは専門の業者に外壁や屋根を実際に確認してもらい、ほかの塗料とも比較した適切なアドバイスをもらい、塗料を選びましょう。
そして、無機塗料の塗装実績がある業者に、質の高い施工を依頼しましょう。
無機塗料に関するよくある質問
- 無機塗料って何?
- 樹脂の主成分に無機物を含んでいる塗料です。耐候性が高く、最上位グレードの塗料として、近年注目されています。
- 無機塗料の注意点は?
- すぐに乾燥してしまうために、扱いが難しく、高い施工技術が求められます。高価な塗料ですので、無機塗料の施工実績や専門知識が豊富な塗装業者を選びましょう。