アスベストは繊維状の鉱物のことで、石綿(せきめん・いしわた)とも呼ばれます。
以前、アスベストは建築材として屋根や天井、壁などの外装・内装に使用されていました。建築材の用途では主に、断熱材や保温素材としての塗料の吹き付けが挙げられます。
1975年(昭和50年)に名称表示を義務付けて原則禁止し、さまざまな法令変更のあと、2012年以降アスベストは製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。(参考:一般社団法人JATI協会)そして、アスベストはグラスウールなどに取って代わります。
本記事では、アスベストの見分け方3選やアスベストを発見したときの対処法、アスベストの調査から除去までの流れと費用を解説します。
アスベストの見分け方3選
アスベストの見分け方について具体的に紹介します。
形状や表面の硬さ
アスベストにおける建材としての代表的な使われ方は、吹き付けによるものです。壁や天井などの表面に使われていることが多いため、見分け方は見た目と硬さによる判断が代表的です。たとえば、綿(メン・わた)のように繊維状の壁や天井があれば、アスベストの可能性が高いです。
そのうえで針を使ってどの程度、深部まで貫通するかを確認できれば、アスベストであるかどうかの予測がつきます。具体的には、数cmほどの深さまで簡単に挿入できるのはアスベストくらいのため、ほかの建材と見分けることができるでしょう。
また、アスベストは天井材であるジプトーンのような低コスト建材にも以前含まれていました。石膏ボードのような低コストの建築材を使用していれば、わずかでもアスベストが入っていることがあります。
色や光沢
アスベストの見分け方として建築材の色や光沢の具合が挙げられます。最初に述べたように、アスベストは鉱石からできており、その鉱石の色が反映されます。つまり、青石綿と呼ばれる「クロシドライト」なら青色、茶石綿の「アモサイト」なら茶色のように、青色、茶色、白色、灰色があればアスベストが使われていることがあります。
吹き付けの場合には、色が2重になることもあるため、さらに見分けやすくなります。加えて、絹のような独特の光沢に波の形がある場合は、アスベストが使われていることが十分に考えられます。
建築材や年度
2004年の「労働安全衛生法施行令」改正によって、アスベストを含む建材の製造は禁止されています。そのため、2005年以降から建築材には使われていません。
つまり、調べたい建築物の建てた年代や以前改装をしたのがいつか、使われる建材がいつ製造されたものなのか、などが分かればアスベストの有無を建築材や年度から逆算して判断できます。
たとえば、アスベストが含まれているのは1970年から1999年に使用された「建築用仕上げ塗装材」、1970年から2005年に使用された「建築用下地調整塗材(フィラー)」、1960年から2004年の建材「石綿含有金属系サイディング」、「繊維強化セメント板」などです。
2004年以前に建てられた建築物は年数が長いほどアスベストが増え、1975年以前は積極的に使われていたこともあり、古い建築物は調べてみると今もアスベストが建材として残っている可能性が高いでしょう。
アスベストを発見したら?適切に除去してもらおう
WHOの報告でアスベストは、吸い込むと肺がんを引き起こすおそれがあると発表されています。どの程度吸い込めば肺がんになるのかは正確にわかっておらず、大量に吸い込んだ場合にリスクが高まることが示唆されています。
肺がんは肺細胞の物理的な刺激によって起こるとされ、潜伏期間は15~20年と長く、飛び散った粉を10年以上吸い込んだ現場の働き手が発症しやすいのも特徴です。加えて、「悪性胸膜中皮腫」の場合は若いときに吸い込むほどリスクが高まります。
以下では、アスベストを適切に除去してもらうべき理由を説明します。
飛散防止対策のため
アスベストを発見した場合は、工事の際に除去や飛散を防止するための封じ込め、もしくは囲い込みが必要です。これは施工作業やアスベストの除去作業時に、周囲にアスベストの粉塵が飛び散らないようにすることや、風にのって近隣の民家、人に被害が出ないようにする意味合いがあります。
外装、内装に残さないようにするため
リフォームや外壁塗装では、適切に除去してもらわないとアスベストがそのまま残ってしまう危険があります。
確実にアスベストを除去してからリフォームや外壁塗装を進めましょう。
作業員の安全確保のため
作業員が建材の解体中にアスベストを吸い込んで、健康被害を引き起こすのを防ぐ意味があります。
先に施工会社へ発注する場合は、安全に作業できる環境を整える必要があります。少なくとも、アスベストの可能性を事前に相談できれば、施工会社が換気や密閉設備などの安全対策をスムーズに行えます。
アスベストの有無を見分けるのは、施工会社の仕事
アスベストの有無は、予測はできても一般人が正確に見分けるのは難しいでしょう。確かに、表面に使われていれば見分けられることもありますし、見分け方で紹介した方法でアスベストの有無を探ることも可能です。
しかし、建材をうえからコテや吹き付けで重ねている場合もあり、一般人が外観や年代だけでアスベストの有無を判定するのは、ほぼ不可能です。そのため、発見するのはあくまでも施工会社の仕事です。
アスベストの事前調査、分析、除去は施工会社の義務
施工会社の義務としてアスベストの事前調査、分析、除去をすることが法律で決められています。
「大気汚染防止法」改正では、まず調査によってアスベストの建材が使われているかどうか、の確認が求められています。その際に、発注者が設計図などを渡す必要があります。その設計図を確認するか、なければ目視での確認が必要です。
また、目視できない部分は内部を確認した際に、改めてアスベストの調査をする必要があります。このとき、施工会社のスタッフに必要となるのが「建築物石綿含有建材調査者」といった、資格保有者の存在です。
結果報告も義務
施工会社の義務として一定の条件に当てはまった建築物は、事前調査に加え、結果報告が義務付けられています。基本的にはアスベストの有無に関係なく、地方公共団体(自治体)への報告が求められます。
ちなみに、義務となる条件は次のとおりです。
- 建築物の床面積が80m2以上の場合
- 発注時の請負金額合計が100万円以上の場合
上記の2つのうち、1つでも当てはまれば報告は義務です。
アスベストの調査から除去までの流れと費用
アスベストは施工会社によって細かな違いはあれど、調査から除去までの流れが大まかに決まっており、手順に大きな違いはありません。
また、アスベストの除去工事は見積もりに上乗せされるため、費用の確認が必須です。
流れ
アスベストの調査から除去までの流れは次のとおりです。
- アスベストの調査、見積もりの依頼
- アスベスト有無の分析
- 作業計画の確認
- 除去作業の実施
事前の調査、書面による調査、現場の目視調査(建材による判断)を経て、アスベスト有無の検討を行います。このとき、見積もりが提示されます。
調査からアスベストの有無を判定するには、顕微鏡や検査などに使う材料である「試料」、「X線回折装置」のうち、いずれかを使って、アスベストに見られるような繊維を解析します。
分析の結果、アスベストの有無に関係なく、対象の建築物が条件を満たせば行政に報告するという流れです。条件に該当せず報告が必要ない場合は3年間、施工会社側が調査記録を保管します。
その後、アスベストの有無によって、リフォームや外壁塗装計画を施工会社が立て、アスベストがあった場合には、工事の実施について労働基準監督署などへの報告も実施します。発注者の了解を経たら、続いて現場での除去作業です。
除去や飛散を防止するための封じ込め、もしくは囲い込みが工事に組み込まれます。作業したら終わりではなく、最後に施工会社が取り残しの確認をします。このとき不手際があれば、除去作業のやり直しとなるため、施工会社にとっては気の抜けない作業です。
費用
アスベストの調査から除去にかかる費用は、発注者が施工会社に支払います。支払い費用は、処理面積に応じて次のように異なります。
処理面積(m2) | 面積(m2)あたりの金額(万円) |
---|---|
300未満 | 2~7 |
300~1,000 | 1.5~4 |
1,000以上 | 1~3 |
発注者はアスベスト調査に協力する義務がある
2022年4月、法改正によりアスベストの事前調査が義務化されました。もし、外壁塗装や屋根塗装、屋根工事の改修費用が100万円以上の場合は、事前調査が必須です。例外として、外壁塗装の仕上げに行う「上塗り塗装のみ」を行う場合は、事前調査が不要な自治体もあります。
施工会社の中には、アスベストの調査が必須であることを知らない会社や、費用削減のために法律を無視して工事している会社も存在します。この場合、法律に順守しなかった責務は施工会社にあるといえますが、発注者にも次の責務があります。
- 解体工事や改修工事の発注者は費用を適正に負担すること、調査に関し必要な措置を講ずることで、調査に協力すること
- 解体等工事や改修工事の発注者は元請業者に対し、施工方法、工期、工事費そのほか特定工事の請負契約に関する事項について、作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮すること
- 吹き付けによるアスベストやアスベストが含まれている断熱材などを解体、改修、補修する場合は、県などに届け出ること
参考:大気汚染防止法
万が一、届出が必要な工事が未届けとなった場合は発注者が法の罰則対象となるので注意しましょう。
発注者が法の罰則を受けないために、慎重に行いたいのが施工会社選びです。施工会社を選定する際は、見積もりにアスベスト調査費用が計上されているか、会社に「建築物石綿含有建材調査者」といった事前調査の資格を保有するスタッフがいるのか、しっかり確認しましょう。
確認は会社ホームページでも可能ですが、便利なのが塗装や屋根工事の一括査定サイト「ぬりマッチ」を利用することです。ぬりマッチは、チャット形式の質問に必要な情報を入力いただくことで、お住まいのエリアや立地条件をもとに複数社の見積もり金額を確認できるサイトです。
査定対象となるのは、電話でのヒアリング調査などをもとに審査済みの会社のみですので、間違ってもアスベストの法改正について知らない、会社ではないでしょう。また、複数の見積もりを見比べられるため、相場をもとに会社選びが可能です。
工事を行う際は信頼性と費用のバランスを見て、最適な会社を選びましょう。