家の外壁塗装には100万円前後もの高額な費用がかかるため、できるだけ長く持ってほしいところです。一般的に外壁塗装の耐用年数は10年といわれており、10年ごとの外壁の塗り替えが推奨されています。
しかし、外壁を塗り替えるタイミングは、必ずしも10年ではありません。外壁塗装の耐用年数、適した塗り替えのタイミングを解説します。
外壁塗装の塗り替えの目安が10年なのは嘘?
「外壁塗装の塗り替え周期は10年が目安」といわれることが多く、新築後または前回の塗装から10年が経過するとハウスメーカーや外壁塗装の施工会社から、外壁の塗り替えをすすめられることがあります。
しかし実際に外壁の塗り替えが必要になる時期は、現在使用している塗料の種類や建物の外部環境といったさまざまな要因によって異なります。
したがって、最適な塗り替えの時期を見極めるには、使用している塗料の種類や実際の劣化具合、建物の周辺環境などを確認して、総合的に判断することが大切です。
外壁塗装の耐久年数を決める3つの要素
外壁塗装の最適な塗り替え時期を知るには、次の3つの要素から判断します。
- 塗料の耐用年数
- 建物の外部環境
- 外壁のメンテナンス状況
それぞれの要素について解説します。
塗料の耐用年数
外壁塗装にはさまざまな種類の塗料が使用され、塗料の種類によって耐用年数が異なります。外壁塗装に使用される主な塗料と、耐用年数の目安、特徴は次の表のとおりです。
塗料の種類 | 耐用年数の目安(年) | 特徴 |
---|---|---|
アクリル系塗料 | 5~8 | 発色のよさがメリット。耐用年数が短いため近年はあまり使われない |
ウレタン系塗料 | 8~10 | 木や金属などさまざまな場所を塗装できる |
シリコン系塗料 | 10~15 | 費用対効果の高さから人気が高い。一般的な外壁塗装の塗料 |
ラジカル(制御型)塗料 | 12~18 | 2012年に登場したばかりの塗料で、汚染や紫外線に強い。コストパフォーマンスの高い塗料のひとつ |
光触媒塗料 | 16~22 | セルフクリーニング機能があって汚れにくい。日当たりによっては効果を発揮できない |
フッ素塗料 | 15~20 | 耐候性が高いため頻繁に塗り替えられない分譲高層マンションや商業施設などでもよく使われる。高価 |
無機塗料 | 18~22 | 劣化の原因になる有機物の含有量が少ないため、耐用年数が長い |
注意!30年以上持つ塗料は嘘
施工会社の営業担当者のなかには「耐用年数が30年以上のオリジナル塗料を使用しています」といったセールストークを行う人がいます。しかし、耐用年数がもっとも長い無機塗料でも最長25年程度で、耐用年数が30年以上の塗料はいまのところ存在しません。
したがって、耐用年数が30年以上の塗料をアピールする営業担当者は、とても信用することはできません。依頼する施工会社の候補からは外したほうがよいでしょう。
建物の外部環境
外壁塗装の塗膜の耐用年数は、建物の外部環境の影響を受けて変わります。次のようなケースでは、塗膜の耐用年数が通常より短くなりがちなので注意しましょう。
近くに河川や池などがあって湿度が高い
建物の近くに河川や池などがあると周辺の湿度が高くなるため、外壁にコケやカビなどが発生しやすくなります。コケやカビが保持する水分により、塗膜の耐久性が下がって耐用年数が短くなってしまうことがあります。
海が近く潮風の影響を受ける
海が近くにあると、潮風の影響を受けて外壁塗装の劣化が進行しやすくなります。潮風には塩分が含まれており、塗膜に付着して劣化を促進させてしまうのです。こういった潮風による被害のことを塩害といいます。
塩害は建物の外装の劣化だけでなく、電線や電気設備の故障を引き起こすこともあります。
建物の南面は紫外線の影響を受けやすい
日当たりのよい南面は直射日光が当たって紫外線の影響を受けるため、塗膜のチョーキング現象が発生しやすくなります。チョーキング現象とは白亜化現象とも呼ばれ、雨や紫外線によって塗料のなかの合成樹脂が分解されて、顔料が粉状になって塗膜の表面にあらわれることです。
チョーキングが発生している状態は、塗膜の劣化が起こっている状態で、雨水などをはじかずに吸収してしまいます。
幹線道路が近く車の排ガスの影響を受ける
建物が交通量の多い幹線道路の近くにある場合は、車の排ガスの影響で外壁に汚れが付着しやすくなります。また、幹線道路は大型車両が頻繁に通行するため、振動によって外壁にひび割れが生じやすいことにも注意が必要です。
外壁のメンテナンス状況
外壁塗装の耐久年数を延ばすには、定期的なメンテナンスが欠かせません。定期的にメンテナンスを行うことで塗膜の劣化を防ぎ、耐用年数を延ばせるのです。
外壁に付着した汚れやコケ、カビなどを家庭用の高圧洗浄機で洗い流すほか、定期的に施工会社に外壁診断を依頼してひび割れ補修など、小まめにメンテナンスを行いましょう。
塗料の耐用年数は関係なし!外壁塗装が必要なサイン
外壁の塗料には、塗料の種類ごとに耐用年数の目安があります。しかし、外壁に次のような症状が見られるようになったら、耐用年数に関係なくできるだけ早く外壁塗装を行う必要があります。
そのまま放置し続けると雨漏りなどより深刻な症状が発生して、高額な補修費用がかかることがあります。
広範囲にわたる塗膜の剥がれ
外壁の広範囲にわたって塗膜の剥がれや膨れが生じている場合は、明らかに塗膜の寿命が尽きていることを示しています。
すでに外壁材を保護する機能が失われているため、早めに対処しなければ外壁内部に雨水が浸入して、構造躯体が腐食してしまう原因になります。
幅が広くて深い外壁のひび割れ
塗膜の保護機能が失われると、外壁に浸入した雨水が乾燥と収縮を繰り返し、外壁にひび割れが発生します。また、反りや歪みなども生じることもあるので注意が必要です。
幅が0.3mm以上のひび割れが発生している場合は、塗膜を貫通しているおそれがあります。至急、何らかの補修を行う必要があります。
シーリングの剥離や亀裂
外壁材の継ぎ目に施されたシーリングが剥離したり亀裂が入っていたりするときは、耐用年数を過ぎたことによる劣化が疑われます。早急にシーリングの打ち替えを行うとともに、外壁の塗り替えが必要な状態です。
鉄部のサビ
塗膜が耐用年数の経過で劣化すると、鉄部にサビが発生する原因になります。塗膜が水をはじけなくなって吸収してしまうためにサビが生じ、そのまま放置すると鉄部に穴が開くほどサビが進行することもあります。サビがごく小さいうちに、早く外壁を塗り替えましょう。
天井・壁に発生した水染みやカビ
塗膜の防水機能が失われると、最悪のケースだと室内に雨漏りが発生します。室内の天井や壁に雨漏りが原因と思われる水染み跡やカビが見られたら、早急に外壁の塗り替えが必要です。
外壁塗装の時期が近いサイン
外壁の塗膜は経年に応じて、徐々に劣化します。劣化の症状にはさまざまなものがあり、なかにはいますぐ補修する必要のないもの、経過を観察して判断するものなどがあります。
いずれにしても、すぐ塗り替える必要はないものの、塗り替えの時期が近づいているサインではあります。次に紹介するようなサインを見かけたら外壁の塗り替えが近いと考え、タイミングをうかがっておきましょう。
幅0.3mm未満のひび割れがある
幅が0.3mm未満の微細なひび割れであれば、防水上の問題はほとんどありません。しかし、一度発生したひび割れは進行していくおそれがあるため、定期的にひび割れの大きさをチェックする必要があります。
ひび割れが大きくなるようであれば、塗り替えを検討しましょう。
色あせや変色が起こる
塗膜の色あせや変色の原因は、塗膜が劣化してきている証しです。初期であれば塗り替えを急ぐ必要はありませんが、著しい色あせが生じたら塗り替えが必要です。色あせは見た目が悪いだけでなく、塗料の性能が低下していることをあらわしています。深刻な症状につながる前に、塗り替えを検討しましょう。
外壁に触ると白い粉状のものが付着する
塗膜の劣化した外壁に触れると、手に白い粉状のものが手につきます。この現象をチョーキングといい、塗膜の防水機能が失われていることを示しています。
防水機能が失われた塗膜は雨水を含むようになり、やがて外壁内部に雨水が浸入する原因となります。外壁の塗り替えを検討する時期が来ているといえるでしょう。
コケやカビ、藻の発生
外壁にコケやカビ、藻が発生するようになったら、塗膜の防水機能が低下しているサインです。水をはじくはずの塗膜が水を吸収してしまい、カビや藻、コケが生えるようになっているのです。
小規模なうちは、洗浄でコケやカビなどを落として様子を見てもよいでしょう。しかし、コケやカビが大量に生えるようになったら、塗り替えを検討してください。
外壁塗装の法的な耐用年数は?
外壁塗装の塗料の耐用年数とは、塗装してから次の塗り替えが必要になるまでの年数のことをいいます。日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研などの塗料メーカーが、商品ごとにカタログやWebサイトで塗料の耐用年数を公開しています。
しかし、塗料の耐用年数は、業者の施工ミスや建物の立地などによって短くなってしまうこともあるため、あくまでも目安といってよいでしょう。
また、アパートなどの場合は、外壁塗装費用は「修繕費」になるケースと「資本的支出」になるケースがあります。
修繕費とする場合はその年に費用の全額を経費として処理し、経費はその年の所得から差し引かれるため、翌年かかる所得税を減らすことが可能です。
それに対して資本的支出とは、固定資産の価値を高めるために要した費用のことで、法定耐用年数で按分して経費処理することになります。
修繕費になるのか資本的支出になるのかは、行った塗装工事が建物の価値を高めたかどうかで分かれます。外壁塗装には法定耐用年数が定められていないため、塗料の耐用年数は「期待耐用年数」のことをいい、前述した耐用年数を目安にしています。
家を長持ちさせるには、定期的な外壁塗装が必要です。耐用年数を過ぎて気になる症状を見つけたら、施工会社に相談してみましょう。外壁の塗り替えを含めた、さまざまな対処法を提案してくれます。施工会社は「ぬりマッチ」で紹介していますので、まずはお申し込みください。