塩害とは塩分を多く含む風にさらされて、作物や住宅などが害を受けることです。
海岸沿いにある家は、潮風の影響で変色することがあります。住宅は将来へ残すことのできる、大切な財産です。しっかり塩害への対策を行い、財産を守りましょう。
塩害対策として、外壁などへの塗装について解説します。
住宅における塩害とは
海の近くに建っている住宅は、塩害を受けるおそれがあります。潮風は遠くに届くこともあるため、海から数Kmも離れていたとしても注意が必要です。
塩害の症状や塩害を受けやすい住宅の特徴、対処せずに放置したときの危険性について解説します。
住宅で起こる塩害の症状
住宅で塩害を受けた場合、代表的な症状には次のものがあります。
症状 | 症状の詳細 |
---|---|
サビ | 金属にサビが生じて茶色に変色する。金属系サイディング※の外壁、雨戸の金属部分、屋根などに発生しやすい |
チョーキング | 外壁の表面に粉状のものが生じる。外壁に指で触れると白い粉がつく。窯業系サイディングやモルタルの外壁で起こる |
塗装の剥がれ | 塗装が劣化して剥がれる |
色あせ | 外壁の塗装が色あせる |
ひび割れ | コンクリート内にある鉄筋にサビが生じて膨張し、ひび割れが起こる |
構造※の腐食 | 塗装の剥がれにより外壁の耐久性が落ちるなどして、構造が腐食する |
※サイディング…外壁に張る板状の外壁材のこと
※構造…住宅の骨組みのこと
このように塩害で生じる住宅の症状には、さまざまなものがあります。住宅が受ける潮風の影響の強さがおわかりいただけたと思います。
塩害の症状があらわれていても、放置するとより深刻な被害を生じるおそれがあります。塩害を最小限で食い止めるには、早めの対策が必要です。
塩害を受けやすい家の特徴
塩害を受けやすいのは、海から近い地域です。海岸から約300〜500mの範囲が、塩害への注意が必要なエリアです。
しかし潮風はかなり遠くにも届くため、風向きや風力によっては海から何kmも離れている場所でも塩害が生じます。潮のにおいがする場所は、塩害が発生しやすい地域だと思って注意してください。
また、使用している外壁材などによって、塩害の受けやすさ、受けにくさがあります。金属系サイディングや窯業サイディングの外壁材、トタン、スチールなどを使用している建物は塩害を受けやすく、樹脂系サイディングの外壁材は一般的に塩害を受けにくいです。
まずは自宅に使用している外壁材を確認してみましょう。
塩害を放置するとどうなる?
塩害の症状があらわれていたのに対処せずに放置すると、住宅の内部にまで影響がおよび、住宅そのものの耐久性が落ちてしまいます。
被害が建物の内部にまでおよぶと、外壁などの塗装だけで対処するのは困難です。外壁の貼り替えや屋根の葺き替えなどの大規模な工事が必要になります。早い段階であれば塗装だけで対処できるため、放置することでかえって高額なメンテナンス費を支払うことになります。塩害に気づいたら、できるだけ早く対処しましょう。
塩害対策としての塗装
外壁や屋根の塗装は、塩害対策に有効です。ただし、外壁や屋根の内部にまで塩害がおよんでしまうと、塗装だけでは対処できません。そのため、できるだけ早く塩害対策をする必要があります。
塩害に対する塗装の効果や必要な準備などについて解説します。
外壁塗装の効果
外壁塗装は外観を美しくするだけでなく、耐熱や紫外線防止、防水や防カビなどさまざまな効果があります。建物を守るのに、外壁塗装は効果的な方法です。
塗料には、耐塩性や耐久性に優れている製品もありますので、塩害対策として外壁塗装は効果的です。塩害の起こりやすい地域では、塩害対策としてあらかじめ外壁塗装を行うのもいいでしょう。
しかし、外壁塗装をするだけでなく、日々のメンテナンスも大切です。小まめに外壁を水で洗い流すだけでも、塩害対策になります。
塗装の前に外壁を洗浄
外壁塗装を行う前に、外壁を高圧洗浄などで汚れをきれいに洗い流してください。外壁に異物や塩分が付着したまま塗装をしても、効果を最大限に発揮できません。外壁の汚れは、塗装の剥がれや耐久性の低下につながります。
外壁の洗浄は自分で行うのではなく、技術のある業者に依頼しましょう。自分で洗浄を行っても、汚れが残ったり外壁を傷めてしまったりして、外壁塗装の効果を半減させてしまうおそれがあります。
塩害がひどい場合は補修が必要なことも
すでに塩害で大きな影響を受けているケースでは、外壁塗装だけでは塩害対策として不十分な場合があります。そういった場合は、建物の補修が必要です。その際は、塩害に強い素材を使用することで、建物の耐久性を高めることができます。
塩害に強い素材として、タイルや樹脂系サイディングがあります。これらの素材は耐久性が高いため、塩害を受けにくくなります。
ただし耐久性の高い素材は、扱える業者が少なく、工事費用も高額です。それでも塩害で何度も補修工事を行うことを考えれば、高額でも耐久性の高い素材を選択するのもいいでしょう。
塩害に強い塗料の選び方
塗料にはさまざまな効果の種類があります。塩害に強い塗料の選び方を解説します。
塩害に強い塗料
塩害に強い塗料には、「フッ素塗料」と「変性無機塗料」があります。どちらも耐久性が高く、塩害だけでなく紫外線などの影響も受けにくい塗料です。
- フッ素塗料
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一般的な塗料と比較すると高価。しかし耐久年数が15~20年程度とほかの塗料より比較的長い。雨などで自然に汚れが落ちる性質を持っている
- 変性無機塗料
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価格はフッ素塗料よりも高価だが、耐久年数が20~25年程度と長い。フッ素塗料と同様に、雨などで自然に汚れが落ちる性質を持つ
フッ素塗料と変性無機塗料は、ほかの塗料と比べると、あまりメンテナンスを必要としないのも特徴のひとつです。
長期的な視点で塗料を選ぶ
塗料を選ぶときは、費用だけでなく耐用年数も確認しましょう。外壁の塗装は長期的な建物の維持につながるため、費用に対して耐用年数がどれくらい長いのかも重要です。
特に塩害対策として塗装を行う場合、塗料を塗り直してもすぐに塗装が剥がれてしまうと、何度も塗り直すことになります。それでは結果として、工事費用が余計にかかってしまうおそれがあります。
例えば、120万円の外壁塗装工事であれば20年あたり2回で済むにもかかわらず、100万円の外壁塗装工事だと20年で3回必要になることもあります。その場合、
- 120万円×2回=240万円
-
120万円の工事を20年間で2回実施
- 100万円×3回=300万円
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100万円の工事を20年間で3回実施
と60万円も多く支払うことになります。少し価格が高くても、耐久性の高い塗料を選びましょう。
業者に外壁の状態をみてもらう
自宅に合う塗料を選ぶには、まず外壁業者に塩害状態の確認をお願いしましょう。塩害の状態によって、外壁塗装だけでよいのか、もしくは張り替えなどの大規模な補修が必要なのかがわかります。
依頼をするときは、複数の業者に相談するのがおすすめです。複数の業者に連絡するのは大変ですが、一括査定サイトであれば物件の特徴や連絡先などの情報を一度入力すれば、複数の業者に問い合わせることができます。自宅の外壁塗装にかかる費用の相場を把握するのにも役立ちますので、ぜひご利用ください。