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笠木の劣化症状やその原因は種類によって異なりますが、主なメンテナンスの方法は塗装です。本記事では笠木の役割やメンテナンス方法を詳しく解説しますので、適切な対応をしましょう。
笠木 とは
笠木とは、バルコニーやベランダの壁上部にある、手すりのように見える水平な部材です。
ここでは、笠木の役割や言葉の由来など、基本的な知識を理解しましょう。
笠木の役割
笠木は、壁上部から雨水が浸入するのを防ぎ、構造体の耐久性を維持する役割があります。
上の写真は、鉄筋コンクリート造のバルコニー手すり壁の上端に取り付けた笠木ですが、木造や鉄骨造でも同様の役割のために取り付けます。手すり壁とは、その名のとおり手すりの役割を果たしている壁のことです。
笠木は、バルコニー手すり壁だけでなく、屋上防水層の立ち上がり(パラペット)や階段の手すり壁などにも取り付けます。
つまり、壁などの最上部に付ける傘のような役割をするものを笠木と呼びます。
笠木の材質
笠木にはさまざまな材質のものがあり、以下のような素材が使用されます。
- 鋼板(亜鉛メッキ鋼板やガルバリウム鋼板)
- ステンレス鋼板
- アルミニウム合金
- セメントモルタル
- 石
- 木材
一般的には、アルミ製やステンレス製の部材が既製品としてあります。また、鋼板を使う笠木は、板金工事のなかで多く使われます。
古い建物ではモルタルの笠木を使うことも多く、部位によっては石や木材も笠木の材料として使用されます。
「笠木」という名の由来
古くは神社の鳥居の一番上にある、横に渡した木のことを笠木と呼んでいたようです。
「笠(傘)」のように鳥居を雨から守る役割として、最上端に取り付けられたものをそう呼んだのでしょう。笠木は建物などを雨から守る、重要な役割を担っているのです。
笠木の種類別!劣化症状と原因
笠木は雨や雪から建物を守る重要な役割を持っていますが、年月が経過すると劣化していきます。
どのような劣化が生じるのか、その原因について笠木の種類別に見てみましょう。
板金
亜鉛メッキ鋼板(トタン)やガルバリウム鋼板などを材質とする板金の笠木は、表面の劣化や塗装の剥がれ、そして板材の切り口部分のサビなどが鋼板の劣化を招いて腐食が進みます。
外部の笠木は必ず雨水にさらされるため、緩やかな勾配を付けて水が流れ落ちるようにします。しかし、板材の厚みは0.27~0.35ミリと薄いものなので凹みが生じやすく、雨が降ると長時間水がたまり、劣化しやすいのです。
そのため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
ステンレス・アルミ製
ステンレス鋼板やアルミニウム合金で作られた笠木は耐候性があり、笠木本体は非常に丈夫です。しかし、バルコニーや屋上パラペットなど、設置する場所が長い場合、部材の継ぎ目が必ず生じます。
継ぎ目はシーリング(コーキング)処理をすることが多いです。シーリング材といわれる
しかし、シーリング材は劣化して、継ぎ目にひび割れや剥離が生じます。ひび割れや剥離が起きると、その部分から雨水が浸入し壁本体を腐食させてしまいます。
笠木の耐久性能を過信せず、定期的な点検を欠かさず行いましょう。
セメントモルタル
築年数の古い建物では、バルコニーの壁手すりの上端に、モルタルで笠木を現場施工していたものがあります。
勾配を付けて雨水を流れ落ちやすくしていますが、経年によりひび割れが生じます。ひび割れると、モルタル笠木はコンクリート壁本体から剥離しやすくなり、割れが生じて落下するおそれがあります。高い位置のバルコニーなどでは、大変危険です。
モルタルの笠木は、外見上劣化が目立たないケースがあります。手で触るとガタツキや割れが生じ、初めて劣化に気づくことも多く、定期的な点検が欠かせません。
天然石
天然石の笠木は
劣化がしにくいので長期間メンテナンスを必要としませんが、壁上端に接着する施工方法のため、剥離が生じると落下するおそれがあります。特に、剥離は継ぎ目部分から生じるため、定期的な点検が必要です。
木材
木製の塀やフェンスなどに取り付ける笠木には、木材のものを採用することが多いです。本体同様に数年ごとのメンテナンスをしなければ、劣化や腐食が早く進んでしまいます。
笠木が腐食すると本体部分も腐食しやすく、放置すると全体を交換する必要があります。
また、木造の建物で鋼板製の笠木を使っている場合も、下地は木材を使っていることが多いです。笠木から雨水が浸入すると下地が腐食するため、メンテナンスが欠かせません。
笠木の塗装やメンテナンスの方法
笠木のメンテナンスを適切に行わないと劣化が加速し、建物の構造部分に雨水が浸入して耐久性を低下させます。
屋根や外壁と比較すると笠木の面積は小さく、軽視してしまうかもしれません。しかし、継ぎ目部分のほんのわずかなすき間やひび割れから、雨水が浸入するおそれがあります。
表面塗装が剥がれてサビが生じたまま放置すると、鋼板製の笠木は腐食し、やがて笠木の役割を失ってしまいます。
ここでは、笠木の塗装を含めたメンテナンス方法と、注意してほしいポイントを紹介します。
笠木の塗装
鋼板製と木製の笠木は、塗装がメンテナンスの主な方法です。鋼板製は約10年のサイクルで、木材は3~5年のサイクルで塗装を繰り返すのが望ましいです。
塗料は、鋼板の場合は鋼板用の塗料を使い、木材の場合は防腐効果のある塗料を使用することが多く、外壁の塗料や鋼板以外の屋根塗料とは異なります。
ただし、外壁を木製の下見板張りにする場合は、同じ塗料を使うことが多いです。下見板張りとは、板を階段状になるように重ねて外壁に付ける方法です。
塗装費用は、施工会社に依頼した場合、1メートルあたり1,000円前後が目安です。単価の設定は一般的に「メートルあたり」で、面積ではなく長さになることに注意しましょう。
塗装以外のメンテナンス
塗装以外のメンテナンスとしては、主に以下の2つの方法があります。
- 劣化したシーリングの交換
- 笠木の交換
笠木の継ぎ目に埋めたシーリング材は、必ず古いシーリング材を取り除き、新たに打ち替えます。費用は、1メートルあたり約1,500円が目安です。
また、シーリングで注意するべき点が、笠木の下側です。笠木は壁にかぶさるよう取り付けられていますが、笠木の下側は壁と接しており、必ずすき間があります。
このすき間は、万が一笠木の裏側に雨水が浸入したとき、雨水を外側に逃がす役割があります。そのため、笠木の下側と壁とのすき間をシーリング材で埋めてしまうのはよくありません。
笠木の裏側は、常に外気が入って乾燥した状態を保つことが大切です。
アルミ製やステンレス製の笠木は耐候性が高いですが、まったくサビなどが発生しないわけではありません。表面に劣化が起きた場合、塗装はできますが、下地処理を完璧に行わないと塗料が剥がれてしまいます。
アルミ製やステンレス製の笠木の塗装は必要があればという程度にし、シーリングのメンテナンスを重視しましょう。劣化が激しくなった場合は、交換も選択肢になるでしょう。
外壁や屋根と同時にメンテナンスをする
笠木は手で触れる位置にあることが多いため、塗装やメンテナンスの際は、外壁や屋根の塗装のように足場を設置する必要がないケースがあります。しかし、笠木の外面は足場がないと完璧な作業ができない可能性があります。
そのため、外壁や屋根の塗装をする工事で、足場をかけたときに同時に行うのがベターです。笠木の劣化が始まるのはほとんどの場合上面なので、気になる劣化現象が起きたら応急的なメンテナンスを行い、外部塗装のときに本格的なメンテナンスを行うといった考え方もあります。
メンテナンスのほとんどは塗装の施工会社に依頼しますが、施工会社によって技術や対応に差があります。
信頼できる施工会社を探すには、一括見積もり比較サイトの「ぬりマッチ」を活用しましょう。複数の施工会社に出してもらった見積もりや施工能力などを比較検討して、依頼先を選ぶことが重要です。
笠木の塗装に関するよくある質問
- 笠木の塗装が必要な劣化症状は?
- 種類によって異なりますが、表面の劣化や塗装の剥がれ、そして板材の切り口部分のサビなどが劣化を招いて腐食が進みます。また、ひび割れや剥離が起きると、その部分から雨水が浸入し壁本体を腐食させてしまいます。鋼板製は約10年のサイクルで、木材は3~5年のサイクルで塗装を繰り返すのが望ましいです。
- 笠木の塗装費用はどれくらいかかる?
- 施工会社に依頼した場合、1メートルあたり1,000円前後が目安です。単価の設定は一般的に「メートルあたり」で、面積ではなく長さになることに注意しましょう。