外壁は雨風にさらされ、日々劣化が進みます。そのため、定期的なメンテナンスが必要です。また、生活スタイルの変化を理由に、新しい家に生まれ変わらせるためのリフォームを検討する方もいるでしょう。
外壁のリフォームには、「外壁塗装」「カバー工法」「張り替え」の3種類あります。それぞれの特徴やメリット、デメリットについて解説します。
外壁塗装
外壁塗装とは、外壁に塗料を何層にも重ねて塗布するリフォーム方法です。色を変えたり見た目を美しくしたりするだけではなく、耐熱機能や防水機能などの機能も向上します。
外壁塗装は、洗浄や下地処理など、10工程ほどを経て完成します。そのため、専門の業者に頼んだほうが耐久性も高く、満足のいく仕上がりになるでしょう。
外壁の塗装は、塗料の種類や環境によっても変わりますが、約10年を経過すると劣化が始まるといわれています。そのため、約10年に一度の定期的なメンテナンスがおすすめされています。
外壁塗装の種類やメリット・デメリットを紹介します。
塗料の種類
塗料によって耐用年数や費用が異なります。主な種類について下の表で比較します。
塗料の種類 | 耐用年数(年) | 費用相場(円/㎡) |
---|---|---|
アクリル塗料 | 約5~7 | 1,400~1,600 |
ウレタン塗料 | 約8~10 | 1,700~2,200 |
シリコン塗料 | 約10~15 | 2,300~3,000 |
ラジカル塗料 | 約10~15 | 2,500~4,000 |
ピュアアクリル塗料 | 約12~15 | 3,500~4,500 |
フッ素塗料 | 約15~20 | 3,800~4,800 |
無機塗料 | 約20~25 | 4,500~5,500 |
光触媒塗料 | 約15~20 | 4,200~5,000 |
遮熱塗料 | 約15~20 | 5,000~5,500 |
また、それぞれの塗料には「溶剤塗料」と「水性塗料」があり、使用する外壁材によって向き不向きがあります。
塗料はさまざまなメーカーが開発しているため、数えきれないほどあります。そのため専門の業者に相談して、どの塗料を選ぶか決めるとよいでしょう。
外壁塗装のメリットとデメリット
外壁塗装のメリットとデメリットを確認しましょう。
外壁塗装のメリット
外壁塗装のメリットは、以下のとおりです。
- カバー工法や張り替えと比較して、費用を抑えられる
- カバー工法や張り替えと比較して、工期が短い
- 防水性や耐熱性を向上できる
外壁塗装は、カバー工法や張り替えと比較して、費用や工期を抑えることができます。
また外壁塗装は外観を変えるだけと思われがちですが、定期的に行うことで防水性や耐熱性など、建物の機能を保てます。使用する塗料によっては、長い耐用年数も期待できます。
張り替えなどの前に、まずは外壁塗装による建物のメンテナンスを検討することがおすすめです。
外壁塗装のデメリット
外壁塗装のデメリットとしては、外壁の劣化が進んでいる場合、塗装だけでは修復が不可能な場合があることです。 そのため、定期的に外壁に異常がないかを確認しておきましょう。
外壁のカバー工法
カバー工法とは、もともとの外壁材をそのままに、上から外壁材をかぶせるリフォーム方法です。外壁塗装だけでは補修できないような劣化やひび割れは、カバー工法や張り替えで対処できます。
カバー工法の種類
カバー工法の種類は、一般的に、外壁材に利用する素材で変わります。
カバー工法に使う外壁材は以下の3種類があります。
- 窯業系サイディング
- 金属系サイディング
- 樹脂系サイディング
サイディングとは、外壁に貼る板状の外壁材のことです。
窯業系サイディング
窯業系サイディングとは、セメントに繊維質を混ぜ、板状に加工したものです。 日本の住宅はほとんどが、このサイディングを利用しています。
人気の理由としては、加工がしやすく、さまざまなデザインがあるためです。たとえば、タイルやレンガ調、木目調など選の択肢が多いため、自分のイメージどおりのものが手に入ります。
また、金属系や樹脂系と比較して費用を安く抑えることができます。
ただ、その分耐久性が低いため、定期的なメンテナンスが必要です。
金属系サイディング
金属系サイディングとは、金属を成形して作られた外壁材です。
ひび割れが起こりにくく、高い耐久性があります。さらに、軽量なため、地震の際に揺れが少なくなるメリットがあります。
樹脂サイディング
樹脂サイディングとは、プラスチックを利用した外壁材です。
耐久期間が20年ほどあり、他の外壁材と比較してあまりメンテナンスの必要がありません。その分価格も高いため、ご自身の予算にあわせて選択しましょう。
また、他の外壁材と比較して、色やデザインの選択肢があまりありません。そのため、デザインにこだわりがある方は、希望通りのものが手に入らないおそれがあります。
カバー工法のメリットとデメリット
カバー工法のメリットとデメリットを確認しましょう。
カバー工法のメリット
カバー工法のメリットは、以下のとおりです。
- 張り替えよりも工事期間が短い
- 耐熱性や防音性などの向上
- 張り替えよりも費用を抑えることができる
もともとの外壁を剥がしたり、処分したりする手間がないため、工事が短期間で完了します。
また、外壁材を重ねるため、壁の厚みが増します。そのため、他の外壁リフォームの方法に比べて、高い耐熱性と遮音性が得られます。
外壁を剝がし処分する際には、余分に費用が発生しますが、カバー工法にはその工程がないため、張り替えよりも費用を抑えられるのが特徴です。
外壁塗装ではカバーできないくらい劣化しているが、予算を抑えたい方はカバー工法をおすすめします。
カバー工法のデメリット
内部結露が発生するおそれがあります。既存の外壁と重ねた外壁の間にできる空間と、外壁に温度差があると内部で結露が起こります。
しっかりと対処をしてくれる業者を見極める必要があります。
また、外壁材を重ねて貼るため、建物全体の重さが増えます。 建物の重量があるほど、地震の際に揺れやすい傾向があります。
また、一部分のみ張り替えで対処する場合、もともとある外壁材と同じ外壁材が手に入れられないかもしれません。そうすると、似た外壁材を貼っても、外壁のつなぎ目が目立ってしまうおそれがあります。
外壁の張り替え
外壁の張り替えは、もともとの外壁材を全て取り外し、新しく外壁材を貼るリフォーム方法です。
劣化が進んでおり、外壁塗装やカバー工法では改善できない場合は張り替えがおすすめです。
張り替えの種類
張り替えの種類は、カバー工法と同様に、外壁材の種類によって分類できます。
また、「サイディングからサイディングに張り替え」か「モルタルからサイディングに張り替え」かの2つの場合があります。
モルタルの外壁は、コンクリートと砂を配合したものを壁に直接塗っています。そのため、板状の外壁材を貼るサイディングとは異なり、つなぎ目がありません。
以前はモルタル外壁が主流でしたが、現在ではサイディング外壁が主流です。デザイン性の高さから、モルタル外壁からサイディングの外壁に張り替えるケースが多くあります。
まずは、自分の家が現在どういった外壁なのかを確認することから始めましょう。
張り替えのメリットとデメリット
張り替えのメリットとデメリットを確認しましょう。
張り替えのメリット
外壁張り替えの最大のメリットは、塗装やカバー工法でも修復できないような劣化にも対応できるところです。また、古い壁材を取り除いて新しくするため、カバー工法と比較しても耐久性が高く、長く住むことができます。
さらに、張り替えの場合はカバー工法と違い、建物全体の重さがあまり変わりません。そのため、地震の際に建物の揺れが大きくなる心配がありません。
張り替えのデメリット
塗装やカバー工法と比較して、費用が高額です。元の外壁を取り外す工程と、処分する費用がかかるためです。
張り替え工事が必要になるまえに、外壁塗装などでこまめなメンテンナスをしておくことが大切です。
外壁のリフォーム費用の相場
外壁のリフォーム費用の相場やその内訳を紹介します。
30坪の戸建て住宅の場合
一般的な30坪の戸建て住宅の場合、外壁のリフォーム費用の相場は以下のとおりです。
リフォームの種類 | 費用相場(円) |
---|---|
外壁塗装 | 80万~140万 |
カバー工法 | 140万~200万 |
張り替え | 180万~280万 |
張り替え、カバー工法、外壁塗装の順に費用が高いのがわかります。
ただし、スレート屋根の家で外壁塗装を行う場合、足場兼用のメリットを考えて同時に屋根も塗装するのが一般的です。外壁と屋根を同時に塗装する場合の費用相場は、110万〜170万円です。
項目別の費用相場
外壁のリフォーム費用は、下記で構成されます。
項目 | 費用の目安 | |
---|---|---|
仮設工事費 | 1m²あたり850~1,400円 | |
養生費 | 4万~8万円 | |
塗装費(外壁塗装の場合) | 1㎡あたり1,500~5,000円 | |
付帯部塗装費(外壁塗装の場合) | 総費用の10~20% | |
サイディング施工費(カバー工法、張り替えの場合) | カバー工法 | 1㎡あたり9,000〜1万3,500円 |
張り替え | 1㎡あたり1万100〜1万5,240円 | |
シーリング工事費 | 1mあたり700〜1,200円 | |
諸経費 | 総費用の10% |
ただし、工事業者によりどの項目にどこまで含むかの前提条件が異なるうえ、個別の建物や敷地条件で工事費用は変わります。あくまで一般的な目安としてください。
仮設工事費
労働安全衛生規則により2m以上の高い場所で作業をするには、安全対策が義務づけられています。
また、きれいな仕上がりにするには、施工を行う職人が落ち着いて安全に作業できる環境が必要です。
安全や品質の両方を考慮して、建物全周に足場を組みます。また、近隣への飛散防止や材料・工具の落下防止のためにメッシュシートで足場全体を覆います。
費用相場は、メッシュシートも含めて1m²あたり約850〜1,400円です。
養生費
外壁塗装では、アルミサッシや玄関ドアなど、塗装できない材質の部位はビニールを貼って塗料が付かないように養生します。また、カバー工法や張り替えの場合も必要に応じて実施します。
費用相場は、約4万〜8万円です。
塗装費(外壁塗装の場合)
外壁に塗装する塗料は、前述したとおりウレタンやシリコン、ラジカル、フッ素などの種類があり、順に費用が高くなります。
塗料の種類 | 費用の目安(円/㎡) |
---|---|
ウレタン | 1,500~2,000 |
シリコン | 1,800~2,500 |
ラジカル | 2,000~3,000 |
フッ素 | 4,000~5,000 |
付帯部塗装費(外壁塗装の場合)
雨樋や玄関ドア枠、シャッターボックスなどの建物に付帯する部分を塗装する費用です。
総費用の約10〜20%が目安です。
サイディング施工費(カバー工法、張り替えの場合)
サイディングをカバー工法で重ねて貼る際の費用相場は、1㎡あたり約9,000〜1万3,500円です。
張り替えの場合は、1㎡あたり約1万100〜1万5,240円が目安です。既存サイディングの撤去と処分が必要なためカバー工法よりも費用相場が上がります。
費用には、以下などの付随する工事の費用も含まれています。
- 重ね張りのために下地を組む費用
- 内部への雨水浸入を防止する防水シート
- 内部に浸入した雨水を外部へ導く土台水切り設置
シーリング工事費
外壁継ぎ目のシーリングも経年で傷んでいる場合は、隙間から雨水が内部に入らないように打ち替えをします。
費用相場は1mあたり約700〜1,200円です。
諸経費
諸経費は、以下の2つで構成されます。
- 工事現場を運営するための現場管理費
- 施工会社を運営するための一般管理費
各工事明細の項目とは別に、総費用の約10%を計上することが多いです。 現場管理費としては、たとえば現場監督の人件費、安全確保のため手配するガードマンの費用、足場組みのために警察署へ道路使用許可を届ける費用などが該当します。
一般管理費としては、施工会社従業員の給与や賞与、事務所の家賃、広告宣伝費などが該当します。
外壁のリフォーム費用に関する注意点
外壁のリフォーム費用を検討するときは、ライフサイクルコストを考慮する必要があります。また、金額を左右する要因についても理解しておくとよいでしょう。
ライフサイクルコストで考える
ライフサイクルコストとは、生涯にかかるトータル費用のことです。
ライフサイクルコストが増えてしまった事例を4つ挙げます。
事例 | 結果 |
---|---|
費用を抑えるために耐用年数が短い塗料を選んだ | リフォーム周期が短かくなり、足場を組んで工事をする回数が増えてしまった |
外壁と屋根のリフォーム周期がそろわない方法を選んだ | 次回以降は時期をずらして実施する必要があるため、足場を組んで工事をする回数が増えてしまった |
劣化状況を見て傷みが進行している面から順に数年に分けて工事をした | 効率的に作業を進められず、1回あたりの塗装や足場に関わる諸費用が割高になってしまった |
塗料の耐用年数は過ぎているが全面改修は数年先送り。いったん緊急性がある箇所のみ部分的に足場を組みシール補修と周辺のタッチアップ塗装をした | 部分補修にかけた費用分がライフサイクルコストとして増えた |
外壁のリフォームにかける費用は誰しも抑えたいと考えるでしょう。しかし、リフォームを一時的に先送りしたり、一部のみで行ったりしても、結局あとで大きな負担がかかるケースもあります。
また、建物だけでなく家族の状況も考慮しましょう。ポイントは夫婦の年齢、子どもの年齢やあとを継ぐ可能性があるかなどです。
たとえば、以下のような考え方でリフォームを実施した事例があります。
- あと〇年この家で生活する予定なので、〇年長持ちする塗料を塗っておけば安心だ
- 〇年長持ちする塗料を塗っておけば、次回は〇年後が修繕サイクル。そのころには子どもも独立して家計に余裕ができているので、無理をせずに家を維持できそうだ
高くても耐用年数が長い塗料や外壁材を選んだほうが、ライフサイクルを抑えられるケースもあります。
予算を超える部分はローンを利用するのも選択肢のひとつです。分割手数料の合計額を加味してもライフサイクルコストを抑えられるのなら、検討の余地があるでしょう。
将来後悔しないように、トータルで最適な方法を選択しましょう。
費用は状況によって変動する可能性がある
前述した費用相場は、あくまでおおよその目安です。外壁のリフォームでは、家ごとに条件が異なるため、費用が大きく変わる可能性があります。
費用を左右する主な要因は、以下の2点です。
- もともとある外壁の状態
- 敷地状況
もともとある外壁の状態
外壁塗装をしようとしても、既存の外壁が痛んでいるとそのまま塗装できません。どんなによい塗料でも、痛んでしまっている外壁の上に塗ってはすぐに剥がれてしまうおそれがあるためです。
本来の性能を発揮するためには、以下のようなさまざまな対応が必要になります。
- 痛み具合に応じて下塗りの回数を増やす
- 部分的にサイディングを張り替える
- 既存塗膜を溶剤で剥離する
このような特殊な処理が必要な場合、追加費用が発生します。ケースによっては、無理に外壁塗装を実施するのではなく、カバー工法や張り替えを選んだほうがよいかもしれません。
敷地の状況
たとえば、敷地の前面までトラックが入れないことがあります。離れたところにトラックを停めて足場の部材を運ぶ場合、人員を増やす必要があるため、費用が高くなる傾向にあります。
また狭小地の場合は、どの作業をするにも効率が悪く、作業時間が長くかかってしまいます。こういった場合は追加費用が発生します。
外壁の状況に合ったリフォーム方法を選ぼう
外壁のリフォームには、それぞれの建物の状態や目的に合った方法があります。しかし、なかなかご自身で判断がつかない場合もあるでしょう。
そのため、複数の業者に相談し、費用も含めて比較することをおすすめします。
外壁のリフォームは、リフォーム会社だけでなく工務店やハウスメーカーなどさまざまな会社が対応しますので、種類や価格帯が多岐にわたります。
最近では、一括査定サイトのような、複数の業者に一度で問い合わせることができるサイトがあります。建物の簡単な情報などを入力するだけで利用できるため、おすすめです。
外壁のリフォーム工事に関するよくある質問
- 外壁のリフォーム工事にはどんな種類がある?
- 外壁塗装・カバー工法・張り替えの3種類です。外壁の傷んでいる状況で最適な補修工事は異なります。
- どのくらいの周期で外壁のメンテナンスを行えばよい?
- 10年前後で外壁塗装を行いましょう。外壁材の補修も20年前後で必要です。耐用年数をキチンと確認して、快適できれいな状態で自宅を保つために、定期的なメンテナンスは怠らないようにしましょう。