令和3年、一般社団法人日本窯業外装材協会の「戸建住宅市場における外壁材素材別シェア」では窯業系サイディングが80.4%、アルミサイディングが6.7%、金属サイディングが3.8%とサイディング材が全体の9割超を占めていることが分かりました。
今回はこのサイディング外壁における塗り替えの必要性と、塗り替えの種類・方法についてわかりやすく解説します。
サイディング外壁とは?
サイディングとは、建物の外壁に使用する建築資材のひとつです。一般的にはセメント製のものや、金属製の外壁ボードを指します。
あらかじめ成形され、均等なサイズに仕上がったサイディングボードを、建物にあわせて現場で加工し、下地材に張り付けて施工された外壁をサイディング外壁といいます。
外壁の施工方法には「湿式」と「乾式」があります。漆喰塗りやモルタル塗り、タイル張りで仕上げた外壁は「湿式」で、サイディングは「乾式」にあたります。
軽量かつ耐久性も高く、工事価格が比較的安価に抑えられます。国内の住宅では最も普及している外壁材です。
サイディング外壁の種類
一般的なサイディングは、大きく分けて4種類の材質があります。それぞれの主な特徴を下記表で紹介します。
メリット | デメリット | |
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窯業系サイディング |
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金属系サイディング |
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木質系サイディング |
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樹脂系サイディング |
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窯業系サイディング
サイディングの中でも80%前後のシェアを誇ります。内容成分はセメント80%、繊維質20%で構成されており、高温で加工されているため、高い剛性があります。メンテナンスや施工が容易なため、ポピュラーな存在です。
金属系サイディング
窯業系サイディングと比較すると、重量は約1/3と軽量です。表面材にはガルバリウム鋼やアルミニウム合金、ステンレス鋼などが使われます。
木質系サイディング
エイジングやデザイン性に優れ、外観を重視する建物にはピッタリの素材です。
樹脂系サイディング
日本国内ではあまりなじみがありません。寒冷地や寒暖差の激しい地域で多く使用されています。
サイディング外壁への塗装の必要性
吸水性のあるサイディング素材の場合は、撥水性のある塗膜が剥がれてしまうと、そのまま吸水が進行して劣化します。
金属系サイディングにおいても、塗膜が剥がれると、サビが発生してしまいます。
一般的にサイディングの塗装時期は、10年が目安です。
使用される塗料はシリコン系のものが多く、全体の70%を占めています。
新築してから10年、または前回のメンテナンスから10年経過している場合は、防水効果が低下しているおそれが高いため、再塗装を検討する必要があります。
サイディング外壁の塗装種類
サイディングの劣化症状に応じて塗装方法が存在します。劣化した外壁の状態に合わない塗装方法をしてしまうと、わずか数年で再塗装が必要になりかねません。
塗りつぶし塗装
テクスチャ(材質感覚)を重要視したサイディングでは、劣化症状が進むことにより見栄えの悪さが際立つ場合があります。
このような場合は、塗りつぶし塗装がおすすめです。
塗りつぶし塗装とは、サイディングを単色で塗り替える塗装方法です。
例えばレンガ調のサイディングは、凹凸部分のリアルさを強調するために、塗装する色数が多く使用されてます。単色で塗りつぶす場合はこういった質感は失われてしまいますが、イメージを一新したい場合は効果的です。
クリア塗装
クリア塗装とは、顔料を含まない無色透明の塗料を使用して塗装する方法を指します。
外壁のデザイン性や風合いを崩さず、テクスチャ(材質感覚)の特性をそのまま活かせます。
そのため、レンガ調やタイル調、石目調などのサイディングに適しています。
劣化が少ないサイディングには向いていますが、チョーキングが発生している場合は劣化がそのまま残るおそれがあります。塗装前にしっかりとした下地処理が必要なケースもあるので、施工業者に相談するとよいでしょう。
コーティングされたサイディング外壁の場合
サイディングの表面が光触媒やフッ素塗料などでコーティングされているものは、クリア塗装がうまく乗らず、塗膜が剥がれやすくなってしまいます。
近年では、そのような特殊コーティングに対応した下地処理方法や下地材もあるので、塗装業者によく相談し検討しましょう。
サイディング外壁の塗装はDIYで出来るか?
近年、自身でリフォームや改修をするDIY(Do It Yourself)の人気が高まっています。サイディング外壁の塗装をDIYで施工することは可能なのかどうか解説します。
サイディング外壁の塗装手順
サイディング塗装は、
- 洗浄
- 養生
- 下地処理
- 下塗り
- 上塗り2回(中塗り・上塗り)
が基本的な手順です。
洗浄
まずは、外壁に付着したゴミや汚れを念入りに洗浄します。この作業を怠ると、下地材がうまく乗らず、塗装が剥離する原因です。
養生
塗装しない箇所を養生テープやマスキングテープで覆います。細かな部分も見落とさないよう丁寧に行います。
下地処理
コーキングが剥がれていたり、劣化したりして機能していない場合は、古いものを取り除き、新しく充填します。下地に傷みがある場合は補修作業をします。
下塗り
上塗り塗料がよく密着するように、念入りに下塗りを行います。下塗りには、サイディングが塗料を吸収することを防ぐ効果もあります。ムラなく行い、剥離を防ぐように丁寧に塗布します。
上塗り
中塗りと上塗りには同じ塗料を用いるケースがほとんどです。1回の塗装では耐久性が低いため、複数回塗布することにより塗装の厚みを増し、耐久性を高めます。
また、見た目をきれいに仕上げるためにも2回以上塗ることが推奨されています。
このように複雑な手順と多数の工程を経て、サイディング外壁の塗装がされています。
サイディング塗装をDIYするのはお勧めできない
DIYでサイディング外壁の塗装をすすめる記事は多く存在します。しかし、注意点をしっかり把握しておくことが大切です。
大規模な塗装作業を自身で施工できる方は、塗装業の経験者や、高価な道具を借りられる環境にある方でしょう。
また、低い出来栄えでも構わないという場合もDIYに向いているかもしれません。
ですが、ほとんどの場合、ゼロから道具を買い揃え、はしごなどでの高所作業を長時間行なうことは、危険性や出来栄えを考慮すると、リスクが高いといえるでしょう。
塗料の性能を引き出せずに、数年での塗り替えが必要になったり、外壁の劣化を早めてしまったりするおそれもあります。 結局、業者に依頼するよりも費用がかかってしまう、といったケースも増えます。
サイディング塗装の塗り替えは業者に依頼
危険性の側面から見ても、DIYでのサイディング塗装は、高所作業を伴わないごく小規模な範囲だけ行なうのがよいでしょう。 確かに自身で塗装することにより、予算を抑えることも可能ですが、専門的な知識、技術、道具が必要になるため、業者に依頼する方が無難です。
外壁塗装はペンキを塗るだけの簡単そうな作業に思えますが、細部に渡る養生作業や、高所作業を安全に行う足場の設置、劣化症状を見極めて適切な措置を施す技術や、きれいに仕上げる経験など多方面にわたる能力が必要です。 DIYで施工することにより、本来の目的である住宅の保護や、美観を保つといった効果を得られないといったケースも考えられます。
特に外壁塗装には高所作業がつきものです。しっかりとした足場を設置せず、二段はしごや脚立を伸ばして作業されるのは危険でおすすめできません。
作業の手間だけでなく、安全性や最終的なコストのことを考えると、専門業者へ依頼するのが確実です。
サイディングの塗装に関するよくある質問
- サイディングに塗装は必要?
- 雨水や汚れから保護するために必要です。塗装が劣化すると、サイディングに水が吸収され、腐食の原因となります。
- 塗装の塗り替えはどのくらいの周期で行う?
- 10年周期で行いましょう。サイディングは、耐久性が低い外壁材であるため、定期的なメンテナンスを欠かせません。