外壁にALCを使用している建物でも塗装は必要です。ALCは優秀な建材で50年保つとされていますが、定期的な塗装改修のような適正なメンテナンスがあってこそ、その能力を発揮します。
この記事では、ALC外壁における塗装の必要性やおすすめの塗料、塗装費用について解説していきます。ALC外壁の住宅にお住まいの方は、ぜひ参考にしてみてください。
ALC外壁の塗装は必要?
ALC自体には止水性がなくALCを外壁に使用する場合、塗装は必要不可欠です。
ここでは、ALC外壁における塗装の耐用年数や塗装改修のタイミングについて解説します。
外壁に使用されているALCとは
ALCとは「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略で、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートという意味です。
ALCは耐火性、耐久性、断熱性に優れた建材であり、重量もコンクリートの約4分の1で地震に強い材料です。
コンクリート外壁に関しては、密実なコンクリートを作ることによりコンクリート自体が止水性をもちます。
一方、ALC外壁は気泡があるため、止水性がなく、どちらかというスポンジのようになっており吸水性があるのが特徴です。
またALCの内部には鉄筋が施されており、ALC外壁の塗装を怠るとALCが雨水を吸水し、内部の鉄筋にサビが生じてしまいます。サビはALCの損傷につながりますので、塗装による止水が重要です。
ALC外壁塗装の耐用年数
ALC外壁塗装の耐用年数は、塗料の種類によって異なります。
ALC外壁の塗装に用いられれる塗料は、主にアクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系の4つで、アクリル系塗料が最も耐用年数が短く安価で、フッ素系塗料が最も耐用年数が長く高価です。
それぞれの耐用年数は以下のとおりです。
塗料 | 耐用年数(年) |
---|---|
アクリル系塗料 | 4~7 |
ウレタン系塗料 | 6~10 |
シリコン系塗料 | 8~15 |
フッ素系塗料 | 15~20 |
かつてALC外壁の塗装は、ウレタン系塗料が一般的でしたが、最近では耐用年数も長くコストパフォーマンスの高いシリコン系塗料が人気です。
塗料選定には、予算との兼ね合いが必要不可欠です。自分のライフプランに合った塗料選定をしましょう。
ALC外壁が劣化しているサイン
ALC外壁が劣化しているサインには、主にチョーキングや塗膜の膨れ、クラックが挙げられます。
それぞれの特徴を解説します。
チョーキング
チョーキングとは、塗料が劣化により粉化した状態です。ALC外壁面を手で触ってみて、粉化した塗料が手に付着するようならチョーキングが発生しています。チョーキングが発生していると、色は残っていても塗料本来の止水性がなくなっているので、塗装が必要です。
塗膜の膨れ
塗膜の膨れがある場合、塗膜が損傷している箇所から雨水が浸入し、塗膜の膨れを招いているおそれがあります。初めのうちは問題ありませんが、長く放置すると膨れが大きくなり、外壁面に悪影響を及ぼします。
クラック
クラックとは、外壁面がひび割れている状態です。ALC外壁はロッキング工法といって地震などの揺れを吸収する構造となっていますが、激しい揺れが生じた場合、ALC外壁面にひび割れが生じることもあります。
ひび割れが生じた場合、塗膜も一緒に破断し雨水が浸入するので、ひび割れ部をコーキングするといった対策が必要です。
ALC塗装はどのようにする?
ALC塗装には、専用の塗料が必要です。一般的な戸建住宅の80~90%は外壁に窯業系サイディングを使用しており、ALC外壁は少数派です。
そのため、ALC塗装のノウハウを持っている事業者は多くありません。
ALC塗装の種類
ALC塗装には、単色塗装と多彩模様塗装があります。ALCはデザインパネルがあるとはいえ、デザイン性豊かな窯業系サイディングと比較すると、シンプルになりがちです。
シンプルな面に単色塗装をすると少し単調になりすぎてしまうので、多彩模様塗装がおすすめです。多彩模様塗装にすると重厚感が出て、高級感漂う雰囲気を出せます。
おすすめの塗料
ALC塗装におすすめの塗料を3つ紹介します。
エスケー化研 エスケープレミアムシリコン
緻密かつ強靭な塗膜を形成することにより超耐久性、超耐候性を示すとともに、耐水性、耐アルカリ性、耐薬品性にも優れた塗料です。
ラジカルコントロール技術を採用しており、塗膜内に発生するラジカル(塗膜の劣化原因物質)を抑え、わずかに発生したラジカルもラジカルキャッチャーが捕捉します。
関西ペイント アレスダイナミックTOP
シリコン系塗料でありながら、上位仕様のフッ素に迫る高耐久性、高耐候性を持った塗料です。
エスケープレミアムシリコンと同様に、ラジカルの発生と活動を抑えるラジカルバリヤコートやHALSラジカルキャッチャーという技術を採用しており、樹脂性能を最大限に引き出しています。
菊水化学工業 キクスイロイヤルシリコン
菊水化学工業独自のトリプルブロックシステムにより抜群の耐候性を実現します。
表面浸水技術により、外壁に汚れが付着しても雨水で流され、菊水化学工業のマイクロレベリング技術により自動車塗料並みの光沢が出ます。
作業工程
ALC塗装の作業は、以下の順序で行われます。
- 高圧洗浄
- 下地補修
- 下塗り
- 上塗り
高圧洗浄
ALC外壁の表面に付着している汚れやチョーキングなどの脆弱な塗膜を高圧洗浄により除去します。
脆弱な塗膜の上から塗装をしても塗膜の剥がれを引き起こすおそれがあります。また、ALCは非常に吸水性の高い素材であるため、高圧洗浄後はしっかりと乾燥させる必要があります。
下地補修
高圧洗浄やケレンによって脆弱部の除去ができたら下地補修を行います。
下地補修にはコーキング工事やひび割れ部、欠損部の補修などがあり、塗装をしてしまうと後戻りができない作業です。きちんと調査をしてから、下地補修を行いましょう。
下塗り
まずは既存塗膜の上に下塗りをします。
下塗りには微弾性フィラーやカチオン系シーラーなどを使用し、1〜2回ローラーで塗布します。
下塗りには外壁ALC表面の強化や目止めの役割があり、上塗りの仕上がりを左右する重要な作業です。下地を平滑にすることで上塗り材が塗りやすくなります。
上塗り
上塗りは、ローラーや刷毛を使用して、2〜3回に分け塗料を塗っていきます。コーナー部分は塗装しにくく塗料が乗りにくい傾向があるので、あらかじめ増し塗りをしておくことをおすすめします。
ALC外壁の塗装はいくらかかる?
ALC外壁の塗装費用は、使う塗料や建物の形状によって異なります。
今回は2階建約30坪の住宅を想定し、解説します。
ALC外壁塗装の費用相場
塗料 | 費用相場(円) |
---|---|
ウレタン系塗料 | 80〜120万 |
シリコン系塗料 | 100〜140万 |
フッ素系塗料 | 120〜170万 |
コーキングや足場の費用も考慮した費用です。
ウレタン系塗料とフッ素系塗料では1.5倍程度費用が異なりますが、耐用年数はフッ素系塗料のほうがウレタン系塗料に比べ約2倍長いです。
ALCは耐用年数の長い建材のため、それに合わせて耐用年数の長いシリコン系塗料やフッ素系塗料を使用することが一般的です。
ALC外壁の塗装はDIYでできる?
ALC外壁の塗装はDIYでも可能ですが、非常に難易度が高いといえるでしょう。
ALCに対する専門的な知識や塗装技術が必要なうえ、2階建て以上の建物になると高所作業で危険を伴う作業も発生します。
そのため、基本的にはALC外壁の塗装は事業者に依頼することをおすすめします。
自分で塗装する際の注意点
それでも自分で塗装をしたいという方は、まずはALCについて勉強しましょう。
どのような塗料が合っているのか、どのような補修が必要かなど、必要な知識がないまま塗装をすると、取り返しのつかないミスをするおそれもあります。
ALC外壁の塗装ができる事業者は多くありませんが、複数の事業者を比較することで、よい事業者を見極められるでしょう。