新築時にスレート屋根を選んだものの、寿命がどれくらいかを知らない方もいるのではないでしょうか。
屋根は、雨風や災害から建物を守ってくれる重要なものです。屋根が劣化して寿命がくると、見た目が悪くなるだけでなく、雨漏りが発生して日常生活に支障が出ることもあります。
そのため、自宅のスレート屋根の寿命を把握して、寿命を延ばすための工夫をすることが大切です。
本記事は、ほかの屋根材と比較しながら、スレート屋根の寿命について解説します。また、スレート屋根の寿命がきてしまったときの対処法や、寿命を延ばす具体的な方法も紹介します。
スレート屋根の寿命
スレート屋根は、粘板岩を薄い板状にした屋根材を使った屋根のことです。
スレート屋根の寿命は約25年が目安です。その根拠や判断するための要素を解説します。
スレート屋根の寿命は約25年が目安
国土技術政策総合研究所が発表した「共同研究成果報告書 木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様と その評価に関する研究」の第Ⅲ章によると、スレート屋根は約15〜25年で屋根材を交換している家が多いという調査結果でした。
15年と聞くと「スレート屋根は耐久性がないのでは」と感じる方もいるでしょうが、実際はそうではありません。
以下は、各種屋根材の耐用年数をまとめた一覧表です。
屋根材の種類 | 耐用年数 |
---|---|
スレート屋根 | 30年 |
ガルバリウム鋼板※1屋根 | 30年 |
アスファルトシングル※2 | 30年 |
和瓦、洋瓦 | 60年 |
- ※1 ガルバリウム鋼板
- サビにくい特徴がある金属の屋根材
- ※2 アスファルトシングル
- アスファルトをガラス基材に配合して表面に石粒を付着させた屋根材
和瓦、洋瓦は耐用年数が60年と飛び抜けて長いですが、スレート屋根の耐用年数は、ガルバリウム鋼板やアスファルトシングルと差がありません。
しかし、耐用年数はあくまでも目安であり、実際の寿命とは違うことに注意しましょう。実際、先ほど紹介した調査結果では、耐用年数より早い約15〜25年でスレート屋根を交換している家が多いです。
その理由は、建物はそれぞれ建てる場所や気候などの条件が異なるためです。たとえば毎年大雨が降る地域があれば、風の強い沿岸地域や寒さの厳しい地域など、場所によって特徴はさまざまです。
場所によって条件が大きく異なるため、すべての建物が同じ寿命になるとは限りません。そのため、スレート屋根の寿命は、耐用年数より少し早い約25年を目安として考えておきましょう。
寿命を左右する要素
スレート屋根の寿命は、さまざまな要素によって左右されます。たとえば、以下の要素が考えられます。
- 地震
- 強風
- 屋根塗装などのメンテナンス
スレート屋根に使われるスレート瓦は薄っぺらく、軽い瓦材です。そのため、地震や強風の影響で、瓦の割れやずれが発生しやすいという特徴があります。
スレート瓦に割れやずれが発生すると、屋根材の下にある防水シートが太陽光にさらされ、劣化を進めてしまいます。
最終的には割れた箇所から雨水が入り込み、雨漏りが発生するおそれがあります。スレート瓦に割れや、ずれが発生したらなるべく早めに補修しましょう。
しかし、生活する上で瓦の割れやずれは容易には発見できません。定期的にメンテナンスをしていれば、不具合を早期に発見できます。
また屋根塗装は、見た目をきれいに保つだけではありません。防水効果や断熱効果がある塗料もあり、外的要因から屋根を守ることができます。塗装をしているかしていないかで、屋根の寿命は変わります。
寿命が近いサイン
スレート屋根の寿命が近づいているかどうかは、実際に屋根の状態を見ると確認できます。
しかし、一般の人が屋根の上に登るのは危険なため、絶対にやめましょう。また、専門的な知識がないと判断が難しいので、専門業者に点検を依頼しましょう。
どうしても自分で確認したい場合は、1階の屋根を2階から見る、ベランダに脚立を置いて見るなどの方法があります。
屋根の状態は、具体的に以下のようなポイントで判断できます。
- 屋根材の色あせ
- カビ、コケの発生
- 板金のサビ
- 屋根材の割れ、欠け
上から順番に、劣化が進んでいる状態を示しています。
スレート屋根は、塗装によって防水層を形成し、耐久性を高めています。スレート屋根の色あせにより、屋根材の塗装が剥がれてしまっていることがわかります。
防水効果がなくなると、カビやコケが発生し、急激に屋根材の劣化が進みます。特にコケはスレート瓦に根を張ることで、ひび割れなどを促進します。
そのため、寿命を保つには、コケやカビが発生する前に対処することが重要です。
塗装でコケなどの発生を抑制できるため、色あせが発生したタイミングで対処することがおすすめです。色あせは塗装が剥がれ始めたサインなので、見つけたらまずはすぐに点検を行いましょう。
スレート屋根の寿命がきてしまったら?
寿命がきてしまったスレート屋根は、そのまま放置していると雨漏りが発生するリスクが高いです。非常に危険なため、早急に対処しましょう。
具体的な対処法は、以下の2つです。
- カバー工法
- 既存のスレート屋根の上に新しい屋根材を重ねる
- 葺き替え
- 既存の屋根材を取り外し、新しい屋根材を設置する
それぞれメリットとデメリットがあるので、家の屋根の状況に合わせて、どちらかの工法を選択する必要があります。
カバー工法
カバー工法は、既存のスレート屋根はそのままで、その上に新しい屋根材を重ねる方法です。スレート屋根や金属屋根など、比較的軽量な屋根材を使用します。
カバー工法の主な施工手順は、以下のとおりです。
- 既存の棟板金の撤去
- 古い屋根の上に防水シートを張る
- 新しい屋根材を施工
- 新しい棟板金を設置
- コーキング、仕上げ
カバー工法は屋根材の撤去が不要なため、時間や費用を抑えられることがメリットです。
スレート屋根は粘土瓦と比べて軽い屋根材のため、強風で飛ばされるリスクがあります。そのため、通常スレート瓦が飛ばされないように、各所がしっかりとくぎなどで固定されています。
葺き替えの場合はくぎを丁寧に抜き、スレート瓦をひとつひとつ取り外す必要があります。その分手間がかかるため、撤去した屋根材の処分などが追加で必要です。カバー工法はその手間がなく、葺き替えより安く施工が可能です。
一方、カバー工法は、建物の耐震性能が落ちるというデメリットがあります。
屋根の重さは建物の耐震性能に大きく関わっています。一般的には、屋根が軽いほうが地震の力を受けにくい、といわれています。
建物は、既存のスレート屋根の重さで構造計算が行われています。そのため、カバー工法で屋根の重みが追加されると、想定されていない荷重が建物に加わります。
常に想定以上の荷重が加わるため、地震などの突発的な力に耐えられないケースが考えられます。
そのため、カバー工法では極力建物に負担がかからないよう、金属屋根やスレート屋根など、比較的軽い屋根材が採用されるケースが多いです。
葺き替え
葺き替えは、既存の屋根材を取り外し、新しい屋根材を設置する方法です。スレート瓦の下にある防水シートや下地材も、新しいものに交換するケースが多いです。
葺き替えの主な流れは、以下のとおりです。
- スレート瓦の撤去
- 防水シート撤去
- 野地板(下地材)の設置
- 防水シート張り
- 新しい屋根材を施工
- 新しい棟板金を設置
葺き替えのメリットは、下地材までリニューアルできることです。
屋根を構成している部材をすべて交換するため、屋根材の寿命がリセットされます。そのため、雨漏りの心配がなくなり、家自体の寿命も伸びます。
一方、デメリットは工事期間が長いことです。改修工事の中でも比較的大がかりな工事なため、完成までに約2週間の期間がかかります。
施工中の雨漏りリスクが少なからずあるため、葺き替えのタイミングはしっかり見極める必要があります。
劣化状況に合わせて適切な補修が必要
スレート屋根の劣化状況に合わせて、カバー工法か葺き替えのどちらかの対処法を選択しましょう。
判断基準は新築からの経過年数です。カバー工法は約20年まで対応しています。それを超える場合は、葺き替えがおすすめです。
葺き替えは、瓦の下の防水シートや下地材までリニューアルが可能です。下地や防水シートが劣化していても、屋根の寿命を復活できます。
一方カバー工法は、防水シートや下地材は既存のまま使用します。カバー工法を採用するには、既存の防水シートや下地材が劣化していないことが条件です。
葺き替えか、カバー工法かの選択は、防水シートの寿命である20年を目安に行いましょう。
スレート屋根の寿命を延ばす方法
耐用年数と実際の葺き替えまでの年数に大きな差があるのは、点検とメンテナンスの有無が原因です。簡易的なメンテナンスで済む不具合を放置していたため、寿命が数年縮まってしまうこともあります。
逆にいうと、定期的に点検を行い、メンテナンスを適切に行うことで、スレート屋根の寿命を伸ばすことが可能になります。
具体的には、以下のメンテナンスをしましょう。
- コケ、カビの除去
- くぎの抜け、瓦ずれの補修
- 瓦のひび割れ、欠けの補修
- 屋根塗装
それぞれ詳しく解説します。
コケ、カビの除去
コケやカビは、できるだけ早めに除去することをおすすめします。コケは根を張ることで、スレート屋根自体が劣化してしまいます。コケの根がスレート瓦に張ることで、ひび割れを引き起こすおそれがあります。
また、コケの持つ保水効果で屋根が湿潤状態になることで、凍害にあうこともあります。
寒さの厳しい地域で起こりやすい凍害は、屋根に致命的なダメージを与えます。コケによりスレート瓦の隙間に入り込んだ水分が氷になり膨張することで、スレート瓦の破損につながります。
スレート屋根の耐久性を保つために、コケやカビを発見したら速やかに対処しましょう。
具体的には、高圧洗浄やバイオ洗浄でコケやカビを除去します。
ホームセンターなどで、家庭用の高圧洗浄機などを購入できますが、必ず専門業者に依頼しましょう。自分で除去しようとすると、塗装まで剥がしてしまい、かえってコケやカビが生えやすい状態になるおそれがあります。また、屋根に自分で乗るのは非常に危険です。
くぎの抜け、瓦ずれの補修
経年劣化でスレート瓦を固定しているくぎが抜けると、瓦材がずれてしまいます。すると、下にある防水シートが露出して劣化してしまい、雨漏りが発生するおそれがあります。
また、くぎが抜けると、雨水が浸入する水道が作られます。雨漏りが発生すると、最悪の場合、建物全体の寿命を縮めます。
さらにくぎが抜けた状態の瓦は風で飛ばされるおそれがあり、安全面にも影響を及ぼします。被害を広げないために、くぎの打ち直しや瓦の補修をおすすめします。
ひび割れ、欠けの補修
スレート瓦のひび割れや欠けを放置しておくと、屋根の寿命を縮めることになるため、すぐに補修を行いましょう。
スレート屋根にひびや欠けが発生すると、そこから雨水がしみ込みます。徐々にスレート屋根が湿潤状態になり、カビやコケの繁殖を引き起こす原因になることもあります。
さらに、屋根材の下にまで雨水が浸入し、雨漏りが発生する可能性も十分考えられます。
ひび割れ箇所に充填剤であるコーキングを打って雨水の浸入を防止したり、欠けているスレート瓦を部分的に葺き替えたりして対処しましょう。
屋根塗装
定期的な塗装は、スレート屋根を長持ちさせる効果があります。10年に一度は点検を行い、必要に応じて屋根材の塗装をしましょう。
特に棟板金はサビや下地の劣化が発生しやすく、スレート材より劣化が早いです。屋根材の塗装と合わせてチェックを行い、必要に応じて塗装や交換などのメンテナンスをしましょう。
スレート屋根は塗装工事の品質で、寿命が大きく左右されます。そのため、工事内容を熟知している専門業者に施工してもらうことが重要です。
たとえば、屋根材の継ぎ目がある状態で、そのまま塗装すると塗料が入り込み、目詰まりを引き起こします。目詰まりは雨水の流れを変えてしまい、場合によっては雨漏り発生の要因になるおそれがあります。そのため、屋根材の継ぎ目にタスペーサーという部材を挿入して隙間を作る作業が必要です。
目詰まりのような施工不良は、スレート屋根の塗装実績が豊富な専門業者に任せることで防止できます。
しかし、自分の足で専門業者を探すのは一苦労です。そのため、一括比較サイトを利用しましょう。
一括比較サイトでは、一度の手間で自分の条件に合った複数の専門業者に見積もりを依頼できます。施工実績や担当者の対応などを比較して、信頼して任せられる塗装業者を選びましょう。