漆喰は消石灰といわれる水酸化カルシウムの白い粉に、スサ(繊維の素材)やノリなどの補強するつなぎ材料を混ぜて作った建築資材のことです。耐熱性や殺菌性、消臭性に優れ、湿気を吸収するなどのメリットがあります。
しかし塗りたては真っ白の漆喰でも、年数が経過すると汚れが目立つようになります。
本記事では、漆喰壁の汚れの落とし方を種類別に詳しく紹介します。また、塗り直しが必要になることもあるので、自宅の壁を確認しながら検討しましょう。
漆喰はなぜ汚れやすい?
そもそもなぜ漆喰は汚れやすいのでしょうか。漆喰の黒ずみの原因はいくつかあります。
排ガスやほこりが原因
漆喰は消石灰が主成分ですが、消石灰は多孔質といって微細な穴が多く空いている材料です。その穴に多くの排ガスやほこり、砂ぼこりがくっついて黒ずみができてしまいます。
車の往来が激しい場所にある建物の外壁が漆喰の場合、排ガスが原因で汚れやすいです。同様に人が多い場所も、ほこりや砂ぼこりが多く舞うため、汚れやすいです。
また、窓のサッシは静電気が発生しやすく、ほこりが付着して汚れの原因になります。雨の日に窓のサッシのほこりなどが雨水で漆喰の壁に流され、汚れが蓄積していくと黒ずみが目立ってしまいます。
漆喰は多少の汚れは目立ちませんが、蓄積されると黒ずみがはっきりと見えてしまいます。
カビが原因
海や川の近く、日当たりや風通しのよくない場所は湿気が多いです。漆喰に付着したほこりや砂ぼこりなどはカビが生えやすく、黒ずみができます。
また、以下のような状況でカビが発生して、汚れの原因になります。
- 漆喰に付着した鳥や虫のふんなどが雨にさらされてカビになる
- 周囲に木など緑の多い場所も風で飛んできたほこりや花粉が付着してカビになる
立地条件にもよりますが、コケや藻が生えることもあります。
漆喰の壁全体に黒ずみができることもあれば、一部分だけ汚れが目立つこともあります。
天気による見え方の問題
漆喰は天気によって汚れの見え方が異なります。
雨の日に漆喰がぬれると、汚れている箇所が目立ちます。曇りの日も同様に、湿気でグレーに近い黒ずみが際だってしまうようです。
ただしこれは一時的なもので、漆喰が乾くと元の白に近い状態に戻り、汚れが気にならなくなることもあります。
門袖の汚れは目立つ
門袖とは、玄関の前に取りつける壁のことです。表札やインターホンの設置、防犯対策など、さまざまな機能を果たすまさに家の顔のような存在です。
門袖は、外壁と同じように漆喰でできているものが多いです。同じ漆喰でも、外壁より門袖のほうが汚れていることがあり、その理由は門袖の構造に原因があるようです。
建物の場合、基礎コンクリート部分と木造部分に隙間をあける、あるいはほかの材料を間に挟むなどの対応をします。これを「縁を切る」といい、防熱や防振、亀裂防止の効果があります。
ところが門袖は縁が切れていないことが多いため、地面の湿気をそのまま吸収し汚れやすくなるのです。
汚れの種類別!漆喰の壁についた汚れの落とし方
汚れを落としてきれいな漆喰の壁に戻すにはどうすればよいでしょうか。実は、以下のように意外と身近なもので汚れを落とせます。
汚れの種類 | 準備するもの |
---|---|
軽度の汚れ | 消しゴム、メラミンスポンジ |
こびりついた油性の汚れ | カッターナイフ |
範囲の広い油性の汚れ | サンドペーパー |
広範囲の汚れ | 次亜塩素酸ナトリウム入りの塩素系漂白剤 |
ここでは、汚れの程度や種類別に落とす方法を紹介します。
軽度の汚れ
手あかなどの軽い汚れは、汚れた箇所を消しゴムでこするだけで落とせます。
消しゴムで汚れが取れなかった場合は、メラミンスポンジを水にぬらして汚れた箇所をこすってみましょう。
消しゴムとメラミンスポンジのどちらを使う場合でも、こすりすぎないように注意しましょう。
こすりすぎると漆喰を傷つけてしまうだけでなく、ほかの箇所と色が変わってしまい、かえって汚れが目立ちます。優しく丁寧に、全体の様子を見ながら実施しましょう。
メラミンスポンジは100円ショップなどで販売されているため、手頃に汚れが落とす方法としておすすめです。
こびりついた油性の汚れ
消しゴムやメラミンスポンジでも落とせない汚れは、カッターナイフで削り落としてみましょう。
漆喰はほかの壁紙より厚いため、汚れを落とすために少しであれば削っても問題はありません。しかし削りすぎると、下地が見えてしまったり、削った箇所が逆に目立ったりするため注意が必要です。
全体を見ながら、刃を立てずに優しく削り落としましょう。また、けがをしないように作業用の手袋を着用するなど、カッターナイフの刃に十分気をつけましょう。
範囲の広い油性の汚れ
汚れの範囲が広い場合は、カッターナイフだけで落とすのは難しいため、サンドペーパーを使いましょう。
消しゴムやメラミンスポンジと同じで、汚れの箇所と全体の様子を見ながら優しく丁寧にサンドペーパーでこすります。
サンドペーパーは、漆喰の質感を損なわないために、目が細かいものを選びましょう。具体的には#280~#800を目安に、自宅の壁に合わせた粗さのものを探すとよいでしょう。
広範囲の汚れ
広範囲の汚れには、次亜塩素酸ナトリウム入りの塩素系漂白剤が有効です。泡タイプの漂白剤であれば、汚れにピンポイントで吹き付けられて効果的です。
ただし室内の漆喰壁の汚れを落とす場合、十分な換気をしても2~3日は室内に漂白剤の独特なにおいが残ります。
また、漂白剤を使用すると漆喰が変色するおそれがあるため、使用前に目立たない箇所で試してからにしましょう。
カビによる黒ずみを気になる場合は、壁用のカビ取り剤を使用しましょう。ただしにおいが強烈なため、マスクやタオル、手袋、ゴーグルなどを装着してから使用することを推奨します。
塗り直しが必要なことも!
紹介した方法で汚れが取れなかった場合は、基本的に漆喰の塗り直しが必要です。
ここでは、どのような状態でするべきなのかなど、漆喰の塗り直しについて詳しく解説します。
どういった状態で塗り直しが必要か
漆喰の壁が具体的にどのような状態であれば、塗り直しが必要なのでしょうか。
ひどい汚れ
落としきれないひどい汚れやカビの場合は、無理に対処しようとして失敗するより、塗り直しを検討するほうがよいでしょう。
ひび割れ
漆喰は経年劣化すると、ひび割れやキズがつきやすくなります。
ひび割れの箇所に漆喰を埋めて塗り直すことで、補修できます。ただし全体的に経年劣化している場合は、一部だけ塗り直すと補修箇所が目立ってしまうため、全体を塗り直したほうがよいでしょう。
剥離
漆喰が劣化して一部が剥がれ落ちている場合、漆喰全体を除去し、壁の下地を補強してから全体を塗り直すケースが多いです。
一部だけの塗り直しと比較すると、時間と手間がかかります。
塗り直しの費用
漆喰の塗り直しにかかる費用の相場は、以下のとおりです。
1平米あたりの費用相場(円) | |
---|---|
部分的な重ね塗り | 4,000~8,000 |
漆喰を剥がして下地から塗り直す | 8,500〜3万 |
壁の全面的な補修 | 50万~120万 |
下地がそのまま使用可能かどうかで、費用が変わるようです。現状の下地で問題ないようであれば費用を抑えられますが、そうでない場合は費用がかさんでしまいます。
なお、費用の相場はあくまでも目安のため、施工会社や状況によって金額は変動します。
DIYより専門の施工会社がおすすめ
漆喰の塗り直しはDIYでもできます。最近ではホームセンターに漆喰塗料が販売されており、施工会社に依頼する半値くらいで購入可能です。
しかし、塗料以外の道具や養生材の用意をする必要があります。
また、専門的な技術や経験がないと、どうしても仕上がりはよくありません。そのため、DIYで塗り直しをしたあとに施工会社へ依頼することになると、余計な費用と時間がかかってしまいます。
リスクを避けるには、漆喰の塗り直しは施工会社に依頼することをおすすめします。施工会社を選ぶときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 適正価格を提示しているかを確認する
- 飛び込み営業の会社は避ける
適正価格を提示しているかを確認するには、複数の施工会社による見積もりを比較しましょう。最初から1社だけに見積もりを依頼すると、高すぎる価格設定に気づかずに契約してしまうおそれがあります。
また、以下の項目もチェックしておくと安心です。
- 国や地方公共団体から建設業許可を受けているか
- 実績豊富で優秀な職人が在籍しているか
- 施工会社が加入すべき保険に入っているか
- アフターフォローなど保証の記載があるか
複数の施工会社に見積もりを依頼するときは、一括比較サイトの「ぬりマッチ」を利用しましょう。
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