シート防水とは、工場で均一な厚さに加工したシート状の材料を使用して防水層を作る工法のことです。
陸屋根(ろくやね、りくやね)と呼ばれる平らな屋根の新築工事や改修工事で使用されており、マンションやビルの屋上でよく見られます。
本記事では、そんなシート防水の種類や工程、単価を紹介します。改修に適した工法や改修時の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
シート防水とは?2種類ある!
シート防水とは、建物の屋根や壁などに水が入らないようにするための工事の一種です。塩化ビニールやゴム製のシートを、専用の接着剤や機械で施工箇所に固定し、水の侵入を防ぎます。
シート防水は耐用年数と費用のバランスがよく、費用対効果が高くなりやすいのが特徴です。シートは工場で生産されたものを使うので、いつでも均一な厚みで仕上げられます。広い面積をむらなく施工できるので、アパートやマンションの屋上などでよく選ばれています。
シート防水には2種類の工法があり、「接着工法」と「機械的固定工法」に分類されます。ここからはそれぞれの特徴やメリット、デメリットを解説します。
接着工法
接着工法は主に新築工事で採用されており、プライマーと呼ばれる接着剤を使って、シート状の材料を下地に接着させて防水層を作る工法です。
急勾配の屋根から変形屋根に至る広範囲の屋根の施工が可能であり、作業員一人当たりの施工が早いという特徴があります。さらに、大がかりな設備を使用しないため、比較的安価で作業してもらえます。
一方、デメリットはシートが膨れやすい点です。また、接着剤でシートを張るので、下地が乾燥していないと施工できません。
そのため下地の乾燥度や表面強度、粉塵、天候などの接着に影響する要因により施工品質が左右されることが多々あります。改修工事の場合、雨天が多いと予定よりも工期が伸びることもあります。
機械的固定工法
機械的固定工法は、固定金具を用いて、シート類を下地へ固定し防水層を作る工法です。新築工事でも改修工事でも使用されています。
シートを固定金具で留めるので、施工時の自然条件や下地の影響をほとんど受けません。そのため接着工法と違い、下地の乾燥、表面強度、粉塵、天候などに施工品質が左右されにくいメリットがあります。
また、下地の亀裂や振動などに影響されにくいため、ひび割れなどに強いのもメリットです。
しかし、強風で固定金具が外れるおそれがあるため、耐風圧性能の検証が必要です。デメリットとして複雑な屋根形状に対応できないことや、シートがめくれやすい点が挙げられます。
シート防水の工程
シート防水の施工は、ほかの防水方法と比べて工程が少ないのが特徴です。大まかな流れは下記のとおりです。
- 下地処理
- プライマーの塗布(接着工法のみ)
- シートおよび断熱材の張付け
- 水張試験
- 最終仕上げ、保護層の形成
詳しく解説します。
接着工法の施工手順
接着工法の施工手順は次のとおりです。
- 防水ができるように下地を左官補修する
- 下地が乾燥しているか防水の施工前に「含水率」を計測する
- 下地全面に接着剤をムラなく塗布する
- シートを張る位置を出す「
墨出 し」をする - シートの裏面に接着剤を塗布して張付ける
- 角部に専用の補強シートを張付ける
- シート同士の接合部を融着機と呼ばれる専用の工具で溶着する
- ドレン(水抜き装置)や脱気(防水層に膨れが生じないよう、湿気を排出させる)装置などの周辺を補強処理する
- 水張試験を行い、品質の不具合や水漏れがないことを確認する
- シートに着色する場合は仕上げ塗料を塗り完了
機械的固定工法の施工手順
機械的固定工法の施工手順は次のとおりです。
- 改修工事の場合は、下地に絶縁シートを敷設する
- 平場に固定金具を決まった寸法で配置し、ドリルで下地に穴を開ける
- 固定金具を留める
- シートを重ねながら張る
- シート同士の接合部を溶着剤という接着剤を使って接合する
- シートと固定金具を専用の工具を使い、高温で加熱接合する
- シート端部に「Uシール」というシーリング材を使い隙間を塞ぐ
- ドレン(水抜き装置)や脱気(防水層に膨れが生じないよう、湿気を排出させる)装置などの周辺を補強処理する
- 水張試験を行い、品質の不具合や水漏れがないことを確認する
- シートに着色する場合は仕上げ塗料を塗り完了
ウレタン防水との違い
ここからはシート防水とウレタン防水の違いを解説します。
シート防水は防水材を「張る」のに対して、ウレタン防水は防水剤を「塗る」という違いがあります。そのため、ウレタン防水は複雑な屋根形状でも対応できます。一方、シート防水は大面積に対応できる特徴があります。
また、耐用年数も異なり、ウレタン防水は8〜10年、シート防水は10〜15年とシートのほうが長いことがわかります。
ウレタン防水もシート防水も改修工事でよく用いられる工法ですが、陸屋根と呼ばれる平らな屋根の改修でオススメなのは「シート防水」です。既存の防水がシート防水の場合、ウレタン防水はオススメできません。
オススメできない理由は、そもそもシート防水とウレタン防水は相性がよくありません。既存のシート防水にウレタン防水を上塗りすると、ウレタンが溶剤系のため既存のシートを侵食してしまうおそれがあります。
そのため、侵食を防止する専用のプライマーがありますが、コストが高くなってしまいます。このことから、屋根の形状が複雑で改修にシート防水が使用できない場合以外は、既存のシート防水にウレタン防水を上塗りするのはオススメできません。
既存の屋根がシート防水なら機械的固定工法がベスト
既存の屋根がシート防水で改修をするなら、シート防水の「機械的固定工法」がオススメです。
その理由は、既存の防水層の撤去費用を抑えられるから
既存のシート防水に重ねることが可能なため、既存の防水層を撤去する必要がなく、撤去費用を抑えられます。
接着工法は下地が乾燥していないと施工できませんが、機械的固定工法の場合、特別な下地処理をする必要がなく、天候に左右されないため多少天気が悪くても施工できます。
また、シート防水は費用が安く耐久性が高いだけでなく、メンテナンス頻度が少ないのでコストパフォーマンスがよいことで知られています。
さらにシート防水は工場生産品であるため、職人の技量によって品質が左右されにくいです。
種類別シート防水の費用相場
下記が種類別のシート防水の費用相場です。
種類 | 費用(円/m2) |
---|---|
塩ビシート(接着工法) | 4,000〜5,000 |
塩ビシート(機械的固定工法) | 5,500〜7,500 |
ゴムシート | 4,000〜5,000 |
機械的固定工法の価格は高いですが、その分品質の確保ができるので妥当な金額といえるでしょう。
機械的固定工法はほかの防水工法と比べてもメンテナンス頻度が1番少ないため、コストパフォーマンスを重視する人にオススメです。
単価は高いですが、メンテナンス費用や張り替え費用を考えても機械的固定工法を選んでおけば失敗することは少ないでしょう。
現在、ゴムシート防水はほとんど使用されておらず、塩ビシートが主流になっています。ゴムシートは塩ビシートよりも破れやすくメンテナンス頻度も多いため、あまりオススメできません。
シート防水の改修で注意したいこと4選
シート防水の改修で注意したいこと4選は、次のとおりです。
- 振動や騒音が発生する
- 対応できない屋根がある
- 接合部の接着が重要
- 屋根工事の一括見積もりサイトを使う
それぞれ解説します。
振動や騒音が発生する
機械的固定工法の場合、工事中にドリルを使用して固定金具を留めるため、振動や騒音が発生します。
改修する屋根の面積が広いほど固定金具の数も増えるため、工事期間中ずっとドリルの振動や騒音が聞こえてきて、想像以上に負担がかるおそれがあります。また、工事前に近隣にしっかりと説明しておかないとクレームにも繋がります。
あらかじめ施工会社に説明をしてもらい、作業に入ってもらいましょう。
対応できない屋根がある
機械的固定工法は、シートの形状に適した屋根しか施工できないため対応できない屋根があります。
たとえば、屋上に突起物がたくさんあったり、複雑な形状をしていたりする場合は、施工できません。
そのため、シート防水だけでなくウレタン防水と併用することもあるでしょう。施工会社にしっかりと相談し、納得のいく防水工事をしてもらいましょう。
接合部の接着が重要
機械的固定工法は、接合部の接着が重要です。シート同士の接合部を接着剤でしっかりと接着していないと、強風が吹いたときにシートが剥がれてしまうおそれがあります。
万が一、1箇所でも剥がれてしまうとどんどん広がり、漏水の原因になります。しっかりとした防水層を作ってもらうために、最後に施工写真を提出してもらうとよいでしょう。
屋根工事の一括見積もりサイトを使う
屋根や屋上の防水工事をするなら、屋根工事の一括見積もりサイト「ぬりマッチ」がおすすめです。ぬりマッチは、完全無料で施工会社の相見積もりができるサービスです。見積もりの対象は、厳しい審査基準を通過した会社のみです。
防水工事の費用を安くし工事を成功に近づけるには、できるだけ複数社に見積もりを依頼することが大切です。複数社に依頼することで会社同士の価格競争を促せますし、よりよい会社を見つけやすくなるためです。ぬりマッチを利用して、防水工事を成功させましょう。