太陽光パネルを屋根に設置した場合は、屋根が太陽光パネルで隠れているため塗装が不要だと考える方もいるでしょう。
しかし、太陽光パネルで隠れていない箇所は、通常どおり紫外線や雨水を受けるため、日々劣化が進みます。屋根を守り快適に暮らすには、定期的なメンテナンスが必要です。
本記事では、太陽光パネルがある屋根を塗装する手順や注意点を具体的に解説します。
太陽光パネルを設置する住宅は増加している
近年エコ住宅の人気が高まっており、太陽光パネルを設置する住宅が増えています。
一般社団法人太陽光発電協会の「太陽光発電の状況ー主力電源化に必要な新規案件開発継続ー」によると、住宅用(10kW未満)太陽光発電導入件数は2009年の累積導入件数が55万9,438件だったのに対して、2019年は267万6,116件と、200万件以上も増加しています。
太陽光パネルで発電した電気のうち消費して残った分は、蓄電して後々使用できます。また、電力会社に買い取ってもらえることも太陽光パネルを設置する魅力でしょう。
太陽光パネルがある場合屋根塗装は不要?
太陽光パネルで屋根が隠れるので塗装は必要ない、と考える方もいますが実際は違います。
太陽光パネルがあっても屋根塗装は必要
太陽光パネルがあっても、定期的に屋根塗装が必要です。
太陽光パネルで隠れていない箇所は、通常どおり紫外線を受けます。紫外線を受けた屋根は塗装が劣化してしまうため、塗装の効果が薄れてしまいます。
塗装の効果が薄れて防水性能が低下すると屋根材の劣化が早まり、最悪雨漏りを起こすおそれがあります。そのため、屋根材を保護するためにも、太陽光パネルの設置後も屋根塗装が必要です。
ただし、太陽光パネルが設置された箇所は屋根材が紫外線を直接受けないため、劣化のスピードは比較的ゆるやかです。そのため、太陽光パネル設置後に屋根塗装をする際は、太陽光パネルで隠れていない箇所のみ塗装するのが一般的です。
できるだけ太陽光パネル設置前に塗装する
太陽光パネルを設置するときは、あらかじめ屋根塗装をされることをおすすめします。
先に太陽光パネルを設置してしまうと、設置箇所以外しか塗装できないので、屋根全面の塗装は困難です。
しかし太陽光パネルを設置する前であれば、太陽光パネルが邪魔にならないため、通常どおり屋根全面を塗装できます。必ずしも設置前に屋根を塗装する必要はありませんが、仕上がりをきれいにするのであれば、設置前に塗装しておきましょう。
室内環境や外観の問題を改善してくれる
屋根塗装は屋根材の保護だけでなく、室内環境を快適にする効果や美観を保つ効果を期待できます。
たとえば屋根の塗装に使われる塗料には、断熱性に優れた塗料があります。断熱性に優れた塗料は、屋根表面の熱が室内に伝わりにくくなるため室温の上昇を防ぎます。
また抗菌性に優れた塗料はカビの発生を防ぐため、美観を長く保つことが期待できます。
太陽光パネルがある屋根の塗装方法
太陽光パネルがある屋根は、通常とは異なる方法で塗装します。太陽光パネルがある屋根の塗装方法について解説します。
太陽光パネルの脱着が必要?
屋根塗装を行うときに、太陽光パネルの脱着が必要なケースと必要ないケースがあります。
たとえば太陽光パネルが設置されている箇所以外を塗装する場合は、脱着する必要はありません。一方で屋根を全面塗装したい場合は、太陽光パネルの脱着が必要です。
しかし太陽光パネルの脱着には、デメリットがあります。
一般的に太陽光パネルの脱着費用は、相場が20万円以上と高額です。屋根塗装費用と足場仮設費用に加えて、20万円以上もの脱着費用が追加されるのは費用面の負担が大きいです。
また太陽光パネルを脱着することによって、メーカー保証を失効するリスクもあります。
太陽光パネルは、システムの不具合や架台を傷めた際に、メーカー保証によって無償で修理に対応してもらえます。しかし屋根塗装によって不具合が発生した場合は、メーカー保証の対象外になる可能性が高いです。
メーカー保証が適用されない場合は、自費で修理する必要があるため、さらに費用の負担がかかります。
屋根塗装の手順
太陽光パネルを設置している場合の屋根塗装の手順は、以下のとおりです。
- 足場の設置と高圧洗浄
- 下地処理と補修
- 太陽光パネルの養生
- 塗装
なお、太陽光パネルを脱着する場合は、屋根塗装の作業前に行います。それぞれの手順について詳しく解説します。
足場の設置と高圧洗浄
まずは屋根塗装をするために、足場の設置をします。塗料の飛散防止や職人の落下防止対策として、足場にはメッシュシートを貼ります。
足場の設置とメッシュシートの貼り付けが終われば、次は高圧洗浄作業です。高圧洗浄機を使用して、建物の汚れを洗い流します。高圧洗浄機を使用する際は、太陽光パネルがぬれないように細心の注意を払って作業します。
下地処理と補修
高圧洗浄作業後に時間を置いて乾燥させてから、下地処理を行います。
下地処理では、屋根材を留めるくぎの状態を確認します。くぎが浮いていると、屋根材が飛ばされたり雨漏りしたりする原因になります。くぎ打ちや、くぎが抜けないように充填剤で隙間を埋めるコーキング処理をして、再度くぎを固定します。
くぎ打ちおよびコーキング処理の後は、屋根材の補修です。
屋根材のひび割れや欠けを、コーキングで補修します。屋根材の損傷が激しい場合は、屋根材の差し替えも必要になるでしょう。
太陽光パネルの養成
太陽光パネルを脱着せずに塗装する場合は、太陽光パネルの養生を行います。
塗料が太陽光パネルにつかないようにビニール養生を行います。ビニール養生中は発電ができなくなるので、注意しましょう。
塗装
塗装は下塗りと中塗り、上塗り塗料の3回行います。そうすることで、塗膜に厚みができるため、耐久性やつやが出ます。
下塗りは上塗り塗料との接着剤としての役割があるため、仕上がりに大きく影響します。塗料の剥がれや色むらが起きないように丁寧な作業が必要です。
下塗り後は、タスペーサーを設置します。タスペーサーは、塗料で屋根材の隙間が埋まらないように差し込む部材です。スレート屋根でのみ必要な工程で、瓦や金属屋根の場合は行いません。
下塗り作業が終われば、中塗りと上塗りを順に行います。上塗りを終えたら乾燥期間を経て、屋根塗装は完了です。
屋根塗装を依頼するときの注意点
太陽光パネルがある屋根は、一般的な屋根塗装とは異なるため、依頼するときに注意が必要です。ここでは、3つの注意点を紹介します。
太陽光パネルを保護する意識を持たせる
多くの塗装業者は、太陽光パネルが設置された屋根塗装の経験があるため、安心して任せることができます。しかし中には経験が浅く、太陽光パネルを保護する意識が低い業者も存在します。
たとえば、太陽光パネルの汚れを取るために高圧洗浄機の水を直接当ててしまうケースがあります。高圧洗浄機で高圧の水を太陽光パネルに当てると、発電性能が低下するおそれがあります。
また、足場の設置が十分ではなく、太陽光パネルの上に乗ってしまうケースもあるでしょう。太陽光パネルは重量に強くはないため、内部が損傷するおそれがあります。
打ち合わせの段階で、塗装業者に太陽光パネルを丁寧に扱ってほしい旨をしっかりと伝えておきましょう。また、施工中は職人がどのように作業しているのか確認することをおすすめします。
足場の解体前に発電の確認を行う
太陽光パネルがある屋根塗装は、足場の解体前に発電の確認を行いましょう。なぜなら足場を解体してから不備が見つかると、再度足場を設置する必要があるからです。
たとえば塗料が太陽光パネルに付着しており、発電量が低下してしまっているおそれがあります。うまく発電ができない場合は、状況確認のために足場が必要です。また、修理が必要になった場合も、足場が必要です。
足場を解体する前であれば、再度足場を組まずに状況確認および修理が可能です。再度足場を設置する費用がかからないため、足場の解体前に必ず発電の確認をすることが大切です。
依頼する業者の選び方
屋根の塗装を依頼する場合は、太陽光パネルが設置された屋根の塗装実績がある業者を選びましょう。
実績がない業者は太陽光パネルを保護する意識が低く、破損させるリスクがあります。無事に屋根塗装を行ってもらうため、信頼できる業者に依頼することが大切です。
信頼できる業者を選ぶには、一括比較サイトを利用しましょう。一括比較サイトであれば、必要な情報を一度入力するだけで複数の業者に問い合わせることができます。見積もりの内容を比較できるため、優良な業者の判断材料になるでしょう。
太陽光パネルが設置された屋根の塗装に関するよくある質問
- 太陽光パネルがある場合屋根塗装は不要?
- 太陽光パネルがあっても、定期的に屋根塗装が必要です。太陽光パネルで隠れていない箇所は通常どおり紫外線を受けるため、劣化により塗装の効果が薄れてしまいます。
- 屋根塗装を行うときに太陽光パネルの脱着が必要?
- 屋根全体を全面塗装したい場合は、脱着が必要です。しかし、脱着費用は20万円以上と高額なうえ、メーカー保証を失効するリスクもあります。