注文住宅は自由に間取りやデザインを決定できる半面、建てる人のセンスや知識が問われます。そのため、一般受けしやすい建売などの既製品に比べ、失敗しやすい傾向にあります。
特に外観の失敗は第三者からもわかりやすく、毎日の行き帰りに目にする部分ですので、後悔しやすくなります。
毎日、目にして気分が上がるような外観にするために、外観で失敗しないためのポイントをチェックしておきましょう。
やりがちな外観の失敗事例8選
どれほど入念に計画を立てて建築しても、誰もが満足できる注文住宅を建てるのは簡単ではありません。
しかし、失敗事例を知っていれば、計画の段階で同じ失敗を防げます。ここでは注文住宅を建てた際、起こりがちな外観の失敗事例8選を紹介します。
外観の色がイメージと違う
注文住宅の外観に関する失敗でもっとも多いのは、色に関する失敗です。
色は面積効果と呼ばれる視覚・心理現象によって、広い面積に塗るほど明るい色はより明るく、暗い色はより暗く見えます。そのため、A4サイズ程度のサンプルで色を決めると、イメージと異なる危険性があります。
また、パソコンでシミュレーションなどをして、広い面積で色がどう見えるか確認していても、快晴と曇り空、雨の日では色の見え方が異なります。
そのため、家が建ったあと「明るく軽やかな印象を与える色を選んだのに、安っぽくなってしまった」「落ち着いた重厚な家にしたくてダークな色を選んだのに、重たい印象ばかり際立つ」といった後悔をしやすいのです。
塗装したい色に近い外壁の家を見学に行くなどすると、実際に家が建ったあとのイメージをつかみやすいでしょう。
外壁の色で近隣から苦情が来た
外壁の色に関する後悔で意外と多いのが、近隣トラブルです。技術の進歩により、現在は外壁に塗装できる色が増えました。
一昔前まで外壁の色はアイボリーやベージュ、薄いグレーなど周りの風景に溶け込みやすい色が主流でしたが、現在はネイビーや黒などはっきりとした色合いの外壁も増えています。
しかし、家を建てる場所によっては、外壁の色がとても目立つケースもあります。特に景観を重要視している地域だと、家が建ったあとで「周囲との調和が取れない」「圧迫感がある」などの苦情が来る場合もあるでしょう。
反対に、周囲とあまりにも似た色の外壁や外観にした場合も、苦情が来るおそれがあります。注文住宅などの新築の家にありがちなトラブルが、「隣と同じまたは似た外観や外壁になる」ことです。
偶然の場合がほとんどかもしれませんが、あまりにも隣と似ている場合は「真似された」とクレームが出るおそれもありますので、事前に配慮しておくのが賢明です。
さらに、黒色や白色などの外壁の色によっては、近隣の家がまぶしさを感じやすくなるなどのデメリットもあります。
特に、黒色の外壁は風水を気にされる方にとって、あまりよい印象を抱かれないため注意しましょう。
近隣トラブルになれば、問題解決後もしこりが残り、その地域に住みにくくなる場合もあります。
庇や軒をけずった結果、生活しにくくなった
庇は玄関や窓のうえに設置された小さな屋根のような部分、軒は壁や窓よりも屋根が突き出た部分です。
庇は外観のアクセントになるだけでなく、家を雨や日差しから守ってくれます。また、軒裏や軒天などの軒がなければ、雨漏りが発生しやすくなるといったデメリットがあります。建物の保護や室内の温度調節にも、庇や軒の有無が影響してくるでしょう。
たとえば庇や軒があることで、雨や雪が建物の壁面や窓に直接当たるのを防ぎます。これにより、窓ガラスや壁面に汚れがつきにくくなり、劣化を減少させられます。さらに、太陽光が壁面や窓に直接当たるのを防ぎ、外からの温度の影響を受けにくくします。
デザインを優先して庇や軒をけずった結果、家の中の湿度や温度が上昇したり、雨の日に玄関を一歩出ればぬれてしまったりして、暮らしにくくなるといった失敗もありがちです。
庇や軒は後付けも可能ですが余分な費用もかかり、家のデザインも変わってしまいます。デザインだけでなく、実用性の面からも庇や軒の必要性を考え、判断することが大切です。
道路からすぐ見える場所に勝手口や玄関がある
道路に面した住宅の場合、勝手口や玄関が道路から丸見えだと、通行人の視線が気になります。
特に勝手口はラフな服装で出入りしたり、キッチンが丸見えになったりして、プライバシーが心配です。また、家の出入りが人目に付きやすいと防犯面でもデメリットがあります。
たとえば、しっかりとした身支度で出ていく姿がすぐに目に入れば、長時間外出する可能性があると思われ、空き巣の標的になる場合もあるでしょう。
最近は、おしゃれな玄関も増えており、あえてオープンスタイルにする注文住宅もありますが、人通りが多い通りに面した家は目隠しをつけるのがおすすめです。
いまはおしゃれな目隠しも増えているため、素材や色を選べば圧迫感も覚えにくいでしょう。
見栄えにこだわった結果、メンテナンス費用が膨大に
現在は、いろいろな注文住宅が建築できます。住宅メーカーによっては、海外で造られた設備を取り寄せて、ヨーロッパ風の家が建てられるのを強みにしているところもあるでしょう。
また、こだわって一風変わったデザインやエクステリアを設置する方も多いでしょう。
しかし、エクステリアや家のデザインにこだわり過ぎると、メンテナンスが大変になることがあります。
たとえば、エクステリアが破損したり故障したりした場合、取り寄せに何カ月もかかったり、施工できる業者が少なく出張費がかかったりする場合もあるでしょう。 さらに、日本の仕様や気候に合せて造られていないエクステリアの場合、寿命が大幅に短くなる危険性もあります。
このほか、外壁や屋根の色にこだわった結果、すぐに色あせて頻繁な塗り替えが必要になるといった失敗もあります。
注文住宅を建てる場合は、メンテナンス頻度や家が建っている環境のこともよく考え設計しましょう。
雨樋やガラリ(換気口)が悪目立ちしている
雨樋やガラリ(換気口)は、なくてはならない設備です。雨樋がなければ、屋根から雨が激しく滴り落ちることになり、外壁の劣化や雨漏りの原因となるでしょう。
ガラリがない家は臭いがこもりやすくなり、湿気も酷くなります。家の外観を決める際、雨樋やガラリの設置場所をよく考えずにいると、いざ家ができあがってみたら、悪目立ちしていたといった失敗になりがちです。
雨樋もガラリも、リフォームで場所を移動させることはできます。しかし、簡単な工事ではありません。
設計する段階で家が完成したあと、雨樋やガラリがどのように見えるのか、建築士さんに具体的に説明してもらうと失敗を防げます。
3D化ソフトなどを利用すれば、設計図の立体化なども可能です。
家の窓や換気扇の位置・デザインで近隣とのトラブル発生
都市部では、住宅どうしの距離が近くなりがちです。窓の位置やデザインによっては隣家から家の中が丸見えになったり、逆に隣家の家の中が見えてしまったりすることもあるでしょう。
また、換気扇も設置場所によっては、隣家に臭いが流れがちです。家が建ったあとで、「目隠しをつけてほしい」「換気扇の位置を変更して欲しい」といった苦情が来る場合もあります。
目隠しの後付けは比較的簡単ですが、隣家との距離が近すぎる場合、設置する場所の確保が困難なケースもあるでしょう。また、換気扇の位置をずらすのは大規模なリフォームが必要になる場合もあります。
家を建てる前に隣家との距離を確認して、窓や換気扇の設置位置を考える必要があります。
業者の施工不良
注文住宅の建築は、工務店だけでなく左官業者や内装業者・塗装業者など多くの業者が関わります。信頼できる一流のハウスメーカーに依頼した場合でも、内装業者や塗装業者のレベルがいまひとつの場合もあるでしょう。
特に、外壁塗装をする業者のレベルが低いと外壁にピンホール(気泡)と呼ばれる小さな穴ができてしまい、見栄えが悪くなります。
外壁塗装の不備は業者にやり直しが請求できます。外壁塗装が仕上がった段階で入念にチェックして、疑問点があればすぐに業者に確認しましょう。時間が経つほど、業者の不備が立証しにくくなります。
注文住宅の外観で失敗しないための5箇条
ここでは、先に紹介した失敗事例を含め、注文住宅の外観で失敗しないための5箇条を紹介します。
- 外壁の色やデザインは周囲の環境も考えて決めるべし
- デザインはメンテナンス頻度も考慮して決めるべし
- 視線は想像以上に気になると思うべし
- 設計図は立体で確認すべし
- 引き渡し前のチェックは入念にすべし
外壁の色やデザインは周囲の環境も考えて決めるべし
外壁の色やデザインは、自分好みだけでなく周囲の環境も考えて決めましょう。あまりに個性的過ぎる色や、逆に隣と似すぎている色は苦情の原因になります。
とはいえ、悪目立ちせず、かつ隣と異なる色を選ぶのは難しいかもしれません。そんなときは、周囲の家をよく確認しましょう。一般的に、建売に比べ注文住宅は「自分だけの家」として、真似されたくない人が多い傾向にあります。隣が注文住宅であれば、似た色は避けたほうが無難でしょう。
隣と同じような色を使いたい場合は、事前に確認するなど隣人との関係にも気を使いましょう。反対に、どうしても個性的な色を使いたいなら、差し色にして使うなど工夫してください。
また、赤や黄色といった原色に近い色は色あせしやすく、黒は紫外線を吸収して夏は室内まで暑くなりやすいといったデメリットもあります。
個性的な色や周囲と似た色でどうしても外壁全面を彩りたい場合は、家を建てる前に近隣住民に説明し、理解を求めましょう。
デザインはメンテナンス頻度も考慮して決めるべし
一戸建ては、定期的なメンテナンスが必要です。外壁塗装やエクステリアの修繕、交換などのメンテナンスは、10~15年に一度が目安です。
しかし、日本の気候にそぐわないエクステリアを使ったり、デザイン重視で軒や庇をけずったりすれば、家の劣化が早まるおそれがあります。
7~8年ごとに数十万円のメンテナンス費用が必要になれば、家を維持するのも大変です。
外観に強いこだわりがある場合は、メンテナンスがしやすいかどうかも考えながらデザインを考えましょう。近年は、ヨーロッパ風の家も日本のメーカーが販売するエクステリアで造りやすくなっています。
視線は想像以上に気になると思うべし
現在はオープン外構の家も増えており、「垣根や塀も高すぎるとかえって防犯性が低くなる」という認識も広がっています。
しかし、人通りの多い道路に面した家や、人の行き来が頻繁にある私道に面している家は、玄関や勝手口の前に目隠しを設置しましょう。がっちりとした目隠しでなくとも、人の出入りが見にくくなるだけでも異なります。
「カーテンを閉めておけば、人の視線など気にならないのでは?」と思う方もいるでしょう。ただし、人の歩く姿は思っている以上に気になります。隣家との境も同様です。
あまり見たくないものが目に入ってしまうストレスは、想像以上に大きいでしょう。お互いが快適に過ごすためにも、目隠しは必須です。
適度に隙間がある目隠しなら、圧迫感も感じにくいでしょう。
設計図は立体で確認すべし
家の設計図ができたら、3D化ソフトなどで立体化してもらいましょう。模型を造ってくれるところもありますが、雨樋やガラリ(換気口)など細かい設備は省かれるケースが多いです。
軒、庇、雨樋、ガラリなどの位置を詳しく確認し、悪目立ちしないかどうかをチェックしましょう。ただし、見栄えを優先して必要な設備を省いてしまうと、今度は家の劣化が激しくなります。
「悪目立ちしているが、その場所でないと役目を果たせない」場合は、家の外観のデザインを少し変えるなど融通を利かせましょう。
引き渡し前のチェックは入念にすべし
注文住宅の完成後は、引き渡し前に必ずハウスメーカーと施主、施工業者の責任者とで工事に不具合がないかチェックします。このチェックを入念に行いましょう。
ここで不備を指摘すれば、ハウスメーカーや施工業者も原因や責任の追及をしっかりとしてくれます。引き渡し後で不備が見つかった場合、施工中の不備なのか住人が原因の不備なのかの判断が難しくなるケースもあります。
「しっかりした業者だから」と安心せず、入念にチェックして、失敗を防ぎましょう。