北海道や東北地方、信越地方などの寒冷地は、冬になると積雪や気温の低下が原因で、外壁に凍害が発生しやすくなります。凍害を放置すると、家全体に深刻な悪影響を与えるおそれがあるため、早めの対策が必要です。
寒冷地の外壁に発生する凍害とはどのようなものなのでしょうか。凍害の症状や、症状に合わせた補修方法について解説します。
寒冷地の外壁は凍害に注意
寒冷地では冬になると、凍害が家の外壁に発生することがあります。
凍害とは、外壁に浸入した水が凍ったり解けたりを繰り返す「凍結融解作用」で起こる現象のことです。
水には凍結膨張という性質があり、氷になるときに体積が10%増えます。気温が0℃を下回り、外壁に浸入した水が凍ると、外壁を内側から押し広げる圧力がかかり体積が増えた分の隙間ができます。
気温が上がり氷が解けると新しくできた隙間に水が浸入し、凍結することでさらに隙間が広がっていくのです。
このように、外壁の内部で水の凍結融解作用が繰り返されると、隙間が広がり続け最終的にはスカスカになってしまいます。外壁材のなかでも、水が染み込みやすい材料を使用しているのが、窯業系サイディング、木質系サイディング、コンクリートです。
これらの外壁を使用している建物は、凍害が起こる可能性が高いため注意が必要です。
外壁に発生する凍害の症状
家の外壁は、水が浸入しないように表面に塗装をして防水性を高めています。しかし、塗装は時間の経過とともに劣化して防水性能が低下します。その結果、外壁に水が浸入しやすくなり、凍害の発生につながるのです。
凍害が発生すると、外壁に次のような症状が現れます。
- ひび割れ
- ポップアウト現象
- スケーリング
凍害が起こるようになった外壁は、補修をしなければ症状を改善できません。そのため、凍害の症状を発見したら、早急な対策が必要です。
ひび割れ
凍害の初期症状として現れるのが、外壁のひび割れです。外壁の内部に浸入した水が凍結するときの圧力に耐えられなくなると外壁が割れ、ひび割れを起こします。
たとえば、ガラスのコップに水を入れて冷凍庫で凍らせると、凍結膨張の圧力にガラスが耐えられず、割れてしまうことがあります。凍害ではこれと同じ現象が外壁の内部で起こるのです。
外壁に発生したひび割れから水が浸入するため、凍害の進行を早めてしまうおそれがあります。凍害によるひび割れを発見したら、早めの補修が必要です。
ポップアウト現象
ポップアウト現象とは、外壁の表面部分が部分的に飛び出すように剥がれてしまう症状です。
材料にセメントを使っているモルタルやコンクリートの外壁では、凍害による外壁内のひび割れが進むと、ポップアウト現象が発生して表面部分がフレーク状に剥がれてきます。
また、ポップアウト現象が発生した窯業系サイディングは、外壁の表面が剥がれて、ボロボロになります。
ポップアウト現象は、水の「凍結融解作用」が長年にわたって繰り返されることで発生します。外壁の内部が、スカスカになっているおそれがあるため、早急に補修をしましょう。
スケーリング
外壁のポップアウト現象がさらに進行すると、スケーリングが発生します。スケーリングとは、外壁の一部が剥離・剥落する状態です。
ポップアウト現象では外壁の表面が剥がれる程度でしたが、スケーリングでは外壁が大きく剥がれ、外壁の奥深くまで水が浸入します。
スケーリングの結果、外壁材がコンクリートであれば鉄骨部分のサビ、サイディングであれば木材や断熱材の腐食につながり、建物の強度の低下や老朽化を早めるおそれがあります。
スケーリングが発生する原因のひとつは、ポップアウト現象で剥がれた外壁からの水の浸入です。外壁の奥へ浸入した水が凍結融解作用を繰り返すことで大きな被害につながります。スケーリングが起こったら、早く補修してください。
湿気や水気の多い部分で発生しやすい
外壁で凍害が発生しやすい場所は次のとおりです。
- 窓枠のアルミサッシの周辺
- 通気口や換気扇口の周辺
- 風呂や台所に近い部分の外壁
室内の暖かい空気が外に伝わる場所では、外気との温度差で結露が発生しやすいうえに、湿気が常にあるため凍害が発生しやすいのです。
凍害が発生した外壁の修繕方法
凍害が発生したときは、被害を広げないために早急な対応が必要です。しかし、凍害の対策は外壁の症状によって変わります。凍害の症状に応じた適切な対策を確認しておきましょう。
ひび割れはシーリング材を充填する
凍害による外壁のひび割れは、シーリング材を充填して補修します。シーリング材には、防水性があるため、ひび割れ内に隙間なく充填することで水の浸入を防げます。
ただし、凍害のひび割れの補修をDIYで行う場合は注意が必要です。ひび割れには、割れ幅0.3mm、深さ4mm以下のヘアクラックと呼ばれる細かいものから、構造クラックと呼ばれる割れ幅が0.3mm以上で深さ4mm以上のものまでさまざまです。
ヘアクラック程度であれば、DIYでも補修できますが、構造クラックになるとシーリング材を奥まで隙間なく充填するために表面部分をV字に削る作業が必要です。
V字に削る作業を行わずに補修を行うと内部まで材料が充填されず、凍害が改善されないおそれがあります。ひび割れが構造クラックの場合やひび割れの状態を判断ができないときは、施工会社に依頼しましょう。
ポップアウト部分はパテで埋める
ポップアウト現象が発生した外壁は、剥がれ落ちた部分が浅ければシーリング材で充填して補修をします。表面部分が剥がれ落ちただけであれば、充填することで凍害の進行を防げます。
ポップアウト現象が外壁の深い部分で発生している場合は、該当部分の取り換え、またはポップアップした部分を大きく削ってパテなどで埋める作業が必要です。
スケーリングは部分張り替えで修繕する
外壁に凍害によるスケーリングが発生している場合は、水が外壁内部まで浸入しているおそれがあるため、サイディング外壁であれば該当部分の張り替えを行います。
外壁がコンクリートの場合は、サビが内部の鉄骨に発生していることがあります。そのため、一度鉄骨部分までを削り、防錆処理をしてからモルタルなどで埋めます。
スケーリングを放置すると建物全体の老朽化を早めるため、早めに施工会社に補修を依頼しましょう。
寒冷地で選ぶべき外壁の種類
寒冷地で新築や建て替えを検討している人は、金属系サイディングまたは樹脂系サイディングを選べば、凍害の被害を防げます。
金属系サイディング
金属系サイディングは、アルミニウムやステンレスなどの金属板を使用したサイディングボードです。金属は水が浸入しないため、凍害の発生リスクがありません。
また、金属系サイディングは、ウレタンフォームなどの断熱材と一体になった断熱性の高い製品が多く、冬の寒さが厳しい寒冷地に適した外壁材といえます。
ただし、金属系サイディングは、デザインのバリエーションが少なく、全体的にシンプルなものが多いです。デザイン性の高い外壁を求めている人は、別の外壁材も検討してみましょう。
外壁ごとの特徴は関連記事をご確認ください。
樹脂系サイディング
樹脂系サイディングとは、塩化ビニル樹脂というプラスチックを使った外壁材です。水が浸入しないため、凍害の発生を防ぎます。
樹脂系サイディングには耐候性があり、メンテナンスもほとんど必要ありません。そのため、寒冷地に向いており、実際に寒冷地の住宅では樹脂系サイディングを採用することが多いです。
ただし、樹脂系サイディングは、日本での普及率がまだ低くいため、施工できる会社は多くありません。施工会社が見つかっても費用が高額なことが多いです。
メンテナンスをすれば外壁に関係なく凍害は防げる
外壁の凍害を防ぐには、外壁に水を浸入させないことが大切です。外壁に水が浸入する原因の多くは塗装の劣化です。塗装は約10年で劣化して防水性が低下するため、時期になったら塗り直しが必要です。
塗装が劣化する原因や症状は関連時期をご確認ください。
寒冷地に適した提案のできる施工会社を選ぶ
寒冷地で外壁塗装をするなら、寒冷地ならではの知識、施工実績が豊富な会社に依頼をしましょう。
外壁塗装には適さない気候条件があり、次の場合は塗料が乾燥しにくくなるため、施工不良の原因になります。
- 湿度が85%以上
- 気温が5度以下
- 雪や雨が降っている
寒冷地の冬は、気温が5℃を下回り外壁塗装に適さない日が続くことも珍しくありません。寒冷地の事情を知らない施工会社に依頼すると、施工を進めてしまいトラブルにつながるおそれがあります。
また、施工会社を選ぶ際は、複数の会社に依頼をして提案や費用を比較することも重要です。
使用する塗料や工程、費用などは施工会社によって異なります。複数の会社の提案を比較することで、相場金額や使用する塗料について知れるため、寒冷地に適した施工内容を適正価格で行えます。
寒冷地での施工実績がある会社に一括査定を依頼するなら「ぬりマッチ」が便利です。近隣エリアの施工会社に一括で査定を依頼するため、寒冷地の実績がある施工会社を選別する手間が省けます。ぜひご活用ください。