外壁が劣化する原因はいくつもあります。劣化した状態を放置すると、補修に多額の費用がかかってしまうおそれがあるうえ、建物全体の耐久性が落ちてしまいます。
ここでは外壁が劣化する主な原因と補修が必要となる劣化のサイン、補修方法を具体的に説明します。また、外壁を長持ちさせる方法も紹介するので、メンテナンスのタイミングに悩んでいる方はチェックしましょう。
外壁が劣化する原因
外壁が劣化する原因は、主に5つあります。
原因1:太陽の紫外線や熱
外壁が劣化する一番の原因は、太陽の紫外線や熱です。
外壁の表面に塗られている塗料は、見栄えをよくするだけでなく、建物を守る役割があります。塗料を塗ったあと、乾燥させ表面を固めると、塗膜といわれる塗料の膜が作られて太陽の紫外線や熱を防ぎます。
しかし、太陽の紫外線や熱を浴び続けると、塗膜に含まれる樹脂が破壊されて劣化します。その結果、外壁を守る効果が薄まってしまいます。
特に外壁の南面は日当たりがよいので、色あせなどの劣化が、北面などと比較して進行している傾向にあります。
原因2:雨や風
雨は外壁の汚れを落としてくれると考える方もいるでしょう。しかし日本の雨は酸性なので、5年、10年と雨が建物に当たり続けると、外壁表面を浸し劣化する原因となります。
また、水分を含んだ汚れが外壁にこびりついたり、雨だれを作ったりします。
風が吹いていると、外壁に向かって横から雨がたたきつけられるため、さらに劣化が進行します。
原因3:職人の施工ミス
外壁塗装を行う職人の施工ミスが原因で、劣化が進行するおそれがあります。
下地処理の手抜き
下地処理は、外壁塗装の仕上がりを左右する重要な工程です。具体的には、塗料の密着性を高めるために、外壁に付着している汚れを除去したり、ひび割れなどを補修したりします。
また、塗装の耐久性を高め、雨漏りを防ぐ効果があります。
下地処理を手抜きすると耐久性が低くなり、すぐに塗装が剥がれてひび割れなどの劣化が進行してしまいます。
塗装の手抜き
外壁塗装は、基本的に3回塗料を塗り重ねます。
- 3度塗りをしない
- 規定に反した塗料を使用する
- 乾燥時間を待たずに重ね塗りを行う
上記のような手抜きをすると、施工後の耐久年数が下がります。その結果、地震などの自然災害が発生したときに、ひび割れが発生するおそれがあります。
コーキングの手抜き
コーキングとは、外壁材の隙間に補填したり、ひび割れを補修したりする役割の材料です。建物に雨水が浸入するのを防ぎます。
コーキングの施工は、以下の2種類があります。
- 打ち替え
- 既存のコーキングを取り除いて新しいコーキングを付ける
- 打ち増し
- 既存のコーキングの上から補修をする
本来なら打ち替えが必要な状態なのにも関わらず、施工会社が勝手に打ち増しで施工してしまうと、外壁は耐用年数よりも早く劣化します。
原因4:地震などの自然災害
台風や地震などの自然災害は、外壁を劣化させます。
建物に揺れなどの衝撃が加わると、ひび割れやへこみなどの欠損が発生するなど、外壁に多大な被害を及ぼします。
原因5:周辺の環境
建物が建っている場所によって平均気温や湿度が異なるため、劣化の進行具合にも差があります。ここでは、特に注意が必要な地域を紹介します。
極寒地
極寒地では、外壁の内側に浸入した水分が凍結と融解を繰り返し、外壁が劣化する凍害という現象が発生します。
特に、窯業系サイディングボードを外壁材として使用している人は注意しましょう。板状に形成した外壁材を組み合わせるため、経年劣化すると、サイディングの表面やコーキングの隙間から水が浸入します。
劣化が進行すると多額の費用をかけてサイディングの張り替えを行う必要があるので、定期的なメンテナンスが重要です。
海沿いの地域
海岸から約2〜7kmの範囲に位置する地域を塩害地域と呼び、潮風が原因で外壁が腐食や劣化しやすいです。
そのため塩害に強い樹脂系サイディングやガルバリウム鋼板といった外壁材、フッ素塗料や無機塗料を使用するなどの対策が必要です。
湿度が高い地域
湿度が高い環境にある建物は、外壁に藻やカビが発生しやすいです。水分を含む藻やカビは外壁を劣化させる原因になります。
特に山間部や川沿い、傾斜造成宅地にある建物は湿度が高くなるので定期的にメンテナンスをしましょう。
外壁が劣化したサイン
外壁塗装の塗り替えをする目安は10年ですが、早めに劣化に気づけると、手遅れになる前に補修ができます。
外壁の劣化状況によって、補修する内容や金額は異なります。適切な対応ができれば費用を抑えることにもつながるため、劣化のサインを見逃さないようにしましょう。
チョーキング現象
指で外壁に触れたときに白い粉が付着するチョーキング現象は、塗膜が劣化しているサインです。早急に補修する必要はありませんが、雨風や紫外線などのダメージが建物内に及び、建物の劣化を早める原因になります。
メンテナンスを怠ると、外壁に水分が浸透しコケやカビが発生します。また、ひび割れにつながるおそれもあるので注意しましょう。
塗装の色あせ
前述したとおり、外壁塗装は太陽の紫外線によって劣化します。色あせは経年劣化による初期症状ですが、放置していると外壁の劣化につながります。
定期的に塗料を塗り替えて、色あせを解消しておきましょう。少しの色あせでも気になる方は、色あせしにくいグレーや青、ベージュの塗料を使用することをおすすめします。
カビやコケの発生
汚れが部分的で、建物の景観も特に気にならないのであれば、しばらくは問題ありません。しかしカビやコケが広範囲に発生している場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
カビやコケは建物の美観性を損ねるだけでなく、外壁がもろくなり、塗装の剥がれなどにつながるおそれがあります。
塗装の剥がれ
塗装から10年程度経過してからの塗膜の剥離は、経年劣化による可能性が高いです。
塗料を塗ってから1年で塗装が剥がれた場合は、洗浄不足のままで塗装を行うなど、適切な下地処理をしていないおそれがあります。保証が適用される可能性があるため、施工を依頼した会社に問い合わせてみましょう。
ひび割れ(クラック)
ヘアークラックと呼ばれる幅3mm以下のひびは、急いで補修する必要はありません。しかし悪化する可能性があるため、様子を観察しましょう。
幅1cm以上のひび割れがある場合は、雨漏りにつながるおそれがあるため早急に補修が必要です。
サイディングの変形
サイディングは、硬くて丈夫な外壁材の一種です。
外壁の一部が盛り上がったように見えるサイディングボードの反りは、劣化の中でも特に緊急性が高いです。雨水が建物に浸入し雨漏りの原因になるため早急に対応しましょう。
サイディングの反りが軽度であれば、ビスを打ちこんで補修できるケースもあります。しかし反りが大きい場合は、外壁の一部分を張り替える必要があります。
コーキングの劣化
コーキングとは、主にサイディング外壁で外壁材の隙間を埋めるためのものです。コーキングが劣化すると、外壁としての機能が果たせないおそれがあります。
肉やせ
コーキング材に弾性を与える可塑剤が外に溶け出し、本来の厚みよりも薄くなってしまった状態です。
大きくへこんでいなければ特別な対処は必要ありませんが、放置するとコーキングの剥離にもつながるため、様子を観察しておきましょう。
ブリード現象
可塑剤が外に溶け出し、土ぼこりなどが付着して、外壁が黒ずみのように汚れます。緊急性はありませんが、こちらも肉やせ同様に定期的にチェックしましょう。
剥離
コーキングはゴムのような性質があるため、本来外壁の動きや収縮に付いていきます。経年劣化で硬化すると外壁の動きに対応できず、外壁材とコーキング材の間に隙間ができます。
隙間から雨水が浸入すると、雨漏りの原因になります。またサイディングの変形が起こるおそれがあります。
破断
破断は、コーキング材の真ん中が裂けてしまった状態です。
破断は塗装の剥がれにつながるので補修することをおすすめします。
欠落
欠落は、コーキングが取れて、内側の下地部分が見えている状態です。コーキングを施工するときは、密着性を高めるためにプライマーという下地材を先に塗りますが、それがしっかりと行われていないと欠落が起きます。
欠落部分には雨水の浸入を防ぐものがないので、すぐに補修しましょう。
劣化した外壁の補修方法と補修費用
劣化した外壁の補修方法には、以下の4つがあります。
- 外壁塗装(塗り替え)
- 重ね張り(カバー工法)
- 張り替え
- 部分補修
劣化の状況に合わせて、適切な補修方法を選択することが大切です。
それぞれの補修方法と費用について紹介します。
外壁塗装(塗り替え)
外壁塗装(塗り替え)は最も手軽な外壁の全面リフォームの方法です。一般的に、外壁の塗膜が劣化してきたときによく行われます。
外壁塗装にかかる費用は、たとえ同じ坪数(延べ床面積)、同じ仕様の建物であっても、既存の劣化度合いや周辺環境、使用する塗料のグレードによって大きく異なります。
一般的には、高価な塗料になるほど多機能で耐久性が高く、長持ちします。また、工期は約7~10日間が目安です。
代表的な塗料ごとに、坪数別の費用の目安を以下の表にまとめました。
坪数 | アクリル塗料 | ウレタン塗料 | シリコン塗料 | フッ素塗料 | 無機塗料 |
---|---|---|---|---|---|
20坪 | 30万円~ | 40万円~ | 50万円~ | 60万円~ | 70万円~ |
30坪 | 40万円~ | 50万円~ | 60万円~ | 70万円~ | 80万円~ |
40坪 | 50万円~ | 60万円~ | 70万円~ | 80万円~ | 90万円~ |
50坪 | 60万円~ | 70万円~ | 80万円~ | 90万円~ | 100万円~ |
なお、上記費用には屋根塗装を含まず、下地の劣化度合いや建物の周辺環境によっても費用が変動します。
また、アクリル塗料は安価ではあるものの耐久性が低いため、現在はあまり使われていません。
重ね張り(カバー工法)
外壁にひび割れが多数発生していたり、外壁から雨漏りが発生していたり、外壁塗装だけでは改善できそうにない場合は、重ね張り(カバー工法)がおすすめです。
重ね張りは、既存の外壁材の上から新しい外壁材を張り付ける工法です。古い外壁材を撤去しないため、撤去費用がほとんどかからず、工期を短縮できます。また、外壁が二重になるため、遮音性と断熱性が向上するメリットがあります。
一方で、外壁材が軽いほど建物は軽量になり、地震時に建物が受ける力が小さくなって耐震性が向上します。重ね張りの場合、外壁材の重量が増えてしまうので耐震性に悪影響を及ぼしかねません。
そのため、重ね張りには軽量な金属サイディングが使われることがほとんどです。外壁材の選択肢が少なくなってしまうのはデメリットといえます。
重ね張りの費用は、延べ床面積が約35坪(115~120㎡)の家の場合、約150~200万円が目安で、外壁塗装よりも高額になります。
また、工期は約10〜20日間を見込んでおく必要があるでしょう。
張り替え
張り替えは、既存の外壁材を一度すべて撤去して、新しい外壁材に張り替える方法です。
外壁の劣化が著しく進行しており、塗り替えや重ね張り(カバー工法)では修繕するのが難しい場合に採用されます。
張り替えには、以下のようなケースがあります。
- サイディングからサイディングに張り替える
- モルタルからサイディングに張り替える
- 板張りからサイディングに張り替える
古い外壁材を取り除いて新しい外壁材に張り替えるので、建物の重さが従来とあまり変わらず、地震の際に建物の揺れが大きくなる不安はありません。また、新しい外壁材も重ね張りと違って比較的自由に選べます。
しかし張り替えは、既存の外壁材を撤去するので廃棄処分費用がかかり、その分、工期も長くなってしまいます。
張り替えの費用は、延べ床面積が約35坪(115~120㎡)の家の場合で約180~250万円が目安です。工期は約14〜25日間を見込んでおく必要があるでしょう。
また、既存の外壁材を撤去したあとに下地材、建物の構造躯体などに腐食や損傷が見つかった場合は別途でそれらの補修費用が発生します。しかし、悪い部分を併せて一度に修繕できることが、張り替えの最大のメリットといえます。
部分補修
外壁は経年とともに少しずつ劣化していきますが、すべての箇所が同時に劣化するわけではありません。
劣化度合いが一定の基準を超えたときに、ひび割れや塗膜の膨れ、剥がれなどになって現われるようになり、全面的な改修工事が必要になります。
不具合が生じたときにこまめに部分補修を行ったり、定期的に点検を行っていたりすれば、外壁の重ね張りや張り替えなどの大がかりな修繕をせずに建物の寿命を伸ばすことが可能です。
主に、以下のような部分の補修があります。
補修方法 | |
---|---|
コーキングの補修 | コーキングに部分的な剥がれや亀裂が生じている場合には、「増し打ち」や「打ち替え」を行う |
ひび割れ(クラック)補修 | ひび割れの幅に応じて、コーキングの充填やエポキシ樹脂の注入、Uカットシール材充填工法などで補修する |
へこみ、欠け、傷などの補修 | 部分的なへこみや欠け、傷などが見られる場合は、パテで補修したり、サイデイングボードを部分的に張り替えたりする |
鉄部のサビ補修 | 鉄部の部分的なサビはワイヤーブラシやサンドペーパーなどを使って落とし、サビ止め塗料を塗る |
カビ、藻、コケ落とし | 業者に依頼してカビやコケを落とす場合は、高圧洗浄やバイオ洗浄(バイオ系の洗浄剤を使った高圧洗浄)などで落とすのが一般的 |
外壁材の浮き、膨らみ、反り、剥がれなどの補修 | 全面的な改修工事が必要になるケースがほとんど |
部分補修の工期はいずれの場合も半日~3日間程度で、費用は約3万~10万円です。
しかし、補修箇所によっては足場の設置が必要なため、別途費用がかかります。
補修が広範囲になる場合は、業者に相談して部分補修がよいのか、全面改修がよいのかの判断をする必要があります。
劣化前にできる外壁を長持ちさせる方法
外壁を長持ちさせるには、定期的なメンテナンスと外壁塗装が必要です。ここでは具体的な方法を紹介します。
定期的なメンテナンス
建物の外壁が劣化していない場合は、劣化の進行を遅らせることが大切です。
塗料によっては太陽の熱を室内に吸収しないように反射する遮熱機能がありますが、汚れの放置は機能低下につながります。土ぼこりや排ガス、藻やコケが原因の汚れを洗浄すると、外壁を長持ちさせることにつながります。
さらに常日頃から外壁をチェックしていれば、ひび割れなどが起こったときにいち早く気づけます。
外壁の汚れは、傷つけないようにスポンジや外壁洗浄剤を使用して洗浄します。
高圧洗浄も効果的ですが、ひび割れがある箇所を洗浄すると水漏れの原因になるので確認してから行いましょう。
耐久性のある塗料を選ぶ
外壁塗装をするときは、選ぶ塗料によって耐久性や効果が違い、施工会社によって提案する塗料も異なります。
耐久性を重視するときは、以下のような塗料を選ぶと外壁が長持ちしやすいです。
- ラジカル塗料
- 塗料の劣化要因となるラジカルを抑制する
- 防水塗料
- 雨水が建物内に浸入することを防ぐ
ただし、耐久性が高い塗料は価格も高い傾向にあるため、比較しながら検討しましょう。
また、建物の外装材と塗料には相性があるため、相性の悪い塗料を使うと、数年でひび割れや塗料の剥がれなどの問題が発生します。
外壁を長持ちさせるには、専門家の意見を聞きながら外壁と相性がよい塗料を選びましょう。
適切な下地処理
外壁塗装の下地処理では、付着している汚れを除去し、ひびを補修することで塗装後に起こる早期の劣化を防げます。
下地処理には、以下のように複数の工程があります。
- ケレン清掃
- 塗膜やサビなどを落とす
- 高圧洗浄
- 外壁についたカビやコケなどを清掃する
どれも外壁を長持ちさせるには重要な作業で、下地処理を怠ると塗装後数年で塗装が剝がれてしまうおそれがあります。
手抜き工事をしない施工会社を選ぶ
外壁塗装では、以下のようなさまざまな配慮が必要です。
- 塗料の配合量
- 溶液に水などを加えて薄める割合
- 当日の天候
そのため塗装の仕上がりは、職人の技量次第なところがあります。どんなに耐久性の良い塗料を選んでも手抜き工事をされてしまうと、本来の耐用年数より早く劣化して、多額の費用がかかります。
だからこそ信用できる優良な施工会社を選ぶことが重要です。
しかし1社だけに依頼すると、提示された金額が適正なのか、依頼した施工会社が手抜き工事をせず丁寧に施工してくれるのか判断できません。
まずは、無料のインターネットサービスである「ぬりマッチ」を利用しましょう。
ぬりマッチは、簡単な物件情報を入力するだけで、一括で複数社に見積もりを依頼できます。厳しい基準を通過した優良な施工会社のみが加盟しているので、手抜き工事をされることもないでしょう。
外壁が劣化したことで悩んでいる方や、外壁を長持ちさせたいと考えている方は、いますぐぬりマッチを利用しましょう。